いつかの日まで

篠原優菜

第1話

私は生まれつき心臓病なの。そう友里姉から聞かされたのはいつだっただろうか。


私は未希。13歳の中学1年。私には7歳離れた姉、友里姉がいる。

両親は私が幼いころに離婚した。

私と友里姉は母に引き取られ、祖母と4人暮らしをしていた。


しかし、4人暮らしをし始めて2年がたったある日、母が病気で死んでしまった。


その3年後、父が事故死したと聞かされた。


その頃、私は小学生。

友里姉は高校3年生で毎日受験勉強をしながら家事と忙しい日々を送っていた。

私はずっと3人で暮らしていけると思っていた。

でも、現実は甘くなく、私たちは自分達の生活で精一杯になってしまった。

考えに考え、私たちは祖母を老人ホームに入居させることを決意した。



「友里姉いってきます。」

私は元気よく家を飛び出した。

いつも仲良しの健と一緒に登校するのが朝一番の楽しみだ。


あっという間に午前中の授業が終わり、昼食の時間になった。

健とは席が隣同士なので動く必要もない。

でも、私たちは向かい合って食べるために机を動かした。

私は毎日友里姉の手作りお弁当を持参している。

友里姉の作るご飯はどれも美味しい。私の大好物だ。


「いただきます。」

いつも健は私のお弁当を羨ましそうに見ながら食べている。


「もーらい。」

健が私のおかずをお箸で取った。


「なにするのよ。あはは。」

怒りたくなったがなぜか笑ってしまった。健だしまあいいかと思った。


今日もいつも通り食べているつもりだったが、なぜか食欲がなかった。

でも、残すと友里姉に失礼だと思い、頑張って食べていた。


「未希食欲ないの?」

健が私の食べるスピードが遅いことに気がついて聞いてきた。


「なんかいつもより食欲ない。体調悪いのかなあ。」

「無理せんでええで。じゃあ僕が食べてあげる。」

健は嬉しそうだ。これ以上何も口にしたくなかった私は、ほとんど食べていない

お弁当を健に差出し、私はその場で机に突っ伏して寝てしまった。


どのくらい時間がたったのだろうか、気がついたら私は保健室にいた。


「先生、私、....。」

「あら、起きたのね。健くんが連れてきてくれたのよ。すごい顔色だったわ。」


さっきまで健と昼食を食べていた時のことを思い出した。


「すみません、寝てしまって。授業に戻りますね。」

「大丈夫なの?もっとゆっくりしていてもいいのよ。」

保健室の先生はいつも優しいと評判だ。


「いえ、授業が進んじゃったらついていけなくなるので。」

私は、少しくらくらする頭を抱えながら足早に教室へ戻った。


教室に戻ると健が大丈夫か尋ねてきた。私は小声で大丈夫と答え、急いで授業の

準備をした。しかし、だんだん頭痛は増してきて、授業どころではなくなった。

教室を出て保健室に行く気力もなく、私は机に突っ伏してしまった。


健が自分のジャケットを肩にかけてくれたのが分かった。

なぜか安心し、そのまま寝てしまった。





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