南山町妖怪退治~家出少年と小さな神様の物語~
バニラ
第1話 家出少年
こんな家出てってやる!僕はそう叫んだ。親と些細な事で言い争いに発展し、夜中の2時ごろまで喧嘩した末に行く当てもなく玄関のドアを開けて家の外に飛び出した。
「おい三郷!どこに行くつもりだ!?」
親が何か言っているが僕は止まるつもりはない。
「知るか!」と、叫んで何も考えずに僕は走りだした。
「はぁ…はぁ…ゲホッゲホッ!」
全力で10分ほど走っているとようやく冷静になってきた。
「はぁ…これからどうすればいいんだろう…現代日本で中学生が家出して生きていけるほど世の中は甘く無いのに…」
少しメガネがずれていたので直しながら真っ暗な住宅街で呟いた。
「何の考えもなしに家を出ちゃったのは流石に失敗だろ、何やってんだろ自分…」
不安を独り言で押しつぶし、少し前の自分を責めながらとぼとぼ歩いているといきなり突風が吹き荒れ素肌に触れた。
「ああもう!寒い!何で12月に入ったばっかなのにこんな寒いんだよ!」
半袖長ズボンの格好で鳥肌のたった腕をさすっていると、目が段々と暗闇に慣れてきたのであたりを確認してみると、ここが神社の参道だった事に気付いた。
「ここ南山参道じゃん、思ったより家から遠くに来てたんだな。」
足の遅い自分が自転車で10分ほどかかる場所に来ていた事に驚いた。
「いや、今は神社にきたことよりも夜をどうやって過ごせばいいかを考えないと…」
少し立ち止まって考えてみた。学校は誰かに見られた瞬間通報される上に何よりも明日、いや日付がもう変わっているので今日は月曜日か。間違いなく人に見つかってしまう。公園は基本的に警察が見回りをしているし、先客の酔っ払いがいる可能性もある。
「もうここにしようかな...」
無意識のうちに歩いていたのかいつの間にか目の前に神社の鳥居があった。
鳥居を見上げながら考える。
親は僕があまり遠くに行かないといつも考えているし、僕が神社に潜り込むとは流石に思わないだろう…よし、ここで寝よう!
これ以上夜の街で歩くのが嫌だったので即決した。
「あー寒い、寝れるかな?これ。」
寒さで震えながらこの神社の御神木?にもたれかかり、眠りについた。
気づくと不思議な場所にいた
(…ここどこだろ?夢?)
視界がぼんやりとしていてあたりが見えない、身体の感覚もふわふわしている
(あれ?目の前に人?)
突然自分の目の前にぼんやりとした人のような光る靄が現れた。
(何こいつ?なんかぶつぶつ言ってるし…)
「私の残り少ない力…君に託すぞ。」
靄が語り掛けてきて自分に手?を伸ばしてきた。
(力?力って何?)もやのようなものに聞こうと必死に声を出そうとした。
「あの!力って何ですか!」
ようやく声を出せた所で目の前が暗くなった。
「ッはぁっ!?」
(あーびっくりした!何今の夢!神社で寝たから?)
力をうんぬんかんぬん言われていたので自分の身体と顔を触ってみてみるが特におかしいところはない。
「やっぱただの夢かな...」
そう考えて立ち上がる。
「それにしても見つからないもんだな、親は警察に通報しなかったのかな?」
思ったよりも親に心配されていない事実に心を痛めながら伸びをしつつ上を向くと奇妙な人物が視界に映った。
足をばたばたさせながら鳥居に座る金髪ケモ耳で和服の女の子。
「は?」
思わず口から言葉が飛び出す。
すると女の子はこちらに気づいたのか僕に目線を向け、口を開いた。
「ん?主は儂が見えるのかえ?」
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