あな嫁~あなたの目の前に野生のお嫁さん候補(お嬢様)が現れた!!入力コマンドは!?……だがしかし、コントローラーにシカトされてしまったようだ。~

月乃兎姫

第1章プロローグ『日常(ふつう)ってヤツはこんなもんで終わり』

第1話 オレの日常(ふつう)はこうして訪れた。

【前書き】

この物語は、ラノベ業界に(痛風という名の)新風を巻き起こす(予定)であろう出来事を、ただ淡々と語る物語である。だから過度な期待はしないでね。

これは説明役ナレーションのお姉さんとの約束だよ♪



 いきなりの質問ですが、こんなときあなたならどう答えますか?


「キミの子供が欲しい」

「……へっ?」


 自分の学力では考えられないくらい奇跡的に受かった国立の進学校、桜の花びらが舞う校門の前、しかも入学初日の朝。


 さぁ! これからオレの何の変哲もない日常ふつうの高校3年間の生活が始まる! っと思い校門をくぐり、新しい人生を一歩踏み出した矢先の出来事だった。いきなりの展開で状況をよく飲み込めない読者さんのためにも、ここいらでもう一度だけ状況を整理してみようぜ♪


『ただいま声を出すのも許されないくらい、長く美しい赤い髪をなびかせている可愛い女の子、いや美少女からオレの子供を求められている! あなたなら、たった今出逢ったばかりの彼女と子供を作りますか?  速やかに『はい』か『イエス』でお答えください。さあ早く!』

※この物語では説明役ナレーションのお姉さんも、主人公と読者さんあなたを容赦なく煽らさせていただきます(笑)


「あ、あの、失礼なんですけど……も、もう一度だけ言ってくれますか?」


 いきなりの出来事に対しイマイチ状況が飲み込めず、オレは目の前の名前も知らぬ赤い髪の美少女にそう尋ねてしまった。


「うん? おや、聞こえなかったのか?」

 では、こほん。と目の前の美少女は可愛らしく小さな咳きをすると胸を張り大声でこう叫んだ。


「キミの子供が欲しいんだっ!!」


 今度は情熱的に力強くオレの子供を求められてしまった。出逢ってほんの一、二分もせずに二度も自分の子供を求められてしまった。しかも……(オレはチラっと彼女を盗み見ながら)こんな美少女に、だ。

 右手にプロポーズ用のバラの花束を持ち、左手には何故か赤色のシャンパンを持っていた。その容姿はいかにも『私がお嬢様セレブです!!』といった感じである。


 正直オレなんかが声をかけるのも罪、いや速攻で『死刑確定判決準備中』のふだをあげられるくらい、『ちょいこれって新手の詐欺? 宗教勧誘? いじめ?』などと疑わずにはいられないほどだ。


「え~っと……???」

(二回言ってもらえたんだけど……結局意味および状況がさっぱりわからんぞ!)


 もしこれを読んでいて『私わかりました!』って言う人がいたら遠慮せず言ってくれよな。その人に良い病院の紹介と、今のオレの役割ポジション小説ノーベル平和賞を贈りたいと思うからさ。


「で、さっそくで悪いんだが、キミの答えを聞かせて欲しい。もちろんこの私が望んでいるのだから、答えは『はい』か『イエス』だろうけどな!」

「(こ、この娘……一見お淑やかなお嬢様っぽい感じの見かけとは裏腹にグイグイ攻め込んでくるタイプなんだな!)」

「あの……私もあまり暇ではないので早くして欲しいんだが……」

「いや、その、あの……」

(そんないきなり言われてもなぁ~。よく知らない相手……いや、そもそも名前すら知らないこんな美少女なのにさ。本当にそんなことをしても良いのかよ? これを読んでる読者さんとか怒らない?)


 オレが状況をよく飲み込めず、美少女からに対して返答の言葉を詰まらせてしまう。


「おい静音しずね! これでは話が全然違うじゃないか!!」


 そしていつまでも返答できないオレに業を煮やしたのか、目の前のお嬢様美少女はオレの背後にいつの間にか止まっていた、ガラスまで黒塗りのいかにも高級そうな『セレブ乗せてますけんワシ♪』状態のリムジンに向かってそう叫んだ。


 だがしかし、である。

「…………」


 リムジンさんのターン、だが何ら一切の反応がない。どうやらただのシカトようだ。普通ここは誰か降りてくるパティーン(パターンのちょい上級系略語)じゃないのかな? 違うのか???


