第27話 反逆の狼煙
前回までのあらすじ!!
作者の盛大な勘違いにより、『ローファンタジー』へと強引にジャンル変更されたわけなのだが……
「静音さんあの剣……『聖剣フラガラッハ』の呪いは天音に対しては大丈夫なの?」
オレは不安に駆られ静音さんに聞いてしまうのだが、
「さぁこのワタシにも正直判断がつきません。ただ天音お嬢様なら、もしかして………とは思います」
この世界の管理人を任されてる静音さんでさえも、それは判らないようだ。天音に無事でいて欲しい……それだけがオレの願いだった。葵ちゃんを失い、その上天音まで失ってしまったら……っと考えただけで気分が悪くなり吐きたくなってしまう。
「うぅっ……(うっぷ)」
吐き気を抑えるように、口に手を当てる。なんとか吐かずに済んだが、口の中が胃液で苦っぽくなってしまった。
「大丈夫ですかアナタ様? ツラければ目を背けていてもいいのですよ」
そう静音さんはオレに優しく声をかけてくれた。きっと静音さんだって不安で仕方ないのに心配してくれるなんて。そんな静音さんの優しさに触れると少しだけ気分が軽くなっていた。
「いいや、オレは天音が戦うのを目を背けずに見届けるよ! オレは戦えないけれども、この目で天音の勇姿を見届けたいんだ。それが……オレにできる唯一の戦い方だしね。何より無念にも殺されてしまった葵ちゃんの為にもなるからねっ!!」
オレはそっと葵ちゃんが眠るであろう、青い棺を見つめる。
「……アナタ様は本当に強くなられましたね。きっとこの場に葵お嬢様もいればそう思ったに違いありません(ぐすりっ)」
静音さんはオレからそっと顔を背け、すんすんと涙を流しながら鼻を鳴らしていた。きっと静音さんも葵ちゃんの事を思い出していたのだろう。オレはそっと目を瞑り、心の中で強く想う。
「(葵ちゃん。きっと天音なら葵ちゃんの仇を取ってくれるはずだから。だからさ、葵ちゃん、天音の事を守ってやってくれよな!)」
オレは神頼みなんかしないぞ! 何故なら信じられるのは自分の仲間だけだから!
瞑っていた目を力強く見開き、敵役であるアルフレッドのおっさんとクマBを殺さんばかりに睨みつける。
「なんだぁ~その反抗的な目は? もしかしてオラ達に勝てると思ってるだか(笑)。それはおめえ、勘違いも甚だしいってやつなんだぞ。あんまり笑わせるなべ、オラ達笑い死にしちまうぞ~。な、クマBお前もそう思うだべ?」
アルフレッドのおっさんは隣で立っているクマBに、自分の考えに賛同するよう問いかけた。
「けたけたけたけた」
っと「マジかよコイツら、Lv1の分際で俺とアルフさんに勝てると思ってるとか……ハチミツよりもよっぽど甘すぎるってばよ(笑) いくらハチミツ好きの俺でも虫歯になっちまうよ(笑)」とハチミツだらけの歯をむき出しにして、オレの事を景気よく嘲笑っている。
終いにはクマBは無防備にもオレの方にゆっくりと近づいてきて、「(ずいっ)……けたけたけた」まま、とりあえずこのハチミツでも食べてさ、自分の
「このやろっ!!」
「アナタ様ダメです!! そんな安い挑発に乗せられてはっ!?」
オレはそのクマ公の人をバカにした態度に腹を立て今にも飛び掛ろうとしたが、静音さんが叫び静止させられる。
「で、でも静音さんっ!!!!」
オレはその言葉に逆らうように、静音さんの名を叫んだ。
「大丈夫です! きっと…きっと天音お嬢様がアナタ様のその悔しい思いを乗せて、アイツらの事を痛めつけてくれるはずです!!」
静音さんがそう力強く、オレのことを説得してくれる。その言葉を聞き、天音の事を心の底から信用していると改めて感じることができた。
「ぐっ……」
オレは我慢するように顔を下に向け、唇を噛み締める事で感情を押さえつけた。
「お~、なんだなんだ? 怖気づいただか? おめえそれでも男か?」
「(我慢…我慢だ! 我慢しろオレ!!)」
農夫のおっさんの挑発にも耐え忍ぶ。
「ちっ……つまんねぇ男だな」
アルフレッドは挑発に乗ってこないオレに興味をなくしたのか、吐き捨てるようにそう言った。
「(ずいずいっと)けたけたけた」
そしてクマ公も「ほ~ら♪ お前の甘さが詰まったハチミツだぞ~。ほれほれ、舐めてみろよ(笑)」とばかりに、再びオレに対してハチミツを差し出している。
バシッ! オレはその差し出されたハチミツだらけのクマ公の左腕を右手で強めになぎ払う。
「おお怖ぁ~♪ 最近のキレる若者さ、怖いべさ~♪ (ぷるぷる♪)」
「……」
