第5話 始まりの祠 後編
■始まりの祠
振り向くとコンビニ制服を着たぽっちゃり女性が現れた。
「おはよーございまーす」
(中島さんか、もう1時間経ったのか?)
挨拶は後にして小人に向き直ったが、最後の1匹は既に奥に向かって逃げていた。
深追いせずに、振り返って
既に小人達の影は無く小澤達も広場の真ん中に戻ってきた。
「小澤さん高田さん大丈夫だった?ケガはない?」
「小鬼は一発殴るとすぐ逃げていくから、とどめは刺せませんでした。ちょっと痛いけど青あざぐらいでしょ」
小澤は木刀を持つ右手を擦っている。
高田さんは無言でこちらを見てうなずいている。
「中島さん、おはようございます。今回のリーダーの山田です。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いね。いきなり、戦ってるからびっくりしたわよ。こんなに大勢のゴブリンも初めてだし」
目を見開いて、皆を見ている。
中島さんはコンビニメンバーの中では一番の古株で、既に5回ドリーミアへ行ったことがある。
中島さんと話すため、小澤さんと高田さんに先頭を代わってもらった。
小澤さんは多少不満そうだったが、一番前を歩き出した。
「中島さんは6回目ですよね? 一番続いた勇者は何日ですか?」
「一緒に行く勇者は山田さんで4人目。そのうち二人は町までたどり着けず1日で終わり、たどり着いた勇者も1週間で私が3回同行したらやめたから、最初の町の近くぐらいしか出歩けなかったのよ。せっかく魔法をちょっと覚えたのに。」
中島さんが歩きながら話してくれた。
(小澤さんが言うように勇者が続かないのか・・・)
「ところで中島さん、私たちが出発してからもう1時間経ちました?」
「まだ、向こうの時間だと20分ぐらい。今日は子供を早めに預けて少し早く来たのよ。山田さん達が心配でね。小澤君も高田さんも悪い人じゃないんだけど、ちょっと人当たりが下手くそだからね。」
中島さんは面倒見が良いタイプのようだ。
履歴書によるとシングルマザーで、子供はまだ保育園らしい。
西條さんの話ではこのバイトの後にも掛け持ちしている。
「山田さんにはね、少しでも長く続けて欲しいのよ。うちの店の勇者は続かないって言うジンクスを打ち破ってもらえれば、小澤君たちもちょっと変わるんじゃないかなぁ。私の時給のためにも根気良くお願い!」
そう言って、武の背中を叩いた。
小澤と先頭を交代して、さらに洞窟を進む。
スライムに5回、蝙蝠に2回遭遇してだいぶ疲れた頃に、洞窟の先がようやく明るくなってきた。
「出口だ。」
皆がつぶやき笑顔が広がる。
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