浪人

エアコン eakon

第1話

 閑散としたとした深夜の都市を彷徨う。だがこの都市は夜を知らず白夜のように光り輝いている。今日の俺の気分にはミスマッチとも言える派手派手しさだ。この都市に蓋をして暗闇で守って欲しい。なぜ幽々な気分かというと今日は大学入試の合格発表があったのだ。結果としては惨敗と言うべき結果だった。浪人生活が幕を開けるがこのまま幕を引きたい、そう思わせるほどの心象だ。この都市は今の俺には些か明るすぎる。夜を知らない都市の閃光一つ一つが俺の心を苛み、突き刺す。だがそうゆう訳にもいかず家に帰れずにいた。両親に会いたくない無意識に考えていた感情がここに俺を突き動かしたのかもしれない。

 僕学校の先生になるんだ!幼少の俺はそんなことを言い出し両親が喜んだことは覚えている。別に大仰にもなりたいと思ったことは今までもないのかもしれない。両親が高校で教職についていたためということがきっかけだったと思う。「先生になりたい!」ただ両親が喜んでくれたことが嬉しかった幼い俺はそれを現実にしようとする第一歩でつまづいた。今となってはなりたいのかすら分からない。ただ両親を失望させたくない。スマホがバイブする。渦巻く心を灘らかする振動だ。同じ大学志望の友人からの一報だった。

「私駄目だった 何が悪かったのかな」

 今にも声を上げ泣き出しそうな一文だが僕の心は晴れた。彼女の連絡が悲嘆なものであることはわかるのだが俺の心を晴れやかにするには最上の出来事だった。両親にずっと悲しい顔を見せるわけにもいかない。今頃心配しているだろうし。決心できた俺はこの光り輝く都市から家路に着く。

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