第5話 優しさが1/4のや~つ登場!
前回までのあらすじっ!!
放課後コイツら(主にメイド)が原因のストレスで頭が痛いと言ってしまったら、タラバガニ専門の脳移植の木村医師を紹介されそうになったのだが……なんかもう、真面目にあらすじ説明するのも馬鹿馬鹿しくなってきたわ!
(も、もうコイツらのお遊びには付き合いきれんぞ!)
「オレのことはもう大丈夫だからさ。どうぞおかまいなく……じゃあな! また明日!」
オレは去り際に言葉を残し、そのまま教室のドアを出ると廊下を走って逃げ出してしまったのだ。
『
「「あっ!?」」
何か2人が後ろで叫んでいるが、オレは全力逃走することで華麗にスルースキル発動していた。
たくさんの生徒が行き交う廊下に躍り出ると、そのまま階段までの道のりを縫うように一気に駆け抜ける。ちなみにオレがいる校舎の3階だ。1年は3階、2年は2階、3年は1階っと年を重ねるごとに昇降口までの距離が短くなるという、謎の教育システムが導入されているらしい。そんなありがた迷惑を他所にオレは急いで階段をかけ降ってゆく。
「……っと、ごめんよぉ~。ごめんなさいね~」
下校する生徒を尻目に、ぶつからぬよう急いで1階まで走り降りようとする。そして2階と1階のちょうど中間地点までかけ降りると、後ろで誰かが叫ぶ声がした。
「(きゃー)」
「(大丈夫かー!?)」
そして何故か窓には何かでっけぇ鳥みたいな姿が影として映りこみ、何か後ろで騒がしい声が聞こえてきたが今のオレはそれどころではないのだ! 階段の最後8段目くらいを大ジャ~~ンプ♪ 途端バンッ! っと靴裏に音と衝撃がダイレクトに伝わり、痺れとしてオレの両足に響伝わってくる。もしもこれがマンガやアニメの主人公だったらたとん♪ とか軽く良い音を出すだろうが、とりわけ現実ってヤツはこんなものだ。
「……っとと!」
だが、やはり無理があったのか、はたまたダメージからか着地後にオレはよろめいてしまう。そして運が悪いことに、オレがよろめく先には1人の女子生徒がいたのだ。
「きゃっ!?」
「お~っとと、わ、わりぃな!」
なんとかその女子生徒にぶつからぬよう体を捻ると、肩と肩とが軽く接触するくらいで済む。
「(あれ? この子どこかで見たことがあるような……どこだっけか? ……あっ!? そうか思い出した! 今朝オレが教室に乱入した際にちょうど自己紹介真っ最中のクラスメイトだわ! もしかして……今のとこでアニメやマンガみたく、彼女のことを押し倒してたら
などと不謹慎なことを思い浮かべながら、オレは昇降口までまた走り出した。
「はぁはぁ、はぁはぁ」
息も絶え絶えにやっとの思いで自分の下駄箱まで辿り着いた。まさか日頃の運動不足に対して、入学初日の放課後初っ端から後悔することになるとは夢にも思わなかった。
「(ふふふっ、まぁいいさ。これでオレの自由という名の平和は保たれたのだからな!)」
オレは下駄箱に差し掛かると安心したようにそんなことを思ってしまった。
「……ふむ、そんなにつらいのなら薬だけでも飲んだらどうだ? おい静音」
「はいコレ。
「…………」
(なんかオレの目の前に見たことあるお嬢様とメイドさんがいて、白い鎮痛薬を2錠くれたんだけどさ。どうゆうこと???)
『だがしかし、お嬢様とそのメイドにまわりこまれてしまったのだ! 日常という名の自由を求めた彼にもはや自由などはなかったのだ……』
「あ、あぁ……ありがとう。ちなみにさ……なんで先にいるの?」
(オレさ、全速力で走って来たんだよね? これを読んでた読者ならそこんとこの事情はよく知ってるよね?)
オレは心の中で見えぬ誰か(きっと読者さん)へと語りかけてしまう。
「うん? 今日は入学初日なのだぞ。我々はまだクラブにも所属していないのだから、帰宅するに決まっているだろう?」 可笑(おか)しなことを聞くんだなキミってヤツわ! あっはははーっ♪」
「ねー(笑)」
などと天音に盛大に笑われ、その隣にいるメイドさんにまで(笑)と記載されて笑われてしまう。
「(可笑しいのは、コイツらじゃなくてオレの方なのかよ……そんな理不尽な!)」
オレは疑問を呈するようにソイツらに話しかけ、状況を分析することにした。
「いやいや、なんでオマエら昇降口の玄関に先にいやがるんだよ!? しかもさも『たった今玄関の外から来ましたよ♪』って感じでさ。あのさ……さっきまでは確かに教室の中に居たんだよね???」
コイツらにそれを聞くのが怖いけど、その疑問だけを聞かずにはいられない。何故ならオレはこの物語の主人公でしかもツッコミ役だからな!!(ドヤ)
「ああ……ただ3階の窓から飛び降りただけですよ♪」
「(……さ、さっきの悲鳴その他諸々は、やっぱりコイツらの仕業だったのか! うん。実は薄々は感づいてはいたけど、敢えて無視してたんだわ。正直……関わりたくねぇからさ)」
何事もなかったように、そうケロリっとそんなことを言い放ったメイドの静音さん。そうしてオレは「その飛び降りただけ……」とやらについて聞いてみることにした。
「あのさ……ここって結構な高さあったと思うけど……」
(
「私たちに不可能などはないのだぞ! なんせ
そんな心情を察するように天音が偉ぶりながらこう答えた。3階の教室からとはいえ、軽く15mはあんぞ。コイツら人間じゃないよな!
「あっうん。そ、そうなんだ……」
(グループ制度はただいま、まったくもって関係ないんだぞ天音さんや!)
オレが顔を引き攣らせながらそんな受け答えをすると補足するように静音さんが言葉を口にした。
「まぁネタバレするとしたら、地面に救助用のマットを引いててもらっただけの話ですけどね」
速攻で雇い主を裏切るメイド。
「こら静音! ネタばらしするのが早いぞ!」
「いや、そんな救助用のマットなんか持って登校してくんなよな……」
そう吐き捨てるようボソリっとツッコミを入れてしまう。
「まぁ正確には『高所降下用救助器具送風式救助マット「セーフティーエア・クッション・ネコックマ」(680万円+消費税)』なのだがな!」
「いや、そこまで興味ないからそんな正確な情報はいらねぇよ、あと名前長すぎんだろうがっ!」
(ってか『ネコックマ』って、もうネコだかクマだか正直どっちでもいいわ!! ってか、税抜き価格なのかよ……)
「しかもだぞ、マットの真ん中にはネコ型のクマさんが描かれていて……」
「あぁ今日も空が青いなぁ~」
いらないとアピールしたつもりなのだが、今も延々いらない情報を喋ってる天音を尻目に太陽が輝き眩しい空を見上げ遠い目でやり過ごすことにした。
こんな時は、さっきメイドからもらった
「(ガリッガリッ)あ~この苦味がたまんねぇなぁ~♪」
本来なら水で流し込むタイプの薬なのだが今のオレにとっては悲しいかな、この苦味さえも最高の癒やし系になってしまっている。まぁこれから起きるであろう面倒事を考えれば、ここが最後の休憩場かもしれないしな。ちなみにイヴリンの優しさ1/4とは、
「おおっ! なんだかもう薬が効いてきた感じがするぞ♪ こりゃ~何錠でも食いたくなるわ!」
普通ならこんなに早く効くわけはないので、たぶん
「うん♪ 何か気分良くなってきたわ、天音さんきゅな!」
「う、うむ。だが、褒めるなら静音を褒めろ。私は何もしていないし……」
褒められるのが苦手なのか、天音は言葉を詰まらせそっぽを向いてしまう。
「いやお前のおかげでもあるだろ? 静音さんに薬を出すように言ってくれたんだからさ」
「き、キミに褒められると、なんだか、わ、わ、私も嬉しい気がするぞ(照)」
オレがそんな礼を言うと、そっぽを向いたまま天音は少し頬を赤らめ照れを隠すように指で頬を掻いている。
「(やっぱこいつ見た目だけでなく、中身もカワイイ奴だよな! 照れた表情とかたまんねぇよ♪)」
一見初対面の印象でただのワガママお嬢様だとばかり思っていた天音だったが、こうして面と向かい合って話をすれば『ツンデレラ』のように感じてしまうのだった。
「まぁ
「あっ何。このイヴリンB錠剤の製薬会社って
そんなやり取りを台無しにするように隣にいる全身黒づくめの悪魔がそう
「あっ! ああ~それですが……もしかすると
「(ガリッ)……はいぃっ!?」
(なんかなんか、またこのメイドが不吉なこと言い始めたんですけどさ! しかもその言葉に驚いて思わず錠剤噛み砕いて飲んじまったよ!?)
