どこかの誰かのある手紙
りょう。
第1話
死んでみようと思って、いま、20階建ての建物の上に来てみたの。
大丈夫よ、この時間にここを通る人は居ない事は調べてあるもの、巻き込んだりしないわ。
死ぬとき位なるべく迷惑かけたくはないでしょう。
でもね、ちゃんと死にたかったから、飛び降りる事にしたのよ。
せっかく死ぬのだから何か記念に残したくて、こんな物を書いているの。でもだめね、まるで現実味が無さそう。
もう少し面白おかしく書いた方が良いのかしら?
気にしても仕方がないわね、だって私は見れないのだもの。
ねぇ、知ってる?
自殺すると魂がそこに取り残されちゃうらしいの。
私はさっき調べて知ったのよ。
知っていたらこんな事しなかったのに、どうして誰も教えてくれなかったのかしら。ひどいわよね。
ああ、そうだ。
今やってるドラマは原作が小説でね、その最後が本当に感動するの。もし見ているなら絶対に最後まで見てほしいわ。約束よ。
ずっと誰かに言いたかったから、丁度書いていて良かったわ。
不思議な感じね。
これを読んでいる貴方は、まるで私が生きている様にこの文字が頭に音となって流れるのでしょう?
誰かの心で生きると言うのは、思い出としてのみだけれど、これならば本当に生きているみたい。
芸能時のSさんも映像として残る様に、私もこの文字として残るのね。
全然悲しまなくていいのよ。だって貴方と私は、赤の他人であり、全く関わりも無かった人間なんですもの。
そろそろ書くことが無くなってきたわ。
何も思いつかないし、もうこれでいいかしら?
最後に、誰かに死ねなんて言葉を使ってはいけないわよ。私みたいに死んでみる人間がいるかもしれないもの。
では、さようなら。
2020年5月15日 橋下 沙織
※これはフィクションです。
どこかの誰かのある手紙 りょう。 @ryo_tamaki_syo
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