第3話

審判や相手と挨拶を交わし、試合が始まった。


智也は練習の成果を遺憾なく発揮し無事に地区大会の決勝を迎えた。


ここまで来れば県大会は確定なので、あとは学校と自分の名誉のために少しでも良い順位にいきたいところである。


序盤はかなり苦戦が続き、ストレートで負けそうなところから見事逆転勝ちを果たし、地区大会優勝を果たした。


ダブルスで出ていた圭吾や俊哉も今までの最高順位の3位となり、県大会へと駒を進めた。


帰りがけの電車で向かいに座る圭吾と俊哉が話しかけた。


「おう、智也。地区大会優勝おめでとう。」


「ありがとう圭吾。最後は危なっかしい勝ち方だったけど、とりあえず県に行けてほっとしてるわ。


てかお前たちだって県出場じゃねーか。


今までなかなか上に上がれず燻ってたけどついに県の舞台だな。


おめでとう。」


「あざっすあざっす!今日はボールが止まって見えたんだよ!なんつって。」


「流石にそれはないと思うけどいつも以上に息があってやりたい事は上手くできた気がするよな。


今日の感じが県でも出せたら俺たちも関東大会行けるかもな。」


俊哉の言葉に突っ込みつつも喜びを隠しきれない圭吾であった。


「すまん、今日は優希に報告に行きたいからこの駅で降りるわ。


また練習メニューはうちに帰ってからまた相談しよう。


じゃあな。」


「うーい、またねー。」


「了解。また今度。」


智也を見送った2人は県大会出場祝いで帰り道にあるラーメン屋に向かった。


地元の人気店だが、ちょうど午後の開店の時間になったため、行列に並ばずにすぐに入れた。


「やっぱここのラーメンうまいな!なんつーかすっきりドーンみたいな!」


「お前の感性はどうなってるんだよ。


まあうまいのは間違いないな。」


「てかさー今日の話だけどさ、まさかオレたちが県行けるなんて少しも想像してなかったわー。」


「本当そうだよな。俊哉の父さんも母さんもボロ泣きしてたよな。」


「あの人達は俺が勝つなんて微塵も思ってなかっただろうからね。」


来月の試合に向け、よりやる気が湧いてきた2人であった。


ラーメン屋を出て、2人が別れてしばらく経ったあと、2人の元に顧問の先生から連絡が届いた。


ー 智也が病院で倒れたみたいだ。医者は過労だと言っていて今週いっぱいは休んだほうがいいとの診断だったそうだから今週はお前たちが練習を仕切ってくれ。ー


ピロリロリン、ピロリロリン。電話が鳴る。


「もしもし俊哉、連絡見たか?」


「うん見たよ、さっきあんなに元気だったのにね。」


「あぁ、そうだな。すぐ回復してくれたら良いんだが。」


「そんなに重症じゃないみたいだから来週には戻るだろうし、また機会見て連絡してみよう。」


「だな。じゃあまた。」


「じゃーね。」


今後が不透明になり、心配になる2人であった。


********************



ピーピー。突然のナースコールに看護師は驚くも、すぐになった部屋へと向かった。


「大丈夫ですか??あ!優希ちゃん!


意識は戻ったのね! 調子はどう?どこか悪いところはないかしら?」


「あ、こんにちは。そうですね、特に違和感もないですし元気です。あ、すみません、今って何年何月ですか?


あぁそうね、優希ちゃんが意識を失ったのがちょうど一年程前だから20XX年の7月よ。」


「そうですか。ありがとうございます!」


「じゃあ私は先生を呼びに戻ってくるけど、まだお水とかは取らないようにお願いね。」


「わかりました。」


ガラガラガラ。扉が閉まり、優希は1人きりになった。


ー 本当に戻ってこれたんだ。私。


辛かった。けどまた頑張れば良いんだわ。


せっかく戻ってこれたんだもん。ー


大きな欠伸をして伸びをした後、優希は病室の窓から外の青々とした木々をぼーっと眺めていた。


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