オレはさっきよりも顔を引き攣らせながら、メイドにその真意を問う。
「ちなみに一応聞いとくけどさ…………一体何の薬?」
「『ラピッドDPDタブレット型ESPA錠』みたいですね」
「…………な、何それ???」
静音さんは長ったらしいカタカナ&英文字を言い並べ立てると、偽イヴリンらしき箱をオレへと手渡してきた。
「ら、ラピッドほにゃらら……何これ? ウサギさんの新たな親戚か何かだよな?」
オレは
「(だってよパッケージ表面にちょっとお茶目に左目をウインクしているドクロマークが描かれてるんだぜ! そりゃ敬語の1つも使いたくなるわな)」
そう白を貴重としたその薬の箱の裏側には、注意書きとして赤く縁とられ、これまた赤色のドクロ絵が描かれていたのだ。
「あっ! ああ~……実はそうなのかもしれませんねぇ~」
その諸悪の権化はオレの問いには正確には答えず、顔を、そして目線を明後日の方に背け適当に相槌を打ち、誤魔化そうとしていたのだ。オレはそんなメイドの態度に極度の不安に駆られ、サイドにある説明書きを見ることにしたのだが、なんとそこには書かれていたのは……
『本製品は
「(ど、
オレはその文字を見てしまい、極度の混乱に陥ってしまっていた。
「で、静音。結局は何の薬なんだ?」
混乱しているオレに代わり天音がそう聞いてくれる。
「え~っと、非常に申し上げづらいのですが……け、『検査薬』のようですね~」
「一体何の検査薬なんだ?」
うんうん。それはオレや読者も絶賛気になる木状態だわ。いくら疎いオレでも、妊娠検査薬ではないことだけは判るぞー! ……いや、たぶんなんだけど(自信なさげ)
「え~っと…ぷ、プールなどで残留塩素を測るやつじゃないかと思われますね……」
「あのそれってさ、塩素が入ってる水に錠剤入れると赤とか紫に色が変わるやつだよな?」
「あっ! そうですそうです♪ よく知ってましたねぇ~♪」
確か小学校の頃だか、理科の実験でしたことがあったのを思い出した。オレが理解を示すと何故だか嬉しそうにするクソメイド。
「(お前との間に、同じ共通感があるかと思うとほんっと嫌になるわ!)」
だが、そう口にしたくても口の中の錠剤がまるで邪魔をするようにしゅわしゅわ♪ っと不気味な音を奏でていた。
「もうさ、コレは吐いていいよな? さっきから口の中でしゅわしゅわって、変な感じがハンパないんだけど……」
たぶん口の中で化学反応してんだろうな。しゅわしゅわ♪ しゅわしゅわ♪ っとリズミカルに音を立て、錠剤さん達がオレの口の中を溶かそうと懸命に頑張ってらっしゃる。だが、オレも口の中を溶かされるわけにもいかないので、行儀悪くもそこらに吐こうとする。
「えっ!? お口の中がしゅわしゅわ♪ なのですか? なんかエロいですねぇ~♪ アナタ様のお口に指突っ込んじゃってもいいですかね? じゃ失礼しま~す♪」
「(いいわけねぇだろうが!!)」
その日1番大きく叫びたかったのだが、クソメイドは自分勝手に自問自答をすると、これまたオレの回答を待たず、さらに勝手にしゅわしゅわ♪ しゅわしゅわ♪ 真っ最中のオレの口に無断で右人差し指を突っ込んできた。
「あっ! 1人だけズルイぞ静音っ! 私も私も!!」
また隣にいる天音までそれに乗っかり、オレの口に左人差し指を突っ込んできた。
「(もうヤダ、こんな入学初日を迎えるなんて!!)」
そうまだ5話目。既にもう21648文字も書いてるのにまだ入学初日の放課後が始まったばかりだったのだ!
野生のお嫁さん候補(お嬢様)の野生っぷりまで…………残り78352文字
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