「君へ:中二病でも恋がしたい! Lite OP」 マイナーアニソンのマイベストを決めましょ

「まさか、あなたも『蛎崎弘かきざきひろし』の名曲をお探しとは」


 やはり、気づかれていた。


「知ってた?」

「ええ。ここ壁が薄くて、叫び声はよく通りますの」


「あれは名曲だよ~」


「そうですわ。今でも蛎崎さんは、ライブでその歌を演奏なさってらっしゃるから」


「ホントに?」


「しびれますわよ」


 ネットにアップされているライブ映像を、スマホで見せてもらう。


「アコースティックなんだ!」

「バージョンが違っていると、違った楽しみ方ができますわね」


 しばらく、唱子さんと動画鑑賞会になった。


「それにしても、ヒトカラとかやるんだね。お嬢様なのに」

「数少ない趣味ですわ。マイナーアニソンは、知れば知るほど奥が深いですもの」



 なにより、意外だったのは。

 


「よく知っていたね、私のこと」


「カラオケでアニメ研究部とモメて辞めた女子と、話題でしたから」


 やはり、知られていたか。


 そうなのだ。私は友達とケンカをして、アニメ研究部を辞めてしまった。


 イベントの打ち上げで、

「盛り上がってる時にマイナー曲を歌うとか。空気を読めないのか」

 と言い合いになってしまって。


「その子とは、以前から馬が合わなくてさ。もう絶交した。でも、これでよかったのかなぁ」


「いいに決まってますわ!」


 唱子さんは、断言した。




「好きな曲を歌って、何がいけませんの? わたくしは、あなたは否定したりなんかいたしませんわよ。マイナーアニソンにだって、誇りはございますわ。空気が悪いのは、あちらの方でしたでしょうに、あなたが我慢なさる必要はございませんわ!」



「ありがとう、唱子さん」


「お近づきの印に、マイナーアニソンのマイベストを決めましょ。まずは、優歌さんから」



「うーん。マイフェイバリットと言われると、悩むね」



「ちなみに、FのEDは鉄板ですので、除外で」


 入れたくても、入ってないもんね。


「だったら、これかな……」


 私は、タブレットを操作して、曲を入れる。



 ZAQの『君へ』を。


『中二病でも恋がしたい!』のサイトで配信されていた短編、 『Lite』シリーズ一期のOPテーマだ。


 ヒロインの抱えている切なさを、これでもかというほど詰め込んだナンバーである。


 歌い終わると、唱子さんが拍手をしてくれた。


「素敵ですわ。いいところをついてきますわね」


「ありがとー」


「もはや、正規の曲になってもおかしくないナンバーでした。お客さまが求めているのは、エンディングの方なんでしょうけど」


 ああ、盆踊りね。


「うーん。ヒロインの心情が響くのは、こっちなんだよね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る