第3話
アルフレッドに抗議をしようとし、珍しくエレノアを伴っていないアルフレッドを見つけたリエルは早速アルフレッドへ話しかけた。
「殿下。私は「私はお前を許すつもりはないぞ。覚悟しておけリエル」
「? 一体どういうことですか?」
「しらばっくれるつもりか!」
「?」
リエルが虐めの主犯だと思い込んでいるアルフレッドの曇り切った目には訳が分からず困惑しているリエルが、虐めがばれて、焦っているように映っている。
「ふん、覚悟しておくんだな」
アルフレッドは去っていき、そこには勘違いだと言う機会すら与えられないまま困惑しているリエルの姿が残っていた。
◆◆◆◆
話を戻す。
リエルは焦っていた。『婚約者の地位を失うから』などと言う理由ではなく、単純にアルフレッドがリエルの必死のフォローを無駄にしようとしているからである。ちなみにリエルの内心は、
(なにしてくれてるのよ。この
と、アルフレッドへの不満たらたらであった。(声に出すと不敬罪で処されるレベルで)
まあそれも仕方がないだろう。リエルは噂を揉み消すにあたり、アルフレッドに押し付けられた生徒会副会長の仕事で忙しくしている中、自分の時間を相当削り時間を作ったのだから。授業中に居眠りしてしまい教師に怒られたり、目の下にメイクで誤魔化せない程の濃いくまを作ったり、体重もいつもと同じ量食べているにも関わらず3キロ程減った。
そんなリエルを誰が責めることが出来ようか。いや、アルフレッドとエレノアはそんな影の努力も知らずリエルを責めているが。とりあえず、最低でも心の中ではアルフレッド達を罵倒する権利がリエルには山ほどあるのだ。
「心当たりが無いというのか?」
「有りません」
迷わず即答したリエルを見て、アルフレッドは
(絶対にばれないと思っているのか。ふん、悪事は全て見抜いている。リエル、今に泣き顔を晒すことになるぞ)
等と思っている。
真実は、とても優秀な記憶力を有しているリエルの記憶にも婚約破棄されるほどの心当たりが無いからであるが。心当たりなどせいぜい時々授業中に居眠りなどをしてしまっている記憶位で、それも生徒会の仕事が忙しい時などだったので、教師からは仕方がないと目溢しされる程度のものだ。
リエル本人には全く心当たりが無い。だが、リエルは考えている内に一つの心当たりに突き当たった。
それはアルフレッド達がエレノアに対する虐めをリエルが行っていると思い込んでいると言う噂の件だ。実はリエル、アルフレッド達の噂が偽りがほとんど無いただの真実であるという事に気がついていなかった。誰かが事実無根の噂を流したと思っていたのである。リエルの中にはその絶対的な前提条件が存在していたのでアルフレッドがリエルに言った言葉の意味を理解できなかったのである。だから直談判した時に困惑していた。
……そしていままでリエルはその勘違い(?)に気がついていなかった。だが今、リエルは気づいてしまった。
(まさか……。あの噂は本当だったの? だとすれば殿下の行動も説明がつくわね。ってことは……、あの二人、どんだけ馬鹿なの?私が虐める? 冗談じゃないわよ。私にどんな利益が有るって言うの?ただの時間の無駄でしょ。しかも陛下とかの心証を悪くするだけに決まっているんだからするだけ無駄。ったく、殿下は一体何を考えて、いや、何も考えていないからこうなっているのか。エレノア様も止めなさいよ。恋人でしょ? いや、私が消した噂によれば止めてるんじゃなくて変に私がやったって信じてるのよね?だったら少しめんどくさい事になるわね。多分、虐めた令嬢が私が命令したとか言ったんでしょうし。そう言えば思い込みが激しいってエレノア様の調査の報告書にも書いてたわね)
少し似ているが真実は少し違う。虐めた令嬢が、
『ふん。リエル様に逆らうからこんなことになるのよ』
のようなことを言ったのだ。
その令嬢はリエルの取り巻きの一人であり、リエルに心酔している。それはもう、本当に異常なほどに。
彼女には決してリエルに罪を被せるつもりはなかった。ただ、言い方が悪かった。彼女は
『ふん。(私の)リエル様に逆らうからこんなことになるのよ』
を、
『リエルに逆らったから虐めた』(リエルは何も指示していない。)
と言う意を込めて言った。
だが、エレノアはそれを
『リエルに逆らったから虐められた』(リエルが虐めを指示した。)
と、受けたのだ。
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