同級生が前世の想い人かもしれない。

直行

第1話


 その日はいつもと違う夢を見たので、寝起きはひどく混乱した。


 舞台はいつもと同じ、剣と魔法の世界。


 夢が見せる場面は大体、魔物との戦闘シーンとか、お嬢様とのお茶会だとか、ギルド員との食事会とか。


 その日はメアリーとの密会で、逃避行の提案を持ち出されていた。


 この場面は何度も見たし、その後の流れも知っている。


 ギムレットはドラゴンを探すと言って去り、メアリーが涙を呑んで見送るシーンだ。その流れ自体は違っていなかったが、彼女の台詞が変わっていた。


 ギムレット、私はいつまでも貴方を想っています。この世界で結ばれる事が許されないのなら、来世で私は貴方に会いにいきます。どうか、お元気で。


 漫画のように飛び起きたオレは、心の中でメアリーの言葉を反芻する。


 来世って、何だ。


 今までの夢で彼女は、一度もそんな言葉を口にしていなかった。来世だと。それじゃ、まるでオレの今居る世界を予言しているみたいじゃないか。


 深呼吸して息を整えると、間抜けな欠伸が襲ってきた。オーディオコンポの時刻を見ると、丁度起きなければいけない時間だった。着替えるとしよう。


 オレは色々と準備をしながら、前世の夢をもう一度思い返す。


 何でこんなにメアリーの言葉に動揺してしまうのだろう。そんなものは考えなくても分かっている。オレは剣士ギムレットだから、メアリーに惹かれるのは当たり前か。


 ギムレットの生まれ変わりなんだから、夢から覚めても彼女に恋焦がれるのは当然に決まっている。


 もし、この世界にメアリーが居るとしたら、オレと結ばれる為に産まれたと考えてもおかしくはないだろう。


 ただし黒髪のギムレットと違って、メアリーは白銀の髪を持っている。


 そんな彼女がこの黒髪だらけの国に、生まれ変わっている訳がない。どうにかして、オレは欧州に行く方法はないものかと考える。傭兵にでもなるかと考えたが、海外より先に行かなければいけない場所があった。


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