「おい静音! 聞こえているのだろう!!」


 だが、やはり反応がなかったのだ。…………っとそのとき、


「ワタクシに何か御用でございますでしょうか? 天音あまねお嬢様」

 その声はオレの下の方から聞こ……。


「って、アンタそこで何やってんだよ!!」


 オレのズボン、もといファスナーに今まさに手をかけようとする、メイド服に身を包んだ女の子がそこにはいた。


「……えっ?」

 

 何のこと? と言いたげに可愛く首を傾げるメイドさん。

 

「いやいや、こっちが『えっ?』(被害者)の立場だからねっ!! なんで自然ナチュラルにセクハラしてんのに、『この人は何を言ってるの?』って可愛気かわいげにとぼけてんだよ!? でもそんなメイドさんも嫌いじゃないぞ!!」

「ち、ちょっと待って下さい!! 貴方様は今大きな勘違いをしております!」

「勘違いぃ~っ?」


『この状況で一体何を?』そう訝しげにオレは思いながらも、メイドさんの次の言葉を待つことにした。


「いえワタクシはただ、貴方の息子さんに・・・・・ご挨拶をしようかと……」

「いや、それはどこをどうとっても勘違いじゃないよね!?」

「…………」

「…………」


 世界中の時が静止してしまったように、上と下の立ち位置でじっと見つめあう二人。それはまるでラブコメ漫画のようなシチュエーションではあったが、如何せん最初の登場シーン出逢いですべてが打ち壊しになっていた。


「……てへりっ☆」


 メイドさんはしゃがんだまま、右手で『ぽんっ♪』と自分の頭を軽く叩き誤魔化そうとしていた。


『このメイドさんを許してあげますか?』

『はい』か『イエス』で答えま……


「一体いつまで二人っきりでイイ雰囲気で『きゃきゃうふふ世界ワールド』を展開しているんだあっ!!(怒)」


 説明役ナレーションのお姉さんの言葉を遮るように、アニメならごんっ! と鈍い効果音SEとともに星が出るくらい、それと同等の勢いで天音と呼ばれるお嬢様はメイドの頭に拳骨げんこつをした。おいおいアニメなら顔から地面にめり込んでんぞアレは!? これが小説で良かったなぁ~、メイドさんよ!

 

「いったぁ~い! あ、天音お嬢様ぁ~っ、一体何のつもりですか!?」

「(しかもメイドの復活早いはえぇしさ……)」


 静音と呼ばれているメイドさんは、少しでも痛みが和らぐよう頭を擦りながらも天音と呼んでいるお嬢様にそんな抗議をしていた。周りの人から絶対にコイツらと関係者だと認識されたくないオレとしては、二人の会話に割り込もうとせず、ただ呆然とやり取りを眺めることで他人のフリに徹することにした。


「この私が呼んだのに返事をしなかっただろう! それだけでも万死に値するのに、お前の指示通りやったのに何の成果も得られなかったじゃないか!」

「あぁ~~っ……もしかしてあの『キミの子供が欲しいんだ?』的なのですか? あんなの本気にしますか普通?w やべーやべーっ……天音お嬢様、頭大丈夫なんですか? ぷっぷくぷーーっ。これからお嬢様をお呼びする度に『天音お嬢様(笑)』とでもお呼びいたしましょうかね? 天音お嬢様(笑笑)」


 天音と呼ばれたお嬢様の背後でこれまたゴゴゴゴッッ!! っと恐怖を示す、これまた強化演出効果音SEでも入りそうなプレッシャーが、少し離れているオレの元まで伝わってくる。


「(こ、コイツできるぞっ!?)」

「静音よ。オマエ……(笑笑)とうるさい、ぞっ!」

 ぞっ! に合わせ再びメイドさんの頭目掛けて、天音の全体重を乗せた右の振り下ろしパンチチョッピングライトがビュン! という風切り音と共に華麗に叩き込まれた。


「ぐ、ご、がっ!?」


 それは女の子ヒロインが決して発してはいけない魔法の言葉・・・・・だったのかもしれない。今度はちゃんとメイドさんの顔が地面にめり込みましたとさ。そして今度こそ、メイドさんは完全に動かなくなってしまっていた。


「おいおい、大丈夫なのかこのメイドさんは? もしかして死んでないよな? オレこんなやっかい事に巻き込まれる嫌だよ……」

(いやまぁね、既に完全に巻き込まれてるけどね)

「…………」


 だが、生憎とメイドさんは地面に顔を埋めたまま沈黙を貫いている。こうしてようやくあまりにも騒がしい状況確認が終わると、オレの世界に静寂は訪れたのだった。


(うん……確かにね、一応じゃ静かにはなったけどさ……)

「い、一向に状況が何にも解決されてねぇっ~~っ!!」

 

 オレがそう叫ぶと同時に、まさにシナリオどおりと言った感じで無常にもキンコンカンコン♪ と入学初日からオレの遅刻を告げる鐘の音が鳴ってしまう。


 こうしてオレの高校生活は、オレの望まぬ日常ふつうから始まるのだった。



 野生のお嫁さん候補(お嬢様)の野生っぷりまで……残り96265文字

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