繰り返す日々の中に果たして正解はあるのだろうか?

絹ごし豆腐

Root 0. プロローグ;初めての選択と新たな分岐

「選択」

複数のものから、1つ以上を選ぶこと。


「分岐」

分かれること。分かれる地点。


「結論」

ある物事を行った後に生じた現象、状況、物象。


この物語は選択に始まり、分岐を続け、結論に至る。

最良を求め、続いていく。

終わりのある、終わりのない物語。


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冬が好きだ。


冬の空気が好きだ。

様々な姿を見せる冬の空気が好きだ。

寒い凍てつく空気も、乾燥した空気も、澄んだ空気も好きだ。


冬の雪も好きだ。

ランダムに落ちてくる様々な大きさの雪が好きだ。

部屋の中からぼーっと眺める雪も、外で直接眺める雪も好きだ。


冬の星空が好きだ。

きらきらと輝き手でつかめそうな星空が好きだ。

誰にも、何にも邪魔されずに、見つめられる星空が好きだ。


すべて、考え事だけをするように促してくれる、誘導してくれる。

空気も雪も星空も、ただそれだけに集中し、ただそれだけを選ばせてくれる。

そんな冬の時期が僕は好きだ。



今日の天気は快晴。星空の光に照らされながら、夜の澄み切った空気を切り裂き、今朝まで降っていた雪を踏みしめながら、一歩ずつ”下界”への道のりを進んでいく。

大学の寮から、下界と呼ばれているコンビニやスーパーなどの生活圏へまで片道30分の道のりは、良くも悪くも考え事を捗らせる。


「とおいな。下界・・・」


ついでに、ぼそっとつい毎回呟いてしまう不満もセットだ。


降雪量の多さが有名なくらいで、特に盛んな産業もない地方の片田舎、小高い丘のてっぺんに座す大学のキャンパスは、下界から隔離された立地と、周囲にアパート等が無いため、基本的ほぼに同キャンパス内の寮に学生が住むことから、別名「研究第一主義者マッドサイエンティスト育成大学」などと揶揄されている。

下界にも大した娯楽もないが、週に一度以上は下りないと、キャンパスに引きこもり、研究し続けるだけの生活だと気分が滅入ってしまう。特にこの時期は雪も多く、下界へ降りるのも一苦労だから、快晴の日は必ず、出かけるように決めている。

今日も普段通り、特に予定はない。

あそこの店に飯を食いに行くか、コンビニで酒でも買って寮の自室でまったり飲むか、どちらにしようか考えながら、街灯がまばらな薄暗い坂道を下っていると、少女の姿が目に入った。


「まじかよ・・・」


真冬の夜に、真っ白なワンピースを着た少女が、街灯の下で空を見上げて佇んでいた。今の気温は恐らく摂氏0度前後、常に半袖半ズボンの一昔前の漫画やアニメじゃないんだ。


「いくら何でも寒すぎるだろ、アレは」


あまりにも不自然すぎて、ついつい声に出てしまう。

少女に近づくにつれ、容姿をより視認できるようになり、歩みが自然と止まった。

少女がこの場所にはあまりにも似合わなかったからだ。


腰のあたりまでありそうな長く透き通るような美しい金髪、

新雪のような純白の肌、

どう見ても日本人ではない。

服装も真っ白なワンピースに白いビーチサンダル、

マフラーも手袋も身に着けず、

どう見ても地元の少女ではない。

背丈も150 cmくらいで、胸も。。。。

・・・いや、失礼。

容姿からはどう見ても中学生くらいだ。


どう考えてもこの場所には、不似合いだ。

非日常的な光景に驚き、思わず足が止まってしまったが、周囲の寒さに背中を押され歩みを進める。


徐々に少女との距離が縮まっていく。

正直、面倒ごとにはかかわる気は無いが、流石に気になる。

これ、どっかにカメラが隠れてて、視聴者参加型のどっきり番組の収録でしたーとか、声を掛けた途端に、こわーいおじさん出てきて、どっか連れて行かれるとか、

じゃないよね。。。

嫌な予感しかしない。

が、気になる。

目が離れない。

だって、超絶美少女ありえないからだ。

目の前に超絶美少女ありえない状況が眼前に広がっているのに、目をそらさない男はいないだろう。


と注視していると、


「あ。。。」


目が合ってしまった。

うわ、まずい。見すぎちゃったのばれてたかな?

うわ、あいさつした方がいいのかな?

とか心の中で慌てふためきつつ、突然の事態に緊張し、ながらひねり出してしまった。


「あ、、ぐ、、ぐっ、グッド、、あふたーぬーん」


うわ、恥ずかしい。

なんで英語、ここは日本なんだから、堂々と”こんばんは”で良かったじゃないか!

信じられないほど発音が不適切であろう、

とっさの”こんにちは”をひねり出してしまった。


「・・・・・・・・・・・・・・」


少女と僕の間に沈黙が染みわたる。

やってしまった。

恥ずかしすぎる。早く立ち去りたい。

うん、一刻も早くそうしよう。

と歩みを進めるべく、赤顔をそむけると、思いがけない返答が帰ってきた。


「もう、”Good afternoon”という時間ではない。」


うわーせっかくひねり出した英語を否定されてしまった。

マジで恥ずかしすぎる。

発音もきれいに言い直されちゃった。

しかも、真顔で。

もう、すぐに寮の部屋に帰って、ベットにダイブしたいいいいい。

というか、なんだよ、日本語話せるならそういう雰囲気出しておいてよ。。。

普通に日本の方じゃないと思うでしょ、こんなところで、そんな格好で突っ立てれば。。。こっちは頑張って苦手な英語で挨拶したのに、その返答はないよ。。。

歩み進め一刻も早く、ここから離脱しようと一歩を踏み出したとき、


「きれい。」


と少女は満天の星を見つめながら呟いた。

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