第7話
盗賊に連れて行かれるままに歩いていくと、木が生茂った森に到着した。
「あの大きな木の中が空洞になっていて、そこがアジトになっています。」
盗賊は丁寧に説明してくれる。
木からはワイワイとした声が聞こえた。
「おう、ジョーじゃねえか!今日もいいカモ見つけたか?
????!!何だそいつらは!
てめえら!捕まえろ!」
盗賊のトップらしき人が声を荒げて命令した。
しかし誰も対処に動かない。
数秒経ち、手下達は全て崩れ落ちた。
「な、なんだ!何が起こってやがる!?」
そのまま目にも留まらぬ速さでギルバートは拘束した。
なす術なく拘束されたトップは項垂れている。
「お前がライト盗賊団の団長のライトでいいか?」
口を噤んだまま黙り続ける。
「ロビン、お願い。」
ロビンは魔法を使った。
「もう一度聞く。お前はライトか?」
死んだ魚の目のようになりながら答える。
「そうだ。俺がライトだ。」
「ここ最近この辺で商団の荷馬車や定期馬車を襲っていたのはお前らで間違い無いな?」
「あぁ、そうだ。」
「何人殺した?」
「さあな。少なくとも盗賊団一人一人が両手じゃ数えられねえほどは殺してるだろうな。」
ロビンは怒りで頭が一杯になり、魔法をうとうとする。
「やめろ。お前が今魔法でこいつらを殺してしまえば、お前はこいつらと同類になる。」
歯軋りをしながら堪えるロビン。
「ロビン、ここは堪えよう。
しかるべきところでしかるべき処罰が与えられるべきだ!」
智也がなだめる。
暫くして、途中で通りかかった馬車に報告してもらった盗賊の確保の情報をもとに警備隊が来た。
「よし、こいつらの処罰は国の警備隊に任せるとして、お楽しみのお小遣い稼ぎに行こう!」
アジトを見回ると、小さな空間を見つけた。
中に入ると箱の中に金銀財宝が積まれており、わずかにはいる外の光がそれらに反射して綺麗であった。
「基本的にこれらの財宝全ては我々のものにはならない。
割合で言うと6割くらいかな。
盗賊の隠し財産はギルド経由で精査された後に我々の元に来る。
4割はギルドの運営費に賄われるんだ。
でも安心して欲しい。
ただただギルドに徴収されるわけじゃ無いんだ。
ギルドの貢献度が大きく上がる。
低ランクなら1つや2つ上がるくらいの貢献度さ。
多分智也くんなら5級に上がると思う。」
財宝を一通りまとめた後、一行はアジトをでた。
「よし、警備隊がお金類は持っていってギルド経由で来るだろうから、それ以外の道具を持ってパルムへ向かおうか。」
「そうですね!ではいきましょう!」
**************
その後は大きな出来事もなく順調に旅は進んだ。
「嫌だったら話さなくてもいいんだけど、智也くんはどうしてパルムに向かっているんだい?」
本当のことを言おうか迷う智也。
ー 別に隠すことでも無いしいいか。
「僕は最近奴隷制度がこの国にあると言う話を聞いて、それをなんとかして世間に浸透しないうちに無くしたいんです。」
「なるほど、君も奴隷制度の成立阻止が目的だったんだね。
「ギルバートさん達もですか??」
「ああ、実は我々もそうなんだ。
隣国で末端の奴隷商が取引しているところを発見してね。
なんとか食い止めた後にロビンに自白魔法を掛けてもらったんだ。
すると奴隷商はこの国の大元が仕切っていると口を割った。
そのあとは旅中に情報を集めるとパルムに奴隷商の本拠地があると言う噂を聞いて向かっているところさ。」
「ぜひ一緒に奴隷制度を無くしましょう!」
智也は心強い仲間が同じ目的を持っていたことを嬉しく思うとともに、偶々向かったパルムが奴隷制度の根源である可能性が高いことがわかり、幸運に思った。
************
ついにパルムに到着した。
「うわ!滅茶苦茶デカいですね!
こんな門見たことないですよ!」
智也が驚くのも無理はない。
パルムの門はそれだけで一つの観光名所にもなっているほど大きく美しい門なのだ。
約30mの横幅に
約60mの高さがある。
門には彫刻がなされていて、大きさを忘れるほど見惚れてしまうデザインが施されている。
その門からパルムの街へ入るために物凄い長蛇の列ができていた。
「一緒についてきてくれ。
一緒ならおそらくすぐに入れる。」
ギルバートに2人はついていく。
行列を横目にズンズンと先頭まで歩いていく。
「おい!お前たち何をやっているんだ!
ちゃんと列に並べよ!」
おそらく何時間も待っているだろう列に並ぶ人々が声を荒げる。
しかしギルバートは全く気にせず歩いていく。
門の真下に到着した。
「身分証明が出来るものはあるか?」
門を警備する男たちが近寄る。
ギルバートはハンターカードを見せる。
「おお!失礼しました!
ギルバート様じゃないですか。
沢山の英雄伝が言い伝えられていますよ!
ゆっくりしていってください!
あ、その前にサインもらえます??」
少し図々しい門番にも嫌な顔せずギルバートは対応した。
「よし、大丈夫そうだから街に入ろうか。」
一行は門をくぐり抜けた。
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