57話 召喚
「おぅ、サクラ、気をつけてな!」
「はい、また明日!」
門番さんに挨拶をして 村の外に出る。
塀を辿りながら 魔方陣へと歩く。
″ザッ、ザッ、ザッ″
後ろから人が来てる。二人組の冒険者かな?
最近人の出入りが多くなってきたから、魔方陣がみつからないよう、行くタイミングをはかる。
荷馬車がサクラを追い越してゆく。
行ったかなと思いきや、後ろを歩いていた二人組はまだ追い越してこない。
村の塀を周り、魔方陣のある場所を過ぎ、砂利道を歩く。
(だいぶゆっくり歩いてるつもりなんだけどなぁ……)
森の脇道へと入る獣道がみえてきた。
この前イシルと通った猟師やキコリが使っている道。
知ってる道はこれしかない。
仕方がないのでドワーフの鉱山に続く道に 足を踏み入れる。
二人が通りすぎたら引き返そう。
と、思っていた。のに……
(……あれ?)
足音がついてくる。
サクラはちょっと早足で歩く。
後ろの足音も早くなる。
(もしや、追われてる?)
走ってみる。
ダダダっと、後ろから走ってくる音がする。
(ヤバい!なんで?人買い、とか!?)
魔物避けは人には効かない。当たり前だが。
(私の足じゃつかまる!!)
後ろから 手が伸びてくる。
(攻撃なんか効かないし、えーと、えーと、あ!)
サクラは風魔法を使う。足に。
加速なんか出来る威力はないし、多分バランスもとれない。
だから足元に 空気の塊をつくる。
『ぽよ~ん』
空気の塊をバネにして、トランポリンのように跳ねながら走る。
(成功!)
「くそっ!」
後ろでぼやいているのが聞こえる。
追跡者からとりあえず距離はとったが、魔力がもたないだろう。
サクラはドワーフの遺跡の近くの繁みに隠れる。
二人組が、遺跡の中を探している間に逃げるのだ。
遺跡の中なんかに隠れたら袋のネズミだ。
ホラー映画好きですから、知ってマス。
そのあと絶対ピンチに
案の定、二人は遺跡へと入っていった。
サクラは二人が入ったのを確認し、来た道をもどる。
「いたぞ!」
(げっ!)
もう出てきた!早すぎ!
サクラは走る。これ以上魔法を使えば体力が……
どうしよう!助けて!イシルさん!
魔方陣の上じゃないから駄目だとわかっていても 呼ばずにいられない。
イシルさん!イシルさ――――ん!!!
後ろから つかまれる
(もうダメ!?)
『オレを呼べよな ばーか』
ランが耳許で
(ランっっ!!)
男に羽交い締めにされ、もう一人が 麻袋とロープを取り出す。
″グルルルル……″
「ひっ!」
追跡者の二人の動きが止まる。
「なんだ……」
「……なんでこんなところに」
遺跡の中から 黒い豹が現れた。
大きな鋭い牙が光る。
「……サーベル……タイガー?」
「……違う……魔獣!!」
2メートル以上はありそうな
二人は ズリズリと
「……あ……あ」
「逃げろっ!!」
二人は 黒豹に 背を向けて走り出す。
黒豹は サクラを通り越し、逃げる二人を追う。
「ひぃぃ!!」
「助けてー!!」
″グルアアァッッ!!″
「……助かった」
黒豹は 二人を追い払うと 坑道へと戻ってきた。
サクラはそれをぼんやりと見つめている。
つややかに黒く光る毛皮、鋭く大きな牙を持つ 獰猛な魔獣
しなやかな
怖くはなかった。
蒼い瞳が サクラを見つめる。
この蒼い瞳を知っているから。
サクラはその首に そっと腕をまわし ぎゅっと抱きしめる。
「ありがとう、ラン」
もふっ、と、毛皮に頬を寄せる。
もふもふの匂いがして 癒される。
『もっと早く呼べよな』
耳許でランの声がした。
気がつけば 人化したランが サクラの腰に腕をまわし、抱きしめられていた。
「うおっ!!」
慌ててはなれようとする。
が、ランが腰をがっちりホールドしていてはなれられない。
「なんだよ、サクラがするのはよくて、オレがやるのはダメなの?」
「いや、あれは もふもふだったから……」
ランはかまわずサクラの頭を抱き、サクラがしたように頬を寄せる。
「ちょっと、ラン!」
サクラの匂いがする。
ランの欲しい温もりが腕の中にある。
『かぷ』
耳を甘く
今は邪魔をするイシルはいない
「やめ……」
″ちゅ……″
耳にキスをする
弾かれない。
助けられた事で遠慮しているのだろう。
″ちゅ……″
もう一度。長めに。吐息まじりに……
″ちゅっ……んっ″
髪をかきあげ 耳の後ろにキスをする。
「///」
″ちゅ……″
肩に手を滑らせ 首に唇をおとす。
「……?」
「///」
「……サクラ?」
サクラの様子がおかしい。
ランはサクラの顔を覗き込む。
「なっ!」
ランはサクラの顔を見て動揺する。
「なんて顔してんだよ///」
サクラは恥ずかしそうに顔を赤くして フリーズしていた。
「なんか、オレが悪いことしてるみたいじゃん」
「へ?」
「女って
ランよ、君の基準は間違っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます