モフモフ猫ちゃん!
ファム・ブライド、名前が変わるらしいです。
新しい名前は『結城ファム』です。どうやらここはわたしの居たユグドラシル王国とは違って姓を前に付ける国らしく、ブライドを捨てて結城を前に付けました。というか勝手に付けられてました。
そんなわけで、わたしは幼女になっただけでなく、この家の養女になりました。
「じゃあ俺、行ってくるから」
「兄さん、どこ行くの?」
兄さんがなにやら物凄く畏まってそうな服を着てどこかへと出掛けようとしていた。
颯斗のことは兄さんと呼ぶことにした。お兄ちゃんって呼ぶように言われたけど、わたしだって十五歳だ。よく知らない相手に「お兄ちゃん♡」とか言う度胸はない! だから「兄さん」にした。
兄さんもお兄ちゃん呼びは慣れない様子だったので、ちょうどよかった。
「どこって、学校だよ」
「がっこう?」
わたしが首を傾げて訊くと、兄さんは「お勉強する所だ」と教えてくれた。
自ら好んで勉強をしようとするだなんて偉い人だね。わたしなんて勉強をしたいと思って勉強したことはないよ。勉強しないと殺されるから勉強しただけだし。
「わたしは?」
「……しまった。コイツどうしよう」
兄さんはわたしを一人にしておけないようで、しばらく悩んだ末にわたしを一階にいるお義父さんの元へと連れて行った。
「父さん、あとは任せたぞ」
兄さんは「行ってきます」とだけ言うと、扉から外へと出ていった。
すると、まるでタイミングを見計らっていたかのように猫さんたちが集ってきた。
「あっちでソイツらと遊んでてくれ」
お義父さんがカウンターから少し離れた場所にある白い柵で区切られた空間を指しながら言った。白い柵の高さはだいたい今のわたしと同じぐらいの高さで、大人なら十分に中の様子を見ることができる高さだ。
一部だけ柵のない場所があったので、そこから柵の中へと入ると、猫さんたちもぞろぞろとわたしの後ろをついて来て柵の中に入ってきた。
猫ちゃん、かわいい……
「肉球やわらか~いッ!」
猫ちゃんの肉球をぷにぷにと握る。
すると、別の猫さんたちが自分のも握れと言わんばかりに肉球を差し出してきたり、肉球をわたしの手の上に乗せたりと、もう昇天しそうな気分だった。
「全身モフモフ~ッ!!」
猫ちゃんを抱き抱えてゴロリと床に転がる。モフモフ成分補給だ。これでモフ値も回復する。
モフ値とは、わたしのストレスを打ち消すことができるパラメーターのことを示す。また、モフ値は補給すればする程気分が良くなるのだ。ちなみに王宮生活では広い庭園にいたウサギさんたちを中心としたモフモフな動物たちから摂取していました。
「この子たち名前はなんて言うの?」
「ここからだと縦に並べてくれないと説明しにくいな」
お義父さんに訊くと動いている状態だと教えにくいと言われたので、わたしは猫さんたちをジッと見た。
すると、猫さんたちは綺麗に縦一列に並んだ。
「意志疎通でもしてるのかよ……」
お義父さんは縦一列に並んだ猫さんたちを見て、呆れた声で呟いたが、手前から順番に名前を教えてくれた。
「手前からビスケット、モンブラン、エクレア、マカロン、シナモン、スコーン、ドロップ、シャーベット……全部お菓子の名前だ」
どれも聞いたことないお菓子だけど、お菓子の名前を猫さんたちに付けるなんて名前を付けた人は相当お菓子好きだね!
