53話 おかえり
今日は 久しぶりに
「足は肩幅 真っ直ぐ立って 両手を曲げて軽く拳を握る」
サクラはジョギングポーズをする
「肘から右手を引き上げ、左手は肘から後ろに引け」
背中に意識を集めながらうでを動かす。
始めにランに教えられた通り、体の
腕を振るたび、むにっと肉が動くのがわかる。肩甲骨あたりの。
「おっ、イイ感じじゃん」
次は 戦隊ものの変身ポーズみたいなヤツ。
「次も背中を意識して 今度は右手は左斜め前に伸ばし、左手は肘から斜め後ろに下げろ」
背中が捻られる感覚を感じながらやる。
「ちょっと、やってて」
「?」
ランは 母屋へ走っていく。
なんだろ?ま、いいや。腰フリ運動は 見られてると恥ずかしいから いないうちに終わらせてしまおう。
腰を 左右、前後、回しと、一通り終わらせたところで ランが戻ってきた。
「これ、引いてみて」
ランがもってきたのは『弓』
サクラは弓を受けとると構えてみる。
目標がないとやりづらいので、正面の木に狙いを定めて。
あ、矢はないですよ。
「背中のストレッチだからな、そこ意識しろよ あと、姿勢な」
あ!そうなんだ、これはゴムチューブの代わりなんだ!
ランはサクラの後ろに立つと サクラの手を包み込んで サクラの手の上から 一緒に弓を持つ。
教えてくれるのはありがたいが……
集中できませんよ。アナタ一応イケメンですし
「足は肩幅 楽に、真っ直ぐ立て」
すぐ後ろで ランの声がして、どきりとする。
左手を前に目標にむく。
「力ぬけって、肩とか、胸とか、力んでる」
この密着状態で緊張するなとか 無理っしょ!
「引くよ」
その状態から、おでこ辺りの高さまで、左右の手をおろしながら引いていく。
右手は
左手は、
両腕同士で引っ張るイメージではない。
「胸をしっかり開くように意識しろ。肩甲骨が寄っていくのを感じるだろ?」
正しい姿勢が取れたと思ったら、深呼吸しながら5秒ほどその状態をキープする。弓道でいう引き分けの体勢だ。
「打つよ」
引分けの姿勢から、左右の腕の力を均等に保ちながら、胸の位置まで腕を下ろす。
「さっきと同じ、肩が上がらずに胸が開いていることを意識して」
ランが手を放す。
サクラはここでも正しい姿勢を5秒ほどキープして……
「打て」
右手を弾く
”ビィィン“
「常に正しい姿勢になっているかを意識することが大切だからな」
なるほど、ぷるぷる腕も鍛えられそうだ。
勿論、左右反対バージョンも やる。両方3回ずつ。
ゴムチューブでやる時は、打たないで 力をそのままゆるめてもいい。
「じゃあ、最後。スクワットな」
「立った……まま?」
前回出来ずに 転びましたよね?
ランは いいからやれよ と 言わんばかりの笑みをむける。
足を軽く開いて平行にし、姿勢真っ直ぐのまま腰をおろす。
膝を足より前に出しちゃいけないから……
『グラッ』「ふわぁ!」
やっぱり!
後ろに倒れる。
『ぽふん』
前回同様、ランが受け止めてくれて――――
『グラッ』
「ひゃっ!」
そのまま二人で一緒に倒れた。
「ごめん!ラン、大丈夫?」
ランはサクラの下敷きに。
ランは立ち上がろうとしたサクラを 後ろからぎゅうと抱きしめた。
「ちょっと、ラン!」
「サクラ、痩せたね」
「え?いや、1㎏ちょっとだし、まだ、そんな……」
「オレ、わかるよ。抱き心地がちがうから」
え!?そんな感覚的なもんで測ってたの!?
「背中が痩せてきた」
腹はまったく痩せませんが。
『ぐるんっ』
「ひやっ!」
天地が逆転する。
ランはサクラを抱えると、くるん と 起き上がり、サクラを下に組み敷いてしまった。
「さっきは イシルに邪魔されたから……」
サクラを見下ろすランの瞳に 切ない色が浮かぶ。
「え?」
「……ただいま」
これが言いたかったの?
「……おかえり」
ランの目が 嬉しそうに笑う。
「……弾くなよ」
ランの顔が近付く。
ランはそっと サクラの首元に顔を埋め 頬を寄せ、サクラの頭を抱く。
ランの唇が 丁度サクラの耳元にくる。
『ただいま』
ランの
ちょっと離れている間に甘えん坊になったなぁ、と、サクラはランの頭をなでる。
『オレを呼べよな ばーか』
サクラを抱くランの手に きゅっ と 少し力が入る。
やっぱり 召還されなかったから ご機嫌斜めだったんだ。理不尽。
ランはすうっと 息をすう。
サクラの存在を確かめるように。
サクラの元に帰って来た事を実感するかのように。
ランは頬を刷り寄せてサクラの体温を感じる。
「ラン、もう、放して……」
サクラの柔らかさを感じる。
「ラン……」
首筋を撫でるように頬でたどり
すりっ と 襟元から肩口に侵入し 素肌に口を寄せる。
『かぷ』
「うわーーーー!!!」
″ばんっ!!″
肩に噛みつかれたところでサクラの結界がランを弾いた。
「いてーな!弾くなって言ったろ!」
「限度があるわ!」
「なんだよ!娼館行かなかったんだから、これくらいいいだろ!」
「行ってくれ!」
ランはやっぱりランだった。
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