第37話 実々:実々とおだんご


11月26日(月) 朝


 「みーちゃんっ!ちゃんみーちゃんみーちゃんみーちゃんみーちゃんみーちゃんみーちゃんみーちゃんみーちゃ…」

 「魘されるわっ!」

 

 う、うるせぇぇぇぇ!!


 えっ!?私のことノイローゼにする気なの!?

 しかも何故か『ちゃん』の部分を1度2回繰り返してきた!

 私は思わず手に朝食のピザトーストを持ったまま、あーちのことを眉間に皺を寄せて睨み付けた。

 しかし、相手は全く怯むことなく目が開いているのかも分からないくらいに細めた目で全力の笑顔を返してきた。

 …無言でもうるせぇ!

 そして笑顔のまま口を開いてきた。


 「弥生時代の本があと少し欲しいから、今日は図書館に行かない?あとお夕飯は白菜のミルフィーユ鍋にしない?キャベツでも良いけど」


 図書館か…そして夕飯はミルフィーユ鍋か…誰がミルフィーユ鍋を仕込むんだ?

 取り敢えずパンを一口食べてから返事をしよう。もぐもぐもぐ、ごっくん。


 「まず、図書館は良いよ。で、ミルフィーユにはいったい誰がするの?」

 

 図書館は別に必要だし行っても良い。

 鍋にするってことは肉を買わないとだから買い物もするんだろう。買い物も好きだから行っても良い。

 ただ、ミルフィーユ鍋は肉と白菜を交互に重ねていくのがめんどっちぃ。

 それに何よりも、ミルフィーユ鍋より鶏ガラスープで作る鶏塩鍋の方が私は好き。

 『くたくたになった味の染みた野菜最高!』と頭の中で鶏塩鍋の美味しさを思い出していたら、あーちが返事を返してきた。


 「ミルフィーユは言い出しっぺのうちがするに決まってるじゃーん。みーちはめんどっちいから嫌いって知ってるし。豚肉買いに行かねばだねー」


 あーちが作るのか。…それなら良いでしょう。今度鶏塩鍋作ろう♡

 あ、……白菜。

 多神さんからまな板の豚ちゃんは一年後に甦るって聞いているけど、あーちは私に『なんでもないよ!』って嘘を付いたままなんだよね〜。

 私があの豚ちゃんまな板を使わないからってこのまましらばっくれる気だろうし…。

 それって良くないよね?…うん、良くない!

 ほら、リトル実々も『ちゃんと反省させなきゃダメだよ。一度反省しないとまたアイツは殺豚を繰り返すぞ』的なこと言ってるし…。


 よし、ここは一つ揺さぶってみるか。


 私はついつい笑いそうになるのを堪えながら、あーちがコップに口付ける瞬間を待った。(お茶を飲む時って気が抜けてるからチャンスなんだよね〜)

 よし、ホシがコップに口を付けたぞ!…今だっ!!


 「……白菜……まな板……傷……」


 ついつい、笑いが漏れないように意識し過ぎたせいで、ワードを並べるだけの物言いになってしまった。


「………ん?」


 あーちは一瞬目を丸くしたが、何事も無かったように視線を私に向けてきた。

 …とぼけようったって無駄だぞ!証拠は上がっているんだ。

 よし、耳の穴かっぽじって聞くがいい!


 「あーち、この前白菜切った時にまな板をヤったろ。分かってるんだからね!」

 「げっ!」

 

 …ホシちょろ過ぎだろ。

 『げっ!』って言っちゃってるし…。

 『素直に自分のした事を認めるんだな』という顔をしてあーちを改めて見ると…目の前にヒステリックな女が登場していた。


 「ど、どうしてアタシが殺ったって分かるの!?証拠は?……そうよ、証拠よ!証拠なんて何処にも無いじゃない!言い掛かりは止してちょうだいっ!」


 ……な、なんか始まった〜。

 身体の体勢まで変えてきてちょっとお高い女を演じている…。思わず (うわぁー)…って苦い顔しちゃった。

 でも、ホシをここで逃すわけにはいかない。

 …ここはノってやるか。

 もうホシは半落ちしてるも同然なんだから。私は名探偵よろしくな雰囲気を出してヒステリックな女に向き合った。


 「ふっ……貴女も困った人だ。私はあの夜現場に居たんですよ。そして貴女が去った後にバッチリ確認してるんですよ。あぁ……証拠でしたね。件の傷は豚の後ろ足の付け根、ですよね?」