農夫のおっさんはわざとらしく、まるでダンスでもしているかのようにぷるぷるっと震えながら、小躍りしそうな勢いでオレのことを馬鹿にしていた。またクマBはオレがなぎ払ったことで地面に落ちてしまったハチミツを、ただじっと黙って見つめていた。手を叩かれたことよりもハチミツをダメにされたことが気になるらしい。
「お前等いい加減にしろよな! 今に勇者が! いいや、天音がお前達のことを倒してくれるからな! 覚悟しておけよ!!」
「ふん……弱い犬さ、よく吠えるとは昔の人は上手いこと言ってたべさ」
「……」
クマBは何にも言葉を発さない。ただ無言なだけだった。
「何やら楽しそうなことをしているじゃないか……そろそろ私のことも交ぜてはくれないか?」
「あ、天音!? 呪いは……『聖剣フラガラッハ』の呪いは平気なのか!?」
っと、いつの間にか天音が会話へと強引に入ってくる。オレは天音の体に異常がないかと心配で慌てて聞いてしまう。
「ああ大丈夫だ。キミには本当に心配をかけたな。ようやくこの剣が私の体に馴染んできたようだ。それになんだか、この剣『聖剣フラガラッハ』の
「(ま、
「……聞いたことがあります。聖剣には人と同様『意思』が宿るモノだと。ただその声を聞けるのは、剣自身が『主』と認めた者にだけだと言われているとか」
「……ってことは何か? 『聖剣フラガラッハ』が天音のことを主と認め、その『力』とやらを貸してくれるってことなのか?」
静音さんが語るようにそんな補足説明をしてくれた。オレの言葉を肯定するように、コクリっと静音さんが静かに頷いた。
見れば聖剣『フラガラッハ』を取り巻いていた『雷』そして『火』が天音をも飲み込み、『バチバチ、バチバチ』と音を立て渦巻いていた。
「し、静音さん。あれは危険じゃないのか?」
「いえ、たぶん大丈夫だと思います。それにもしダメだったら、とっくに天音お嬢様は『雷』そして『火』によって焼き死んでいるでしょうし……」
確かにあれだけのエネルギー量にも関らず、天音の体や服には傷1つ付いていなかった。
「こ、これはもしかすると…………もしかするかもしれないな!」
勝てる! 今の天音なら絶対にアルフレッドのおっさんとクマ公に勝てるぞ! 先ほどまでは剣の呪いがとても心配だったが、剣が天音のことを『主』と認めたことでオレは勝利を100%確信した。
「ぺっぺっ。聖剣だかフランダースだか知らねぇだが、そんなモノでオラに勝てると本気で思ってるだか? はぁ~っ……オラも落ちたもんだなぁ~。いいだべ、さぁ来い! オラのこの『
アルフレッドのおっさんは
北欧神話の主神オーディンが持つとされる、最強の槍『グングニル』それは放たれたが最後、決して狙った的を外さない、敵である相手を
「ま、まさかそれは『グングニル』ですか!? 確か先の大戦で失われたはずですよ!? ……あの伝説の槍『グングニル』がこんなところにあるだなんて!?」
っと静音さんは何故だか酷く驚いた表情をしていた。
「し、静音さんあの『グングニル』って槍はそんなに凄いの?」
「え、ええそうですね。魔王こそ倒せませんが、威力自体は天音お嬢様が持つ『フラガラッハ』と同等……いえそれ以上かもしれません。なんせ敵のいる方向に投げれば必ず相手の心臓を貫き、自動的に主の元へ帰ってくる……と聞いたことがあります。それに『フラガラッハ』のような『呪い』もありませんので……」
そう語る静音さんの顔はみるみる青ざめていた。おいおい。そんな伝説の武器をこのおっさんが持ってるのかよ?
「この槍のことさ、僧侶様はよく知ってるだな。実は昔オラは勇者様……
アルフレッドのおっさんは悲しい目をして思い出を語るようにオレ達に聞かせてくれた。
「(このおっさんが前の勇者様のパーティーいたのかよ!? だから以前『ライブラ』で調べた時に『Lv98』とカンスト寸前だったのか? しかも天音が持つ伝説の剣『フラガラッハ』と同じ威力、いやそれ以上でしかも自動追尾付きの命中率100%の最強の槍『グングニル』だと!? そんなバケモンに本当に勝てるのかよ……)」
オレは意外なおっさんの過去に驚愕してしまうのだった。だが、アルフレッドのおっさんが前の勇者様の
「あ、天音! ほ、ほんとに大丈夫なのかよ!?」
オレはその事実を知ってしまい、不安に駆られ天音の名を叫んでしまう。
「何の因果か
「ふん。だからどうしたというのだ? 前の勇者なんて知りたくもないな! 何故なら今の勇者はこの私『勇者天音』なのだからな!!」
天音は自信満々にそう宣言した。
「もはや戦うしか道は残されていないのか……」
無力にもオレには、そう嘆くことくらいしかできなかった……。
第28話へつづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます