鬼の国の冒険者~異世界に転移したけどチート無し、スキル無しだったのでどうにか頑張って生き足掻いてたらいつの間にか「角の無い鬼神」って呼ばれるようになりました~

種子島 蒼海

プロローグ

第零話 とある男の人生

 「ハァ……、これからどうしよう?」


 彼、島田 鉄心しまだ てっしんは途方に暮れていた。

 年齢は30歳、職業は元警察官、元というのはつい先ほど12年間勤めていた警察官という仕事を辞職したばかりだからだ。

 なぜ鉄心が12年間も勤めていた仕事を辞めてしまったのか、その原因は彼の性格にあったのだろう。

 鉄心が日ノ本国ひのもとのくにの警察官になったのは、高校を卒業した18歳の時であった。

 鉄心が警察官という職業を目指した志望動機は、子供の頃から警察官と言う職業に憧れていたから、というよくありそうな理由であったが、実際のところは違った。

 鉄心が警察官を目指した本当の理由、それは安定した職業に就き、両親を安心させたいというものであった。

 本当は鉄心の趣味であるゲームや漫画、アニメ関係の職業に就きたいと思っていた。

 しかし、鉄心はそのことを両親に言っても反対されるだけだと判断し、周りには本心を隠したまま安定した職業である公務員、その中でもパッと頭に思い浮かんだ警察官を選んだ。

 とは言っても、そんな理由だけでは警察官という仕事を10年以上も勤め続けられるわけがない。

 最初の動機はどうあれ、警察官になってからしばらくは、警察官としての仕事にやりがいを感じ、充実した毎日を過ごしていた。

 しかし、それが変わったのは彼が警察官となって10年が経った頃であった。

 日々の激務と上司からのパワハラ、そして警察官としての仕事理想と現実の乖離かいり、これらの要因が最悪の形で混ざり合い、鉄心は心を病んでしまった。

 それからの鉄心の過ごした日々は、正に地獄の様であった。

 どれだけ病を治そうと頑張っても一度病んでしまった心は中々元に戻らず、仕事にも影響が出てきて休むようになった。

 そして彼は、「こんな状態で警察官を続けることは他人に迷惑をかけるだけだ。それにこのままこの仕事を続ければいずれは死んでしまう。そんなことになるくらいなら辞めるべきだ。」と警察官を辞める決心をしたのであった。


「とはいえ、前向きに生きないとな!、幸い貯金もそれなりにあるし、しばらくは実家で静養しよう。」


 鉄心は暗くなっっていた気持ちを否定し、前を向かねばと気持ちを無理やり切り替え、実家への帰路に着く。

 

「でもな~、仕事辞めちゃったし。次の仕事も考えないとなぁ……」


 そう考え始めると再び気持ちが落ちてくる。

 鉄心はこれからの自身の人生のこと考え、悶々とした気持ちのまま実家までの道のりを歩き続ける。

 すると、ふとした瞬間にあることに気付いた。


「あれ、俺こんな場所歩いてたっけ?」


 鉄心が地面を見ると、先程まで舗装された歩道を歩いていたはずであったのに、いつの間にかむき出しの地面の上を歩いていた。

 そこで鉄心が歩みを止め周囲を見渡すと、いつの間にか見知らぬ森の中にいた。

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