 「ぐっ……!」

 「ふっ…」


 しっかりとニヒルな笑顔を付けるのも忘れない。

 ヒステリックな女は悔しそうな顔を浮かべた後、当時を思い出したのか、様子が変わり出した。


 「そうよ!殺ったのはアタシよ!でも殺るつもりなんてこれっぽっちも無かった!包丁が突然モノが変わったように切れ味が良くなって、まな板をっ……うっ…うっ……うぁぁぁぁぁぁっ!」


 …あーち、やり過ぎだろ。

 顔から頭に両手を滑らせて絶叫とか普通に怖いから。

 うん、まぁでも自供したな。


 よし、逮捕だ。


 私は静かに席を立ち、あーちの後ろへ周った。

 そして優しくポンッ!と、あーちの肩を叩きつつ、


 「行こうか……」


と、一言。うん、大円団ですな。

 その流れでどちらともなく指先だけを相手に近付けて、


 「「いぇーい」」


 ぺちっと、ユルくハイタッチをした。


 「じゃ、お昼食べたら出掛けようか」

 「ん」


 こうして事件は解決し、各々朝の仕事に取り掛かりましたとさ。



*****


同日、お昼過ぎ


 「居るかなーっ?居るかなーっ?」

 

 あーちもそうだが、私もついつい楽しみからかワクワクが溢れてしまう。

 だって図書館はあの二人が居るかもしれないから!

 ワクワクした気持ちのまま図書館の入り口を潜る。そしてあーちはいつも通り、


 「ま、最初は決まっているんだけどねー。みーちはそこら辺に居てー」


と、検索機の方を軽く指差しながら、流れるように本を返却して、あーちはトイレに消えた。

 あーちを待っている間暇だからあの二人を探そう。

 一目見られればそれで良いし、と思い検索機周辺のフロアをキョロキョロしながら廻る。…居ない。

 もう少し奥に居るのかな?と考えてあーちが帰ってくる前に見つけようと少し早歩きで一階のフロアの端まで見に行ったが…居ない。

 トイレの方を見るとあーちが丁度出てくるところだった。

 私はとぼとぼと検索機に向かいあーちが来るのを待った。

 何も知らないあーちはスッキリした顔で私と検索機のとこへ到着し、口を開いた。


 「はぁー…お待たせー。ではでは弥生時代を検索します」


 キーボードで文字を打とうとするあーちの手を見ながら思わず愚痴のような寂しさのようなどちらもとつかない言葉が零れた。


 「おじ様も天ちゃんも居なーい…」

 「あ……そうなの?」


 あ、口に出したらまた寂しさが押し寄せてきた。

 あーちも一緒に残念がってくれるかと思ったらそうでもないし…薄情者め!


 「まぁ約束もしてないし、司書さんなんて裏や書庫で仕事もあるだろうしねー。それにまた4日後あたりも来るし、もしかしたら今も下の階に居るかもしれないし」

 「むーん……」


 むーーっ。思わず口を尖らせてあーちを険しい顔で睨みつけてしまった。

 あーちはそんな私を少し見つめた後、気を取り直すように検索を始め出した。


 「兎に角、今は検索ーっ。ポチっとな」


 ズララララー…


 「最早慣れたもんですな」

 「………」


 むむーーっ。

 あーちはむくれる私を連れてお目当ての本の所へ行った。


 結局、本の貸出し手続きを終えて退館する時も二人の姿を見ることは出来なかった。

 むむむむーーーっ。


 はぁ、残念だった。

 癒しに会えなかったよー、と心の落ち込みが足取りにも出ていたようで、いつもは『スタスタ』なのに今日は『とぼとぼ』になってしまった。

 まぁそんな歩みでもあっという間にスーパーに到着した。

 あーちがカートにカゴをセットしているのを見つめていたら、あーちが話しかけてきた。


 「ほら、みーちの食べたいおやつ買って帰ろー」

 「実々、団子、食う」

 

