103話 寿司食いねぇ!
現世に薬をもらいに 神(医者)と会った後、
ランチを食べるために 店を選び席につく。
タッチパネルをみながら、旨そうなネタの数々を 見落とすまいと凝視する。
そう、サクラは ひと月半ぶりに 白米を口にすべく 回転寿司屋に入ったのだ。
シャリを半分にして食べ、
半分残したシャリは 刺身と食う。
『たくさん食べた気になってみよう』作戦だ。
糖質をオフらなければ!
サラダがわりの枝豆をつまみながら
先ずは刺身盛りを頼む。
よっしゃ!ここは5種盛りがある。
スタンダードに、マグロ赤身、サーモン、イカ、アジ、時季のブリが乗ってる。
ふむふむ。
てことは、これ以外のネタを……
「まずは白身からいくか。タイか、ヒラメか……う~ん」
迷う。
いつもなら好きなものを気の向くまま好きなだけ選び食べていた回転寿司。
今日はそうはいかない。
ヒラメならエンガワもいいな……
タイはこぶ締めでも……う~ん
いや!まて!そういえば……
時季もののページへ飛ぶ。
見つけたのは『冬の白身三種』
「キター!」
一つの皿に ヒラメ、金目鯛、黒そいの三種が一貫ずつ乗っている。
色々食べたいから、これにしよう。
「ああ、キレイな白身」
まずはヒラメ。
ご飯を半分にして、くるっとヒラメの切り身で包む。
わさびを乗せて、ちょこんと 醤油をつける。
つけすぎてはイケナイ。
「はむっ……ん~」
米だ。
ひと月半ぶりの米。
この粒々食感……
少し固めの甘いシャリが たまらない。
そして、ヒラメの淡白でくせのない上質な旨みがあふれ出る。
「寿司サイコー!」
次は金目鯛。
これは、こぶ締めかな?
白い身にピンクのしましまポイント。
みるからに鯛の切り身。美味しそう。
これもご飯を半分に。
「ぱくり」
口に入れた瞬間、昆布の香りが鼻に抜ける。
ほどよく身が締まって、甘くて美味しい~
そして米……
「うん。やっぱり美味しい」
半分のご飯は イカをのせる。
イカも旬だよね!
コリコリとしてるのに、ねっとりと歯に絡む感じ。
甘みが強く、口の中で旨みが広がる。
「日本に生まれてよかった」
ホロリ。泣ける。寿司にはそれだけの魅力がある。
クロソイってはじめて食べるかも。
“北の鯛”と呼ばれるほど旨みがつよいらしい。
ピンクがかった白身。これもご飯を半分。
「あむっ」
コリコリ、プリプリと弾力があり、
噛めば噛むほど旨みがでる!
冬の白身……贅沢だ!!
残りの半分シャリに アジをのせる。
生姜とネギもね!
「ヒカリモノ」
口に入れると、脂が口の中に広がる。
青魚独特の風味。
いい意味での肴臭さね!それがイイ!
鯖も食べたかったな……
しかし、ベスト5には入らない。
次回に持ち越そう。
次の注文は「うなぎ」
甘いタレが食べたいんです。
旬ではないけど、甘みに飢えてますから。
「はぐっ、ん!」
うなぎがほんのり温かい。
そのせいか、とろけるような舌触り。
炙ってあるのか、香ばしい!
「ふふっ」
そして 甘いタレ……
かけてあるだけじゃなく、蒸したときからついている。
ゴハンに合わないわけがない!
山椒の香りがぴりりとして、甘辛旨辛~
「泣きそう」
大袈裟だな。
ガリで口直しをして、うなぎの半分シャリにマグロ赤身を乗せて食べる。
甘だれを少しかんじるが、ご愛嬌……
赤い……肉厚!マグロが濃いのに、さっぱりしてる。
シャリとの相性抜群!これぞ寿司の代名詞。
次の注文は このままマグロに突入!
本気行きます。『マグロトロトロセット』
大トロ、中トロ、ネギトロ手巻きがのっている。
その前に ご飯を半分。
先にサーモンを乗せて食べる。
子供味といわれようが、サーモンの寿司が好きだ。
脂の甘みがあり、うまねっとり。
「くふふ」
思わず笑みも出る。
お待たせしました、マグロ達よ。
ネギトロ手巻き。
これは 自分で巻けってことね。
色んな部位から子削ぎ落としたマグロの中落ち。
海苔を持ち上げ自分でつつむ。
″パリッ、あぐっ″
手巻きだから パリッとした海苔の食感。
その後に来る まったりとした舌触りのマグロの中落ちが シャリとまざりあい、見事に調和されている。
青ネギがアクセントになっているね~
「ネギトロは米ありき……」
他のものは刺身としてもイケてるが、
ネギトロだけはやはり米と一緒の方が良さがわかる。
そして 中トロ。
ピンクのシマシマ
「はむんっ」
とろけるー!
柔らかく ねっとりと舌に吸い付く旨み!
丁度いい、丁度いいんです。赤身と脂のバランスが。
赤身の魚としての旨味と程よい脂の旨味が両方味わえる、一番人気!
「ほわ~」
大トロさん こんにちは。
薄く白っぽいピンクのネタ。
なんて、官能的なんだろう……
うっとりする。
脂でしっとり濡れて サクラを誘う……
「あむ……!?」
なくなる……
口のなかに入れ、咀嚼すると なくなってしまう……
甘い大トロの脂がシャリに溶け込み 旨みが味覚を刺激する。
「ふあ///」
飲み込むと 喉をまったりと通りすぎ、残り香が脳を浸食する。
旅立とう……マグロの世界へ。
食べる順番間違えたかな……
これを最後にすべきだったか。
最後は寒ブリ
まずはご飯を半分残すシャリに 刺身盛りから寒ブリをのせる。
エンジン全開 ラストスパート!ブリ攻めです。
寒ブリの刺身は キレイに形のととのった背身部分だ。
「ぱくり」
肉厚!筋肉質!なのに柔らか!
筋肉が発達している部位だから歯ごたえが楽しい。
脂のりがよく、翻弄される。
背身でこれなら 腹身はどうなってしまうんだ……
「寒ブリハラミ」
大本命です。締めです。
霜降って白っぽい身が テラテラ艶やかに光っている。
存在感半端ない。
やばい、見てるだけでヨダレがでる。
フェロモン、出してる?
「……ゴクリ」
わさびをのせ、ちょんと醤油をつける。
ぶわっ、と、醤油皿に ブリの脂がひろがったのがみえる。
もう、目がはなせません。
「あぐっ……くふっ///」
舌触りがヤバい。なんだコレ……
格別!!
ぷりっと歯応えとあぶらののりがヤバし!
歯応えがあるのに なめらか。
甘みがずっと口の中に残ります!
マグロの大トロにも負けてない!サスガ時季もの。
どうしたらいいのかわからない。
口のなかで舌が
二貫目も口に入れる。
「ふぁ///」
この しつこいほど口のなかに残る脂がまたらん!
大トロが とけて優しい香りを残すなら
寒ブリは 強引に 奪っていく 俺様的な主張をする。
米を襲い、蹂躙し、屈服させ、
サクラを巻き込み 引き上げる。
――――高みへと
連れ去られる……
逃げられない、絡み捕られる。
こっち来いよ!的な。
味覚を刺激され、高揚する。
幸せホルモン大放出!
「ああ、大好き///」
俺様、寒ブリ様々。
もう、どうとでもしてくれ。
『冬の白身三種』三貫『うなぎ』二貫『マグロトロトロセット』三貫『寒ブリハラミ』二貫の 計五皿分。
+刺身五種盛り
なのに大満足でした。
次回は寒ブリだけ食べに来てもいいな……
寒ブリと恋に落ち
サクラは 回転寿司屋を後にした。
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