「それ、颯斗が付けたんだぞ。アイツ、お菓子を作る職人になりたいんだとさ」
ちょっと驚いたけど、兄さんはお菓子大好きなんだね。わたしは食べたことないからわからないや。
でも、兄さんが作ったお菓子食べてみたいな~。
「おっと、もうこんな時間か。そろそろ開店するから、騒がないようにな」
「はーい」
お義母さんは近くの『すーぱー』っていう市場の上位互換みたいなところで朝から働いてるって兄さんが言ってた。
ここは『猫カフェ』っていうらしいんだけど、お客さんが少ないから生活するためのお金が足りないんだって。
猫ちゃんふかふかだな~。
モフいよ猫ちゃんたち!
「ニャー」
「ん? なに?」
猫ちゃん……ビスケットが猫じゃらしを持ってきて、渡してきた。
もしかして、遊びたいのかな?
軽く猫じゃらしで顎の下をつついてあげると、気持ち良さそうにしながら猫じゃらしを掴もうと手を伸ばしてた。
猫じゃらしより、手で顎とか背中を撫でてあげた方が良いよね。
わたしは片手でエクレアを撫でて、他の猫さんたちを猫じゃらしで遊ぶ。
エクレアは全身は真っ白な毛並みで頭部に茶色い毛がある折れた耳を持つ猫ちゃんで、とてもかわいい。間違えなくこの国で一番人気のある猫種だ。
ちなみにここにいる猫さんたちの種類は四種類で、エクレアと同じ猫種はいない。
ビスケットとシナモンは違う猫種だけど、太ってる。それとは対称的にスコーンとシャーベットはスリムで素早そうな見た目をしてる。マカロンとドロップは普通の猫って感じだ。
でも、猫さんたちがモフモフでかわいいことに変わりはないから関係ないよねッ!
しばらく猫さんたちを撫でたりして遊んでいると扉についている鈴が鳴った。
扉が開くことでなるこの鈴はお客さんが来た合図だ。
お義父さんにお客さんが来たら猫さんたちを引き寄せないように言われてるので、猫さんたちに視線を送る。すると、猫さんたちにもわたしの意思が伝わったようで散会して行った。
二人組のお客さんが入ってくると、お義父さんに注文をして柵の中に入ってきた。
たぶん猫さんたちもずいぶん懐いていることから、常連客だと思われる。
「………………」
なんか猫さんたちを取られたような気分になる。さっきまで一緒に遊んてたのに……
「ニャー」
「ビスケット、ありがとう……」
近寄って慰めてくれたビスケットにお礼を言って頭を撫でてあげる。
二人組の常連客さんと猫の可愛さについて語ったり、あとから来たお客さんと猫を抱いてゴロゴロしたりと、退屈しない一日を過ごした。
「ただいまー」
「兄さん、おかえり」
兄さんが帰って来たので、わたしは猫さんたちにお別れをして兄さんと一緒に二階へと上がった。
別にわたしは猫さんたちと一緒でも良いのだが、お店の迷惑になるかもしれなかったので兄さんと二階に行くことにした。
「……待て」
部屋に入ろうとした時、わたしは兄さんに止められた。
「猫臭い」
「え"っ!?」
自分の腕を鼻に近付けて臭いを嗅ぐ。たしかに少し猫臭いような……でも気にする程じゃなくない? 王宮の頃なんて月一ぐらいしかお風呂に入れなかったから、今以上に臭かったと思うよ。
「風呂入って…………入れてやるからこっち来い」
えっ!? ちょっと! わたし子供じゃないんだけど!? いや、今は確かに子供だけど中身は十五歳だからッ!!
同い年ぐらいの男性にお風呂に入れられるとか、どんな羞恥プレイなのッ!?
「別に一人でも――――」
「母さんにファムから目を放すなって言われてるんだ。洗ってやるから脱げ」
「ええっ!?」
わたしの抵抗は何の意味もなく敗れ、兄さんに服をひん剥かれて全身をキレイに洗われた。
前も後ろも全部見られただけでなく、ガッツリ触られたわたしは羞恥心で死にたくなった。
「責任とって! もうお嫁に行けない!」
「兄妹なんだから気にするなよ! というか気にするような歳でもないだろ!?」
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