 ここは餡子を摂取して気分を上げよう。

 テンションがたとえ下がっていようとユーモアは忘れちゃダメよね。だから某アニメ映画に出てくるもののけの口調でおやつをリクエストした。

 あーちは私の返答に薄くニヤついていたのでちゃんとユーモアが伝わったようだ。

 まず、先におやつの3本入りあん団子をハントし、パンと牛乳もカゴに入れていく、そして今日のメインの豚肉コーナーへ。


 「豚バラよりもロース派だよねー」


 あーちは迷わずしゃぶしゃぶ用の薄切りロースをカゴに入れる。

 私はそれを確認した後、鍋用のゴマだれを取りに行った。ポン酢よりゴマだれ派です♡

 そしてお肉コーナーにまだ居たあーちの方に合流し、野菜コーナーへ。カットサラダをピックアップし、冷凍コーナーへと移動する。

 それからあーちにしては珍しくカゴに枝豆を入れてきた。

 急に食べたくなったんだろうか?…まぁ好きだからOK!

 その後は細々としたものをハントしていき、レジへ向かう。

 まだお昼過ぎなのにどのレジも3、4人並んでいた。

 どこか比較的空いてるところないかなぁ〜と探していたら誰も並んでいないレジを発見した。

 あーちとアイコンタクトで合図を送り合い、その無人のレジへ特攻を決めた。

 そのレジを担当するお姉さんは、まだこちらに気付いていないようだった。

 あーちが、「お願いしまーす」と言いながらカゴをレジ台へ置いた。

 すると、店員さんは声で人が来たのに気付いたのか、レジのパネルから視線を離してこちらを振り向き、


 「いらっしゃいませ」


と、お馴染みの言葉を口にしながらこちらに視線を向けてくれた。


 …………。


 ……はわわわわ。

 び、美人過ぎるぅぅぅぅぅ!!


 普通のスーパーの臙脂色のエプロンと三角巾なのに、このお姉様が身に付けているとあら不思議、何だか高貴な装いに。

 高身長で抜群のスタイル、そしてシャンプーのCMで『シャララーン』ってするモデルの人ばりのツヤッツヤでサラッサラの黒髪を緩く一つに纏めている。

 顔の配置も美しく、美人は3日で飽きるっていうけど、絶対このお姉様に限っては一生飽きない自信がある!!そして何より左の口元にあるホクロがとってもセクシー!

 なんで神様は私たちみたいなちんちくりんと、この女神のようなお姉様を同じ空間に閉じ込めたんだ?

 私たちがブラウン管テレビなら、お姉様は8Kの最新型の超高画質の液晶テレビだわ。ビット数の暴力半端ないって!!

 神様えげつないです。

 しかも見た目30代前半…まさかの同い年だったり!?

 思わず無言でお姉様をガン見していたらお姉様の方からおっとりとした声で話しかけてくれた。(声も艶やかで好きです♡)


 「このお団子、おやつに食べるん?」


 お姉様が3本入りのあん団子を手に持って聞いてきた。

 さっきあーちに、もののけのマネで『実々、団子、食う』って言ってたのが恥ずかしいっ!

 もし、はんなりしたこのお姉様にあれを聞かれていたら恥ずか死ねるッ!!

 ……はっ!今は返事しないと!


 「は、はいっ…そうです」

 「………」こくこく。


 きゃー、また声が出ない!

 あーちはあーちで見惚れていたのか声が硬かった。

 しかし、お姉様は私たちの反応に気を悪くするでもなく、


 「そら、ええなー」


と、はんなり微笑みながら返してくれた。

 はわわわわ…あん団子のポテンシャル半端ないって!!

 お姉様の一挙一動を逃さないように瞬きも極力抑えてガン見していたら、またはんなり話しかけてくれた。


 「夕飯は何にするん?」


 ゆ、夕飯決めておいてよかったぁぁぁぁ!!


