520話 女子旅 part2 ④ (ニュクテレテウス)
ニュクテレウテス。
なんだかギリシャ神話とかに出てきそうなカッコいい響きだけど――
(たぬき、、なんだ)
「ニュクテレテウスって、大人しい魔物のはずだけど、人が襲われたんですか?」
アイリーンが不思議に思いサイラスに尋ねた。
ニュクテレテウスは雑食ではあるが、主食は自分より小さなネズミやキノコを好む。
人里に降りるほど山に食糧がなくなったのだろうか?
「どうやら元締めが現れたらしいんだ」
「元締め……」
黙って聞いていたヨーコが小さく呟いた。
「調査に入ったアザミ野の隊員の報告によれば、山の祠にあった
だいぶ古い護符だったから、まじないの力が衰えて封印が解かれちまったのかもな」
「あ!あれ、迷信じゃなかったんだ」
「知ってるの?アイリーン」
「うん。子供の頃に ハンナに聞かされた昔話よ。作り話だと思ってたわ」
嘘か真か、親が子に聞かせる、むかしむかしの物語り。
「どんな?」
「サクラには耳の痛い話しかもね」
「私?なんで?」
にんまりとサクラを見て笑うアイリーン。
「だってその話しに出てくる魔法使いの弟子は とっても食い意地がはってるんだもん。食べ物に目がないのよ」
アイリーンはざっくりと物語を話してくれた。
″昔々あるところに 魔法使いイシルとその弟子サクラが 二人で住んでいました″
「ちょっと、なんで私とイシルさん?」
「名前があった方がわかりやすいでしょ」
「……」
″ある日、弟子のサクラは魔法使いイシルに 山へ栗拾いに行きたいと言いました――″
◇
「イシルさん、栗食べたいですよね?そろそろ山に転がってますよ!」
森の庭の研究室にいる魔法使いイシルのもとにサクラが飛び込んできて、うきうきとイシルに話しかける。
「こんがり焼き栗、ほろほろ茹で栗、ほくほくの栗ご飯、、マロングラッセも食べたいなぁ~、、デザートならモンブラン。あ!焼くなら石で焼いた方がおいしいですね、きっと。石焼き栗。食べたくないですか? イシルさんは忙しいだろうから、私、ちょっと行って拾って来ましょうか?」
魔法使いイシルは机に向かい書き物をしながら、栗料理に想いを馳せるサクラに 平然とかえす。
「食べたくありませんよ。栗は1個、15gあたり糖質は4.91g
高いです。栗は糖分が多いですよね?拾ってきてもおやつで食べるなら二個まで、マロングラッセなんて砂糖まみれ、以っての他です」
イシルはお話にならないと一蹴した。
いつものやり取りだ。
しかしサクラは引き下がらない。
「栗だけじゃありませんよ~、山にはきのこだって豊富にありますよ~。ヘルシーキノコ!茸は食べた方がいいんですよね?」
食べ物の話しにキラキラと目を輝かせる弟子サクラ。
いつもこう。
魔法の修練そっちのけ。
興味があるのは食べ物ばかり。
あと、イケメン。
「何言ってるんですか、サクラさん。あなたキノコの見分けつかないでしょう?前に採ってもらったキノコはほぼ毒キノコでしたよ。まったく、見た目がイイのばっかり採るから……」
イシルがずいっとサクラに顔を近づけ覗き込んだ。
「キノコもイケメンが好きなんですね」
「い、いや、、そういうわけでは、、」
そういわけです。
「それに、以前『オモイ
あ、なんだかお説教タイムに突入しそうだ。
(ヤバい、長くなりそう。話を変えよう)
「山菜!山菜なら私、わかりますよ!見分けつきます!」
「ダメです。最近山に住み着いたモノがいるんです。行っては行けません」
ぴしゃり、師匠イシルに却下された。
山に住み着いたモノ。
最近町で噂になっている夕闇と共に現れ、人を喰らうヤマンバ。
「昼間は出てこないですよ~暗くなる前に帰れば大丈夫です。山には何度も行ってますからね!弟子を甘く見ないでくださいよ!」
サクラが むふん、と どや顔をして見せた。
食べ物に目がくらんだサクラに、どんなに口で言ってもわからない。
己の力量を知るいい機会だと思い、魔法使いイシルは弟子サクラを山に行かせることにしました。
「そこまで言うならいいでしょう。でも、山姥に敵わないと思ったら、この玉に願い事を言って魔力を込め、使ってくださいね」
◇
″そう言って、魔法使いイシルは弟子サクラに 三つの玉を持たせました″
アイリーンの話を聞いていて、サクラはふと思い出す。
(あれ?この話し、三つの玉を御札にしたら……)
三枚の御札?
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