村を探せ探せ!
わたし、ゲームにログイン!
「今日は散策にでも行くか」
「うん!」
正確には今日『も』だけどね!
ダンジョンに行かなくなってからわたしは、ログインする毎に散策をしている。もう同じ光景を見るのも疲れたから違う街や村を探して散策をする。
一度訪れた村には『転移』という魔法で瞬間移動することができる。それ目的を含めての散策だ。
身体が弱くてあまり外に出られないわたしにとって、散策はとても楽しい。
「ケーキはモフモフだね」
まあ見ての通り、街の外は魔物がいるからケーキから降りちゃダメだって兄さんに言われてるんだけど。
それでも外を眺めて風に当たることは楽しい。日光の光も温かくて心地よい。さすがに寝たいとは思わないけど、快適な場所であることに間違いはない。
「兄さん兄さん、あの山まで行こっ」
「ああ、わかった。けど、先にコイツらを片付けないとな」
道中では多くのモンスターが現れる。モンスターは王宮生活をしていた頃に聞いた『魔物』というものによく似ている。
気持ち悪い見た目をしたヒト型の生物とか、ゴツゴツした岩でできた人形とか、どれもモフモフしてなさそうなのが魔物の特徴。
例外で ウルフっていうのがケーキに似てモフモフしてたけど、それぐらい。
「……あのクマさんモフモフしてそう」
クマさんに手を伸ばそうとすると、ケーキがこちらを振り向いてきた。
「だめ?」
ケーキはコクりと頷いた。ケーキまで過保護になってるし。兄さんのせいだよ!
わたしとケーキはかなりのんびりしてるけど、実際は四方八方にモンスターがうじゃうじゃいて囲まれてる状態。兄さんは一人で剣を振るって妹にカッコいい兄を演じてる。
兄さんの見せ場のためにもわたしはここでゆったりとしていよう。
「俺の妹に手ぇ出すんじゃねー!」
……そのセリフ、どっかで聞いたような気がする。まあ、気のせいかな。
「おら、くたばれぇ!」
兄さんがめちゃくちゃ頑張ってるのはよくわかるけど、それと同時にめちゃくちゃ押されてることもよくわかる。
まあ、あの数だもんね。よく一人でここまでやったものだと思うよ。これがシスコンの力なのかな?
「ケーキ、早くしないと日が暮れちゃうからやっちゃって」
わたしがケーキに指示を出すと、ケーキは前方のモンスターを焼き払った。
「あっ、ちょっ、そのクマさんはダメ! まだモフモフしてない!」
ケーキは問答無用で、というかわざとらしくクマさんを焼き払った。
わたしのクマさぁーんッ!!
「ケーキ! なにしてくれてんの! わたしのモフモフ返しわぷっ」
怒ってるわたしにケーキは尻尾で顔を撫でてきた。
あっ……このモフモフ、最高です。
「…………一瞬かよ」
兄さんが苦戦していた敵を一掃すると、ケーキは再び前へと進み出し、新しい村を探す旅へと出た。
「兄さん兄さん、あれ……」
わたしが指すと正面から一台の馬車がやってきた。
あの馬車は商人さんが荷物を運ぶ時とかに使ってるヤツだね。わたしたちの居た街に行く感じかな?
「よし、イリヤ。行くぞ」
「うん!」
わたしたちは馬車が来た方向へと向かって歩き始めた。
馬車の人とは何もなかったのかって? そりゃ挨拶したらバイバイだよ。小さな村が少し進むとあるって言ってたけど。
「あれじゃないか?」
兄さんに言われて腰をあげてみると、少し遠い場所に家の集落が見えた。木でできた外壁みたいなのがあるから間違えないと思う。
「ほんとだ」
村の集落ってどこでも似たようなものだよね。木でできた外壁があって中に集落がある。そして、長老って呼ばれてる白髪のおじいさんがいる。
これこそが村って感じだよ。まだ長老は見てないけど。
わたしと兄さんは村へとたどり着いた。村へは何のチェックもなく、あっさりと入れた。
一応ケーキは子犬の大きさになってもらってるけど、こんな小さな子供がいるんだから問題なかったね。
「何もないね」
「そうだな」
村には家がいくつかある程度で特に何かあるというわけじゃなかった。せいぜいポーションを売っている小さなお店が1つあるだけだ。
まあ村だし、仕方ないよね。ここまで来たのに何もないっていうのもアレだよね。
「次の村も探してみるか」
「うん」
わたしと兄さんはその村を素通りして村を抜けた。一応、ここには転移で来られるようになったみたいだけど、来る必要……ある?
「ケーキ、ここからまたよろしくね」
ケーキに元の姿へ戻ってもらい、ケーキの背中に乗せてもらう。
「山だね~」
「山だなー」
わたしと兄さんがこれから進む場所は山と山に挟まれた谷間。
……今わたしの胸がぺったんこだって言ったヤツ出てこい。ぶっ潰してやる。
「イリヤ、怒ってる?」
「べつに」
「今日はここまでにしておやつでも食べるか?」
おやつ…………
「うん! プリンが食べたい!」
「じゃあ作ってやるか」
「わーい!」
兄さんの作るおやつはめっちゃ美味しい。そりゃもう毎日食べても飽きないぐらい美味しい。まあ毎日冷たいもの食べると、お腹壊すからダメだってお義母さんに言われてるんだけど。幸い昨日食べたのはドーナツ。何の問題もない。
わたしと兄さんは、ゲームをログアウトして一階のお店に向かう。
「エクレアもふもふ~」
やっぱりエクレアは最高だね。マカロンも一緒にもふもふしてあげるからね。
「ファム、二階でゲームしてるんじゃなかったのか?」
「兄さんがプリン作ってくれるの!」
「そうか……」
なんかお義父さんの様子がおかしい。
ん? なにか持ってる?
「なに持ってるの?」
「あっ、いや。なんでもないんだ。気にするな」
むっ、あやしい……
わたしの全てが訴えてる。アレを奪い取ればお義父さんの弱点を知ることができると。
まあ、知ったところでって感じなんだけどね。弱点というのは常に把握しておかないといざという時に困るのは自分だからね。
「なに隠してるの。見せて!」
「いや、何でもないから気にするな」
気になるから聞いてるんだよ!
……まったく、神技は使いたくないんだけど。わたしのことは少しずつ話していく必要もあるし、ここで神技を披露しておこう。他のお客さんは……いないね。
使うのは空中浮遊の応用。こちらではサイコキネシスっていえばわかるかな。物体を空中に浮遊させて引き寄せる技である。
「うおっ!? なんだ!?」
「はい、ゲットー!」
お義父さんの隠し持っていたものを空中浮遊で引き寄せ、手中に収めた。
雑誌? 表紙に巨乳の女が写ってるのが気に入らないけど、中を開くと漫画がある。
「うぐっ!」
試しに読んでみようとすると、神技の反動である頭痛がわたしのことを襲ってきた。
わたしはフラッときて雑誌を手放してしまい、床に落とした。
やっぱり反動が強くなってる……!
「おい大丈夫か!?」
お義父さんがわたしに駆け寄って倒れそうになったわたしを支えた。しれっと雑誌を回収していたことが気に食わなかったけど、それよりも今は横になりたい。
「ファム、今のはいったい……」
「『
わたしはそれだけ言うと、意識を手放した。
「神技……? おい颯斗! こっち来い!」
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