 「「白菜のミルフィーユ鍋です」」


 あ、ハモった。

 そしてやっと声が出た。

 私、お姉様とお喋りできちゃったよ〜と心の中で拍手喝采をしていた。リトル実々も紙吹雪を撒いてお祝いしてくれた。…いつもありがとう。

 そして『人は自分を映す鏡』という名言どおりに、優しく微笑みかけてくれるお姉様に私も無意識に優しい微笑みを返すことが出来ていた。

 しかし、その微笑みタイムも長くは続かなかった。


 「ミルフィーユ鍋?この手羽元も入れるん?」


 お姉様が丁度バーコードを読み取った手羽元を持ちながら、小首を傾げて聞いてきたのだ。

 …えっ!?手羽先????

 い、いつの間に!?全然気付かなかった!

 そして間違いなく犯人であろう私の隣に居る人間がしれっと口を開いた。


 「それは明日の夕飯でさっぱり煮にするやつです」


 思わずあーちの方を目をかっ開いてガン見する。……無視かよ。

 しかしお姉様の手前、キャンセルしますとは口が裂けても言えない。

 それに、


 「それもええな。わたしのとこも今晩は同じミルフィーユ鍋にしようかな」

 「わー!一緒ですねっ!」

 「一緒!」

 

…くっ!!

 お姉様が『ええな』って言ったから今回は許してあげよう。

 ただし、次からこっそりカゴに忍ばせるのは無しだ!と、あとであーちに伝えねば。

 でも今晩のおかずがミルフィーユ鍋で一緒というのがひたすらに嬉しい!

 思わず両手を鎖骨の手前でギュっと握って喜びを噛み締めてしまった。ちらりとあーちの方を見ると同じように胸の前で握っている両手が震えていたので嬉しいのだろう。

 そんな中、遂に買い物カゴの読み取るものが無くなった。

 …はぁ、もう少しお姉様を見ていたかったのに。良い時間ほど過ぎるのが速い…。


 「合計3121円ですー。あぁ!そや、ポイントカード持ってはる?」


 ……ポ、ポイントカードですと!?


 思わずがま口様からお金を出すモーションの途中であーちを風を切る速さで見てしまった。

 『ど、どーするよ!?』と、あーちに目力でコンタクトを送る。

 もちろん、普段から行きつけのスーパーだからポイントカードはある。

 しかし、私たちは養われている身であり、多神さんから頂いたお金からポイントも貰っちゃうと詐欺とか着服になるのでは?と考え毎回ポイントを諦めていた。

 しかし、今あーちがビクっと反応してしまったばかりに、カードを所持しているのがバレた。

 お姉様はそれを見逃さず、


 「持ってはるんなら、ちゃんと出した方がええよー。ポイントもお金やからねー」


と、最もな事を言った。

 おっしゃる通りです。

 ポイントもお金だから受け取りにくいとは言えない…。

 よって、もう逃げられないことを悟ってか、あーちはお財布からそろそろとカードを出し、お姉様に渡した。…この時、言い訳を付けるのも忘れずに。


 「じ…磁気の調子が悪いみたいなんで、もしかしたらもう使えないかもなんです」


 よし、逃げる口実が出来たな。

 あーちを心の中でほんのり褒めつつお姉様の反応を伺う。


 「あ、そうなん?ちょっとやってみるわー」


 お姉様は私達の不安とは裏腹に、あっさりとカードを読み取り部分に持っていた。

 思わず息をするのも忘れてお姉様の手の中のカードを凝視する。


 いざ、判定の時ッ!


 読み取り部分をカードが滑っていった。そして間髪入れずに響いたのは……「ピピッ!」と言う軽快な機械音だった。


 「大丈夫やったで。はい、カードとお釣りの4円とレシートな」

 「あ、はい……」


 よ、良かったぁぁぁぁ。

 レジを離れる前に最後に一目お姉様のことを瞳に焼き付けるべく視線を向けると、


 「おおきにー」


と、軽く右手を挙げてヒラリと手を振りながら見送ってくれた。


 「「ありがとうございます」」


 またハモり、尚且つお辞儀するタイミングも同じだった。

 でも今はそんなのことは些末な問題である。今は素敵なお姉様の出逢えた幸運にひたすら感謝するのみ!!


 ふわふわと夢心地なまま帰路に着き、冷蔵庫に買った物をしまい、いよいよお姉様に『ええな〜』と言われたお団子タイム!お団子の相棒は緑茶よね〜。

 では、いざ実食!!


 「はむっ」


 いつもの食べ慣れたお団子でも今日はお姉様と出逢えた魔法のせいか、ずっと美味しく感じられた。…1パック98円のお団子なのに。

幸せとお団子の両方を噛み締めていたらあーちがぽんやりとした声で話しかけてきた。


 「レジのお姉さん、美人過ぎだったよねー」


 あーちもお姉様のことを思い出してか、「ほうっ」と溜め息を零していた。

 私もあーちの意見に賛同すべくお団子片手に口を開く。


 「うんうん。この郊外にあんな綺麗な人が居るなんてって思ったよねー」


 ついつい美しいお姉様のことを思う余り、何度も力強く頷いてしまったがそれも仕方ないだろう。

 あーちもまた私の返事に相槌を返しながら、


 「思わず往年のCMのキャッチコピーが頭を過ったよー」


と、回想するかのように視線を遠くに持っていきながら微笑んでいた。


 「あれか…」


 あれか…。

 うん、あれね!


 「「綺麗なお姉さんは好きですか?」」


 答えはもちろん〜?(せーのっ!)


 「「好きーーーっ!」」


 はたから見たらお団子片手に同じ顔した人間二人が何をやっているんだと思うだろう。

 もしこの場に母か亮のどちらかが居たら間違いなく冷ややかな視線を送ってきたに違いない。

 そんなこんなで暫くきゃいのきゃいのしていたが、リトル実々が私を現世に呼び戻してきた。『ちゃんと忘れないうちに確認することあるでしょ?』と。

 

 あ、そういえば!そうだった!!


 私は、がま口様から今日のレシートを取り出してあーちに一番下のポイント欄を人差し指で指し示しながら見せた。(これこれ!これを言い忘れたら大変だったわ!リトル実々ありがと〜♡)

 あーちが私が指したところを前のめりになって確認したので、伝えなきゃいけない事を話しだす。


 「見てー。ポイントが今日付与された分しか無いの」


 これこれ!チェケラッ!!


 「えっ!本当は結構貯まってるのに!過去だから0ポイントになってるって事か!」


 そう、それだよ!未来のポイントだから過去には連れていけなかったってことだよ!あぁ〜…2回分のポイント損した〜…。

 多神さん最初に行ってくれたら良かったのに…ポイントもお金なんですよ?

 ひとしきり2人で二回分のポイント分を損したことに落ち込んでいたら、あーちがまた気分を上げるためにあのお姉様の話題に話を戻し出した。


 「女子校で、あのレジの大豊さんが先輩だったら皆ドリンクとかタオルとか渡したーいってなったんかねー?」


 …っつーか名前チェックしてたんかい!!

 あーち目敏いな…。しかし、女子校にあのお姉様か…そうなるとやっぱり、


 「ファンクラブは確実に出来てたんじゃない?」


 女子校の王子様?いや女王様になってたこと間違い無し。

 前にテレビで『美人は不美人の人よりも一生で100万円以上得をする』とかやってたけど、あのお姉様の得した額はきっと100万円じゃきかないだろう。

 女子校のイメージを勝手に膨らませていき至福のおやつタイムは過ぎていった。


 そして夕飯のあーち作のミルフィーユ鍋は、ミルフィーユって言っていたのに豚肉と白菜の上に大根と人参のスライスが乗っかり、トドメとばかりに、ど真ん中に豆腐が鎮座され、大目に見てもとてもじゃないが綺麗と呼べるものではなかった。…腹に入ればどうせ皆同じとか思ってるタイプか?

 味は悪くはなかった。ただ、ミルフィーユ鍋と名乗ることは許せないな、と思った。



11月26日(月)


 今日は図書館に行ったけど、おじ様と天ちゃんには残念ながら会うことは出来なかった。でもスーパーで美しいレジのお姉様と出逢えたのは凄く嬉しかった。

 きっと一日で三人もの癒しに会ってしまったら、幸せの供給過多になると何処ぞの神様が考えて『神の見えざる手』を発揮してくれたんだろう。感謝です。


 夕飯のミルフィーユ鍋はせっかくお姉様とお揃いなのに、あーちは流石と言うべきか雑に作ってくれた。

 明日の夕飯は鶏手羽のさっぱり煮らしい…。


                end.

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