第10話 この世界(RPG)について……

 前回までのあらすじ!!

 主人公のオレは『村人C』として、エルドナルド城の南門を静音さんと通過しました! 完


「ど、どうでもいいけどさ、今回の『前回のあらすじ』が雑すぎるんじゃ……」

「えっ? だって前回のお話であれ以上の出来事ありましたか???」

「いや静音さんの言うとおり、あれ以上何もなかったけどね。 この物語……ほんとに大丈夫なのか???」


 オレはこの物語の今後の展開を危惧しつつ、更に疑問を投げかけた。


「それにさ、いつもある話末の『あと〇〇文字~』みたいなのも無くなってたけど……気のせい?」

「あ~アレですか? あれも元々は各出版社のラノベ応募規定の文章分量を表して……い、いえアレは本作の伏線だったようですよ~。でも何か作者の方が『イチイチ文字数えるの面倒じゃねぇ?』っとの理由で無くしたとかなんとか……おほほほっ」


 などと、この物語の製作秘話(ネタバラシ)をわざとらしくも笑いながら誤魔化してくれる静音さん。それは本編中にバラしていい話じゃないんだぞ……。


「……っと、言うわけでアナタ様! エルドナルド城の城下町に着きましたよ♪」


 やや強引に話しを逸らしながら、静音さんは「これがこの世界の街だよ♪」と胸を張り両腕を大ぴらに広げ、まるでオペラを歌うように自慢気にしている。


「すっげっ。この世界ってほんとRPGの街並みそのものなんだな!」


 オレが入って来た南門の入り口を通り過ぎると、地面にはレンガらしきモノで舗装されている道があり、また道の両脇には花壇があり、所狭しと綺麗な花々がたくさん植えられていた。そしてすぐ右手にはやや大きな建物があった。入り口には木で出来た大きな看板が掲げられており、ここが何なのか『絵』で教えてくれる。こんなところはいかにも昔のRPGっぽい。


「これはベットの絵? ……ってことは、もしかしてここは『宿屋』なのかな!?」


 これは重要だ。何せ序盤では唯一の回復できる施設なのだから。RPGの序盤で体力HPを回復できる手段と言えば、回復アイテムか宿屋くらいなものである。


 そしてレンガが敷き詰められた道の反対側、左手の建物には入り口の看板に『剣』と『盾』そして『袋』の絵が描かれていた。


「ここもそのまんま『武器屋』と『防具屋』。それと……『道具屋』だな!」


 ここも重要だ。RPGの序盤ではLvが低く、戦闘は主に武器と防具に全てがかかっている。と言っても決して過言ではない。また道具も戦闘で傷を負ったときに、HPを回復できる『やくそう』などが売っていて、宿屋がない街の外ではまさに生死を左右する貴重アイテムなのだ。


 そして両脇に立ち並ぶ店を通りすぎると、中央には大きな噴水があり、その周りを男の子と女の子の幼い子供たちが走り回って遊んでいた。


「わーい♪ わーい♪」「まて、まて~♪」

「おお! こんな光景もいかにもだなっ!」


 うんうん。やっぱりRPGの世界といえば、噴水の周りを無駄に子供が走ってるのは定番中の定番だよな♪


「ええ、そうですね。……ですが、あの子供たちは朝起きるとすぐに噴水の周りをずっと走らされ、日が暮れると家に帰り、次の日の朝にはまた走らされる。……あの子達は永遠に・・・その繰り返しなんですよ」

「え、永遠に走ってるのかよ!?」


 オレは静音さんのその言葉にギョッ! とし、噴水を走り回っている子供たちに注目した。


「な、なんだろう。すっごく聞いちゃいけないことを聞いた気がするぞ! 確かに子供たちの足、特にふともも付近の筋肉の付き方を見ると、遠目でもアスリート顔負けのすっげぇムッキムキな筋肉してるしなぁ」

「ま、あんまりこの世界の事をお気になさると正直キリがありませんので、あまりお気になさらずに……」


 そう言って静音さんはオレが心中で思っていることをさとしてくれたのだ。


 そして噴水を中央にし、直進つまり北側には例の大きなお城がそびえ立っていた。噴水の左手には大きな十字架を屋根に掲げた『教会』があり、そして右手の一際大きな建物(たぶんお城と同じくらいの大きさ)には屋根にコイン(?)らしきオブジェが立っていたのだ。


「し、静音さん。アレってさ。『カジノ施設』に見えるんだけど……気のせい? ここってさ、まだ序盤の街なんだよね? 出番早くない?」

「ああ、アレですか。アレは東京都に先駆け、いち早くカジノの施設を導入したみたいですよ♪」

「早い! 早いよカジノさん! こんなとき誘致・建設は遅いくらいがちょうど良いってね!! や、やっぱりさ……静音さんもカジノの常連だったり……するの?」

「えっ? ワタシが……ですか? いいえ違いますけど……」


 何でそんなこと聞くの? と首を傾げる静音さん。


「あ、あれ? 違ったの? な~んだ。てっきり静音さんは根っからの金好き守銭奴だから、カジノに入り浸りだと思ったのに……。なんだ違ったのか。はっはっはっ」


 っと予想が外れ笑うオレに対して静音さんは、


「な~に言ってるんですかアナタ様は、面白いことを言うのですね(笑) そんないつまでもギャンブルカジノで遊ぶ側ではお金様は出て行くだけですよ、ワタシは元締めとしてカジノを悪徳経営をしているですので♪」


 ってか静音さん(僧侶様)が元締めになって、しかも悪徳経営してんのかよ……。もしかして1コイン4千円の……いやなんでもない。ってか、やっぱり結局は守銭奴なんじゃねぇかよ。それに今更気づいたけどさ、正面の看板には静音さんの顔っぽいモノがえがかれてたわ! もうモロじゃねぇかよ!! オレは色々とツッコミたかったが、今は捨て置くことにした。どうやら静音さんの言うとおり、この世界では『考えたら負け』のようである。


「さて……街の主な建物はこれくらいですね。あとは民家や農家などのちゃっちな・・・・・建物がちらほらあるくらいですので……」

「そ、そうなんだ……。案外少ないんだね。まぁまだ序盤だもんね」


 ってか、そもそもお城の隣に同じくらい大きいカジノがあるのが1番違和感ありすぎなんだよ! あとさ、さりげな~く民家と農家を軽くディスってるよね静音さん?


「あっそういえば聞いてなかったけど、お城の名前は確か『エルドナルド城』だよね? だったらこの城下町の名前はなんてゆうの?」

「……えっ?」


 あ、あれ? 静音さんが固まってる。どうやらただのシカトのようだ。


「も、もしかして、聞いちゃまずかった?」


 とオレは恐る恐る静音さんに尋ねた。


「え、え~っとエルドナルド城の…………城下町?」

「……あ、うん。それは知ってるけどさ、名前だよ。町の名前くらいはあるんだよね?」

「…………」


 静音さん再び完全に沈黙していたが、なんとか知恵を、いや声を絞り出してこう言った。


「お、」

「お?」

「お、大人の事情ってことでご納得くださいませ><」

「…………はい」


 どうやら作者は『大人の事情』の名の元に、街の名前を考えるのを放棄したようだ! その説明はダメだろうが。


「ま、まぁ街の名前はさておき。この世界で唯一『最後の街』ですので、それが名前でいいんじゃないですかね?」

「……はぁっ!?」


 えっ? なになに? それはどうゆこと? 今静音さんが何いってるか、オレには分からなかった。


「えっ? こ、ここが最後の街ってことは……この世界はこの街オンリーってことなの!? そんなことってあるのかよ!?」

「はい。そうです。実は先の戦争で魔王軍の攻撃に遭いまして……言いづらいのですが、他の町や村は軒並みその被害で全滅を……」

「そ、そうだったんだ……。オレはてっきりまた作者が考えるのを放棄手抜きしたのかと……って!? 魔王軍だってぇ~っ!? あっ、いやRPGがモチーフな世界なんだから、そりゃ『魔王』もいるだろうけどさ! それで攻められて他の村や街が全部滅ぼされたの!?」

「え、実はそうなのです。……ですが、この世界は魔王を倒せれば、また昔のような平和な世界になるでしょう……きっと……」


 そう語る静音さんは目を伏目、暗い表情になってしまう……っ!? か、肝心なことを忘れていた!?


「そ、そうだよ静音さん! この世界は何なのさ!? 学校は? 校舎は? 天音や葵ちゃんは?」


 オレは今までの疑問をたぶん知っているであろう静音さんに責めぎ立てた。


「ま、待ってください! ちゃんとイチから説明しますから! ですから、少し離れてくださいませアナタ様(照)」

「あっわ、わりぃ(照)」


 オレはその事実に驚き、勢いのあまり静音さんとキスするくらい顔を近づけてしまっていた。少し間を置いて、互いに気持ちを落ち着かせ本題へと入ることにした。


「こほんっ。それでこの世界についてですが……。まずワタシも詳しいことはよく知らないのです」

「えっ!? それじゃあ!」


 詰め寄ろうとするオレを静音さんは手で静止すると言葉を続けた。


「……詳しいことは分かりませんが、この世界の原因はどうやらアナタ様・・・・にあるようです」

「はぁっ!? オレがぁ~っ!? 何でさ!?」

(なんだろう。オレは寝てる間に学校に忍び込んで、グラウンドに象形文字でも書いてしまい変な力でも得てしまったのだろうか???)


 オレは混乱しながらも静音さんの言葉に耳を傾けることにした。


「この世界を作ったのが誰か・・はわかりません。……ですがアナタ様は天音お嬢様、葵お嬢様、そしてこのワタシの告白を第7話にて断りましたよね? どうやらそれが原因トリガーになり、今のこの『RPGっぽい異世界』が生まれてしまったようなのです!」


 静音さんの詳しい話によれば、どうやらそれが引き金トリガーとなり、学園の門に現実世界と異世界とを繋ぐ亀裂なようなモノができて、2つの世界が繋がってしまったのだと言う。


 あとついでに作者の野郎が「最近のラノベって……異世界モノさ、流行ってねぇべか?」っと言って、急な作品変更したらしいとの事。……ってかさ作者以下略それが1番の理由じゃねぇのかよ? おいこら作者のヤツめ!(怒)


「それと天音お嬢様と葵お嬢様ですが…この世界にしっかりと存在しております」

「この世界に天音と葵ちゃんがいるのか!? オレと静音さんだけじゃなかったのか……」


 肯定するようにコクリッと頷きながら、静音さんは言葉を続けた。


「はい。天音お嬢様は『勇者様』として、葵お嬢様は『武道家』となりまして。そしてこのワタシは『僧侶』とそれぞれ役割を割り当てられました。またそれが誰によってかは知りませんが、いつの間にかそう設定・・されておりました」

「天音が『勇者』、葵ちゃんが『武道家』、そして静音さんが『僧侶』……なのか」

「そっか、そうだったのか。この世界では天音が『勇者様』の役割を担ってるのか。この物語の主人公であるこのオレが『勇者』じゃなかったんだな…………」

 

 告げられた事実に対し、ややショックを隠せないオレに静音さんはまだ言葉を続ける。


「そしてこれはワタシが独自に色々と調べたのですが。どうやら、このRPGの世界以外(つまり現実世界)の事を記憶としてちゃんと覚えているのは、『ワタシ』と『アナタ様』だけのようなのです」

「えっ? それは一体どうゆう??? 要は静音さんとオレだけが現実世界(元の世界)の事を覚えていて、天音や葵ちゃんは覚えていないってことなのか!? そんなことってあるのかよ?」


「ええ、そうゆうことのようですね。アナタ様周りを見てください。どこかで見たことがある人はいませんでしょうかね?」

「えっ? 見たことがある人だって? あっ! あの人達は!? そうだ、ウチの近所に住んでいるおじさんやおばさんがいるぞ!

「はい。現実世界とこのRPG風の世界とが混沌カオス化しようとしているのです。これはあくまでワタシの憶測なのですが、このままですと…………」



 っと話の良いところで第11話へつづく

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