トライアングル。【赤城×青山×角田】
「腐れ縁 恋愛」
「三角関係」
「親友 同じ人を好きになった」
私のスマホの検索履歴トップ3はこれだ。
見ての通り私は今、とても面倒な状況に陥っている。
まず私は角田啓介という同級生が好きだ。
こいつは中学からの腐れ縁。
向こうは私を女として見ていないと思うが、私は彼のことが今すぐ襲ってやりたいくらい好きだ。
もちろん襲ったところでどうにもならないので、襲ったりはしないが。
そしてもうひとつ問題なのが、親友の青山鳥居だ。
彼女は私が高校生になってすぐにできた友達であり、同じく角田啓介を好きになってしまったライバルでもある。
そこまではどこぞの少女漫画でありそうな展開だが、さらに問題がある。
それは青山が男ウケする女子という点だ。
背が低く胸が大きい(Fカップらしい)、声も可愛らしい声をしており、料理や家事全般は朝飯前。
そして顔もなんとかいうアイドルに似ているらしい。私はよく知らないが。
条件的には、こんなの戦いにもならない。
鳥居の一人勝ちだ。
だが実際はそうはならなかった。
角田は鳥居にも興味を示さないのだ。
それが余計に厄介で、モテる女子像として完璧な鳥居が振り向かれないなら、何をどうすればいいのかわからない。
いっそ鳥居と付き合ってくれたら、私も諦められるのに。
しかしこれはチャンスだ。
鳥居には今日、宣戦布告をした。
放課後、会計を勤める生徒会に遅れることを連絡した後、鳥居を教室に呼び出し、
「私は鳥居のことを親友だと思ってる。でも隠し事をしてまで仲良くしたいとは思わない。もしこれであなたが私を嫌うなら、そうすればいい。...私、啓介のことが好き。正々堂々と勝負しましょう。」
そう宣言した。
「わかった。本当のことを言ってくれてありがとう。私も三玖のことは親友だと思ってる。だから、正々堂々勝負しよう。仲良く、ね。」
鳥居はそう言うと、いつもの可愛らしい笑顔でニコリと笑い、首を右に傾けた。
こういうことを平然とやってのけるのが、男ウケするポイントであり、私にはできないことだ。
本当に羨ましい。
家に帰って、私は自分の部屋で一人怯えていた。
上手く笑えていただろうか。
鳥居に負けそうで怖いことがバレていないだろうか。
生徒会の仕事は鳥居への恐怖でいまいち上手くいかなかった。
会長の亀山君は鈍いから気づいてくれなかったが、副会長の白田さんが察してくれて、何一つ詮索せず早めに帰らせてくれた。
いくら鳥居が親友だからって、こればかりは譲れないし負けたくない。
でも普通に考えて、条件は圧倒的に不利だ。
料理や家事ができるようになればいいのか?
そんな付け焼き刃で何ともならないだろう。
私はどうしようもない不安を抱え、眠れない夜を過ごした。
次の日、私が教室に入ると、私が入った入口近くで啓介と鳥居を含むイツメン4人が、仲良さげに話していた。
私もこのイツメンの一員で、いつも5人で行動している。
「三玖!おはよ!」
真っ先に私に気づいた鳥居がいつもの笑顔で声をかける。
怖気付くな。いつもどうりだ。
「鳥居、おはよう。」
「三玖にしては遅かったね。」
「ちょっと夜眠れなくてねー。」
席にカバンを置いて、グループの輪に入る。
「おはよう、啓介」
「おう」
相変わらずぶっきらぼうだ。
中学の頃はこんなんじゃなかったのにな...。
「赤城、なんかあった?」
啓介が小さな声で聞いてきた。
気づいたんだ。この短時間で。
たったそれだけで飛び跳ねたくなるほど嬉しく感じてしまう自分の単純さに呆れる。
「啓介には隠し事出来ないね。」
「何年腐れ縁やってると思ってんだよ」
「もう丸5年だねー」
「で、何があった。」
「それは言えない。」
「そうか。」
啓介はそれ以上詮索してこなかった。
啓介のこういうところが好きなんだよ。私は。
あの言い方だと、鳥居が同じような感じでも何も察しないのかもしれない。
5年のただの腐れ縁。
でもそれが私の、鳥居がどうしても手に入れられない、武器だ。
それを最大限活用するしかない。
鳥居、あんたには絶対負けないよ。
啓介、覚悟しててよね。
私の戦いは、ここから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます