第44話 教会士トリオ

■スタートス聖教会 宿舎食堂 ~第4次派遣1日目~


昼食は8名の大人数になった。

3人が来た目的をメンバーと共有するために、タケルが司会者的に情報を整理することにした。

「勇者チーム」と「教会チーム」の両方のテーブルに向かって話しかける。


「えーと、こちらの3人はこのたび西方大教会から、我々のお世話をするために派遣された方々です。マリンダさんから皆さんを紹介してもらっていいですか?」

「はい、こちらからマリア、ルイーズ、カタリナの3名です。西方大教会の教会士を勤めております。」


「教会士というのは?」

「教会士は魔法士、武術士以外のもので、教会の様々な業務を行うものを総称しております。」


「勘の良いわがメンバー達は、色々想像しているかもしれませんが、こちらの教会士3名の尊厳を傷つける発言は控えてくださいね。それを踏まえてもし聞きたいことがあるなら、、、我慢できそうに無いナカジーさま、ご質問をどうぞ。」


「お世話って何するの? 何でこんな若い可愛い娘(こ)3人なの?」

(「尊厳だ」っつてんのに)


「はい、それではマリアさんに質問です。教会からはスタートスに来るに当たってどんな指示がありましたか?」

「勇者様の身の回りのお世話をするように言い付かっております。」

しっかり、ナカジーの目を見て返事をしている。

(この子がリーダーかな?)


「続いて、ルイーズさんに質問です。なぜ可愛い娘3人なのか?」

「・・・?」

ルイーズはタケルを見て首をかしげた。

「はい、それはそうですよね。自分で可愛いとはいえませんから。たまたまって事にしておきましょう。」


「ダイスケ君は何か質問ありますか?」

「いや、俺はお世話係とか要らないと思います。ミレーヌさんが全部やってくれますし。」


「そうですね。私もそう思います。では、カタリナさんに質問です。もし、『お世話係は要らないので、すぐにムーアへお帰りください。』そう言ったらどうしますか?」

「困ります! なにとぞ、お側においてください!」

カタリナより先にマリアが叫んだ。


「ルイーズさんと、カタリナさんも同じですか?」

二人は黙って頷く。


「アキラさんは何かご質問ありますか?」

無言で首を横に振る。


メンバーも状況は理解してくれただろう。

この教会士トリオには何の罪も無いが、送り返せば教会から理不尽な仕打ちがあるはずだ。


「では、リーダー権限でこの3人は当分ここにいてもらうことにします。ただし、我々の身の回りの世話は、私から言われたこと以外は一切やらないこと。」

「万一、勝手なことをしたら、その日のうちに私がギレンさんに送り返しますので。良いですか?」

教会士トリオは頷いた。多少は安心したようだ。


「みんなもそれで良いかな?お世話はしてもらわないってことで。」

メンバー3人も頷いた。


「マリンダさん、この3人の宿泊とか食事とかはどうなるの?」

「私が寄宿している教会用の宿舎で食事とベッドを用意します。それとは別に、ギレン様からは勇者様達向けに食材とお酒の差し入れがございました。」


「じゃあ、今日の夜は歓迎会だね。マリンダさんも来てくれますよね?」

「はい、ご一緒させていただきます。」


(この件はこれで一旦終わりと)


「では、勇者チームの皆さんには、今回の派遣の予定をお伝えします。今回はハリスの師匠へ魔法武具をお願いする旅に出る予定です。」

「明日から2泊3日を予定しているので、準備で不足しているものがあるなら今言ってください。私がこの後ムーアに行って買って来ますので。」


「食事とかどうするの?」

「ハイ、ナカジー君良い質問ですね。今後のために、野外で調理することを予定しています。失敗したら、パンと干し肉と水だけね。」


「野宿になるんですよね?」

「ダイスケ君もいい質問です。ですが、野宿になるのは2名だけの予定です。夜は魔法でここに帰ってくれば良いのですが、馬車を放置出来ませんから2名は馬車で寝ることにします。」

「女性のナカジーは野宿を免除して、男性3名からでくじ引きで決めたいと思っています。」

「あら、ありがとう。そう言うところがタケルの良いところよね。」ご機嫌です。遠慮はありません。


(できれば、野宿も避けたいが・・・目処が立ってから言おう)


「他に必要なものが無ければ・・・」

「ソーセージ!!」

「はい、ナカジー君。ソーセージね。買ってきましょう。それで、ダイスケには一緒に来て欲しいんだけど大丈夫かな? 2時間ぐらいの予定。」

「大丈夫です。師匠には断っておきます。」


「わたしも、」

「はい、残念ながらナカジー君はお留守番です。明日からの旅に備えて、炎魔法を更に強化してください。もっと大きく、もっと連続で出せるようになったら。ご褒美にソーセージを差し上げます。」

「・・・。」 顔全体で不満を表している。


昼食を終えて、部屋に向かおうとするタケルの袖をナカジーが引っ張る。

目で話があると訴えかけているので、裏口から外に出た。


「あの3人可哀そうだよね。あれじゃぁ、まるで・・・」

「そう、思ってても言葉にしちゃダメ。そう言う目で見るのもナシね。」

「でも、こっちに置いといてどうすんのよ。アンタ達がよからぬ事をしないとも限らないでしょ!」

「そこは、ナカジーが男3人のお目付け役になると言うことで、ご協力お願いしますよ。俺自身も正直、どこまで良心回路が働くか自信ないからね。」

「そんなのムリよ。タケルがしっかりするしかないでしょ!!」

(そうなんだが、はっきり言って自信がない。)


「だけど、帰しちゃうとイジめられるどころじゃすまないと思う。ノックスにも報復があると思うしね。しばらく時間かせいでから、円満に戻ってもらう方法を考えよう。」

「何なら、もう一人イケメン教会士を派遣してもらおうか?」


「いらないわよ!!」


グーパンチで話し合いは終了した。




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