第16話 猫神の村

「……朝?」


「緋彩クン」


神妙な顔をした蓬が枕元に座っている


「え?なんだよ……」


「君、寝相悪いね。俺蹴っ飛ばして布団を奪うとは良い度胸がおありで…」


「……なんか外が騒がしいな」


「話を逸らすなー!」


_____


「大丈夫ですかね?」


「3日以内なら大丈夫だろォ……まあ、オレたちの確認が確かなら……な」


「一本だたら……?赤舌に頼まれた仕事はどうしたんだ??」


「今からやろうと……いやぁーやめてー引っ張らないでー」


______



「外ぉ?あれ、人集りだね」


「なんだぁ…ヒーロ……」


「あの高台にいるのは……」


昨日は気づかなかったが黒と茶色の長い髪

あれが猫神……?



「これから!高貴なるお方…猫神様へ献上する生贄を発表する!!」



生贄……??!


「行ってみよう…」




「では、猫神様」


「悲しいけれど村を維持するため…仕方ないの」


「失礼して…名を…村田 春ノ助むらた はるのすけ!」


「ひぃっ!!」


名を呼ばれて身をふるわし高台に上がっていく人が1人


「あれ…昨日あった人じゃない?」


猫神を崇めていたようだかなぜ生贄に選ばれた?



「今日で3日がたちました……なにか成果は?」


「あ、ありません……や、やっぱり殺すのも奪うのも……怖くて…」


「……怯えないで、成果はありませんが聞くところによると新しい住人を連れてきたそうですね。それを称えて」


ぷしゅっ


「楽に殺して差し上げましょう」


首が飛んだ、昨日、明るく接してきた人の首が鮮やかな血を撒き散らして


「な、なんだ…あれ」


血しぶきをかぶった猫神に対して浴びせられたのは歓声…




ほとんどの村人はここではこう思っている


人が死んでも、それは仕方がない

だって神様が奪った生命だから


私たちが人を殺めても仕方がない

神様がそう望んだから


この村の幸せを願うなら他から奪うしかない

それが神様のお告げだから




「狂っているね…人間ってどうしてこんなに簡単に狂えるの?」


確かに…だが


「これは…信仰心だ…」


目の前に自称だが、神本人がいるんだ…信仰して当たり前……


「それに、ここの村は不自然に米が多い…」


「豊穣の神の力を使ってるってことか?」


そうなると…これを維持する力がいる……


「あぁ〜そのための生贄ね。でも、人間の味 覚えたらやめられないみたいだよ?神なのに…いいの?」


「所詮本物じゃないって事だな」


……


「色々とわかったし……帰るか?」


青丹は衝撃的なものをみたからか終わりたそうにしている


「いや、今出ていくと怪しまれる、と言うか殺される」


なぜかはっきりと言い切る


「なぜ?」


「昨日や朝はいなかったが…この家に帰る時…猫がうろついてたんだ」


「野良猫はいるでしょー」


「いや、なんと言うか俺たちを監視しているかのように一定の距離で見てるんだ…おい、いるんだろ?」


その声掛けに驚いたのか天井から落ちてくる白い物体…いや、人


「にゃっ!!?にゃぜバレた……」


現れたのは猫の耳と尻尾が生えた白い着物をきた女


「…ほんとにいたのかよ……」


「カマかけたのにゃ!!?にゃーー酷いにゃぁ!……はにゃ?そこの少女…にゃに縄なんか持って……な゛ぁーーーーーっっ」


……


「捕まえた」


「よくやった青丹」


とりあえずで縛り上げる


「酷いにゃあ」


「で?君ィ誰の手先で何が目的なんだい?」


「そ、そんにゃの言えるわけ…にゃふん」


喉を撫でる


「にゃーやめっ!やめるにゃー…言う!言うからぁ!」


……弱、


「で?お前は何者?」


「…にゃーはスズ……猫神様に雇われた者、にゃ」


「どうして雇われた?」


そ、それは…


こちょこちょ


「にゃふ…食事に困ってた頃にゃーたちの親分、大猫おおねこが猫の同盟だーって言って猫神様と契約したんにゃ!」


「で?何してたの」


「んにゃ……主に監視、あと報告にゃ」


報告……?


「報告は、ゴロゴロ、成果を上げたかーとか逃げようとしないかとかを…なんでか…ふにゃぁー」


「青丹チャン、その手を止めて」


「えー」



聞くところによると

主に命令を下しているのは猫神であり大猫はあまり関わっていないと言う

それに従っている猫たちもあまり報告後の事情を知らないらしい


「もー隠す理由も無いし、はっきり言うと不満が無いわけじゃ無いのにゃ」


ご飯は増えてないし、仕事の量は割にあってないし……

でも逆らうと……


「逆らうとどうした?」


少し口篭る


「猫神様に逆らったサバトラがいたのにゃ…でも、最近見かけなくて…噂では逃げたとか言われてたけど…寝床には血があった…絶対猫神様に……」


最後まで言わず しょぼんとするスズ


「だったら 従うのをやめたら……」


「仲間が…家族が殺られたのに…従い続けるのは嫌だにゃ……でも、逆らえば死ぬ…逃げれば行くあてがないく野垂れ死ぬ運命にゃのよ」


どうしようもない…従うしかない


「大猫はこの事になんて言ってるんだ?」


仲間を見捨てるような親分なのか?


「……大猫は猫神様の所に行ってから帰って来てない…」


「……え、それってさ…親分サン死……」


嫌な空気が流れる


「いや…そう簡単に同盟相手を殺すか?猫たちを元々纏めていたのは大猫なんだろ?それに、そんな事に気づけば反乱が起きる…」


「そうかなぁ…黙ってればバレないんじゃない?」


そんな子どもの嘘じゃねぇんだから……


「うーむ、単純に牢にいるんじゃないか??」


「…だといいにゃぁ…はあ、にゃーは…昔の方が良かったにゃ」


たくさんは食べられなかったけど…のびのびして楽しかったにゃあ……



「猫、可哀想」


「う、うぅ」


急にボロボロと泣き始める


「うにゃぁぁ!!助けて欲しいにゃ!ニンゲンの事わかんにゃいけど…でも この村がおかしいのはわかるにゃ!」




……


「…そうだな…じゃあ協力しろ」

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