521話 女子旅 part2 ⑤ (弟子、山へ)




師匠、魔法使いイシルに許可をもらい、籠を背負って山へ山菜採りに来た弟子サクラ。


赤や黄色、オレンジに色づく山。

秋の山菜は春や夏とは少し違って、メインとなるのが果実や木の実だ。


ノビル、ヤマグリ、アケビに山椒、ヤマボウシ――


山は食材の宝庫だった。




(アっケビ♪アっケビ♪)


先ずは簡単に見つけられるアケビを収穫するサクラ。

秋に熟す果実は非常に甘く、バナナのような味わい。


種が多いのが難点だが、皮はほんのり苦く、味噌と合わせて炒めれば、その苦味もまた美味しい。

とろりとした食感は、豚肉と合わせて味噌炒めにすればご飯が進んでしまう。


(おっ!やまぶどう発見♪)


アケビを収穫していると、他の木の梢にやまぶどうの蔓がからみついているのを見つけた。

山ぶどうの実は里のぶどうよりも種が大きくて実の部分が少ない。

だけど、甘酸っぱくて濃厚な味がする。


サクラは小さな紫の実をつまんで一粒口にいれた。


″ぱくっ、、ちゅぷっ″


「ん///酸っぱ!」


ちょっとすっぱすぎるけど、ジャムにしたら美味しいはず!

サクラはやまぶどうの実を房で収穫する。


足元を見ると ツルから落ちてきて自然乾燥し、ひなびたやまぶどうも発見した。


(天然の干しやまぶどう!)


それは、天日に干されて味が濃縮され、甘くなったレーズンだ。

勿論サクラはそれもいそいそと回収し、背負い籠に入れた。




(この葉はアシタバかな?)


続いて見つけたのはアシタバ。

摘んでも明日には生えてくる、生育力が強い山菜。

柔らかい新芽や茎は少しクセがあるけれど、爽やかな風味がする。


(これは、天ぷらに///)


桜エビを加えてかきあげにしたら、アシタバの爽やかな風味と桜エビの香ばしさでノックアウト!


(むふふ///)


楽しい。

楽しすぎるよ山菜摘み!




アシタバからちょっと目線をあげると、見つけたのはむかご。


むかごはヤマノイモの肉芽で、ヤマイモの葉の付け根にできる球状の芽だ。

味は山芋に似ているけれど、豆のような風味があり、独特の香りが鼻にぬける。

茹でただけでも美味しい。


(イシルさんは素材の味がわかるシンプルな味が好きだからな~♪)


むかごは好きなはず。




そして、サクラがお目当ての――


(栗!!)


やまぐりは、里の栗と比較するとその大きさは約3分の1程度で、いがの中の実の数も少ない。

だけど、味と甘味は抜群で、栽培の栗とは比べられないほど美味しいのだ。


(くりっ、くり~♪)


サクラは軍手をはめた手で 落ちているいがぐりをぽいぽい背中の籠に入れていく。


はぜないように切れ目をいれて、庭の落ち葉で焚き火を炊いて、イシルと焼き栗を堪能したい。


(くふっ///くふふっ)


下を向いて、夢中で栗を拾っていると、近くにキノコも生えているのが見えた。


(こっ、これは!!)


キノコはNG、師匠魔法使いイシルにそう言われていたけれど、これは、採るしかない。


なぜなら、、


(松茸!?)


上品で深みのある味わいの松茸は、その香りが最大の魅力!


(イシルさん、きっと好きだ!)


吸い物にして好し、穀物と炊いても好し、そのままあぶっても好し!!


(土瓶蒸し、、食べたい)


『香り松茸味しめじ』とあるように、松茸はその香りが食材を包み『秋』を感じさせてくれる。

ちょっと鼻にぬける、松の香りのようなスパイシーさが思い出された。


サクラはイシルの笑顔を思いながら、松茸を籠に入れる。


(あっ!あそこにも!)


ちょっと目の先に、またもや松茸。


(あっちにも!)


ちょいと顔をあげると、目線の先に。


サクラは松茸に誘われるように、先へ、先へとたどりながら、知らずのうちに森の奥へと入っていった。







(こんだけ採れれば十分かな)


下を向いて夢中で松茸を狩っていたサクラ。

昼も過ぎたし、お腹も減ってきた。

そろそろ山を降りようかと考えたサクラは、よっこいしょ、と、腰をあげ、う~ん、と 背伸びをする。


(ん?何だアレ)


松茸の終着点には おかしな家が建っていた。

赤、青、黄色、緑、、森には似合わない、カラフルな家。


サクラは少し警戒しながらも、ちょっぴり近づいてみる。


(この家の扉、、板チョコ?)


その家の扉や壁はチョコやクッキーで出来ていた。

壁はホワイトチョコでコーティングされ、カラフルチョコスプレーがかかっている。

窓枠はプレッツェル。

屋根は色とりどりなマカロンがはめ込まれ、生クリームが隙間を飾る。

家を囲む柵はウエハースにグミで出来た紐で繋がっていた。

花壇には飴の花。


(お菓子の家だ!)


おかしな家は お菓子の家だった。







「あれ?そっちいっちゃう?」


アイリーンの話を聞いていたサクラは 思わず口を挟んだ。


「何よ」


「いや、、」


『三枚の御札』だと思ったら『ヘンゼルとグレーテル』?


ヘンゼルはいませんがね。



















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