「Return to Love:Solty Rei 最終回ED」 唱子のフェイバリット・マイナーアニソン 二年生になってもよろしくね

 私たちは、春休みに入った。


 このところ、毎週唱子さんとカラオケに行っている。『F』のEDがカラオケに入ったからだ。今まで歌えなかった分、目一杯歌い上げる。


「いやあ、一生分歌ったんじゃない?」

「かもしれませんわね」


 妙な達成感に、私たちは包まれていた。


「これで心置きなく『スレイヤーズNEXT』が見られますわ」

「今まで、坊主憎けりゃなんとやら、だったもんね」

「色々と取り戻せそうですわ」


 もうすぐ私たちは、二年生になる。


「ですが、同じクラスになれるでしょうか? 離ればなれなんてイヤですわ」

「友の会は続けるじゃん。だから心配しないで」

「それでも、一緒に授業もできないほど離れるなんて、耐えられませんわ」


 だろうなぁ。唱子さんは案外、さみしがり屋だ。


「亜美ちゃんやハムちゃんとも、離れたくないよ」

「ですわね。お友だちと別れるのは辛いですわ」


 唱子さんが、『Return to Love』を歌う。


 ソルティレイの最終回で流れた曲だ。


 いつ聞いても、主人公がヒロインと宇宙で再会するシーンを思い出して泣いてしまう。


「私もこの歌好き」

「主人公がツンデレオヤジというのが、また泣けるのですわ」

「私たちは、終わらないよ」

「ええ。そうですわ」

「二年生になってもよろしくね、唱子さんっ!」

「はい優歌さん!」


◇ * ◇ * ◇ * ◇


 四月を迎えた。

 後輩たちがキャッキャとはしゃぐ中、私は唱子さんの姿を探す。


 唱子さんはクラスの張り出しが待ち遠しいみたいで、背伸びをしながら待っていた。桜よりもクラス替えを待ちわびるなんて、いかにも唱子さんらしい。


「気が早いよ、唱子さん。焦っても、クラス替えは逃げないから」

「早く楽になりたいですわ!」


 大げさな。


「あっ。張り出しが始まったよ」


 またしても、唱子さんは爪先をピンと立たせて、背伸びをする。


「名前がありましたわ!」

「私も。同じクラスだよ!」

「わーい!」


 これまで聞いたこともない唱子さんの歓声に、クラスメイトたちがビックリしていた。


「ちょ、唱子さんっちハシャぎすぎ」

「そうよっ。でも、喜びを解放するのはいいコトだわっ」


 唱子さんの肩をポンと叩くのは、亜美ちゃんとハムちゃんだ。二人も、同じクラスになった。


「今日はもう、始業式だけじゃん。終わったらみんなでどっか行かない?」


 亜美ちゃんが、提案してくる。


 私たちが行く所なんて、一つしかなかった。


「アニソン歌いに行こう!」

「それも、とびきりマイナーな歌を!」

 


 マイナーアニソン友の会は、まだまだ続けていく。


                                   (おしまい) 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る