しゃーねえだろ!

@pompompanda

コンビニ首になりました

 まだ残暑が残る9月下旬、俺は半年間務めたコンビニを後に自分自身との葛藤感を晴らすようにひたすら自転車を漕いでいた。

 

 熱中症になることもない。重たい荷を持つこともない。俺はコンビニの仕事をそこそこに好いていた。が、しかしひとつだけ問題があった。


 「もういいからカグヤ君、こんな仕事もできないなんてどこ言ってもやってけないと思うよ。やる気は伝わってくるよ?でも君何回言ってもすぐ忘れるじゃん」


 俺の欠点はひとつのことに夢中になると他の作業を忘れてしまう。例えば品出しをしている最中、レジにいくら客が並んでいても気がつかない。人生3度目の解雇宣言だった。


 その日はどうも気持ちが落ち着かずそのままアパートに帰る気にもならなかったので、近所のあぜ道を自転車から下りてとぼとぼと歩く。


 「なんで俺だけこんな目にあわんといけんのや、高校中退、コンビニすらもできん。俺の人生終わっとる」


 自分が描いていた理想の大人とは違う。アルバイトですら務まらない、何故こんなにも自分だけが不幸になのかわからなかった。


 その時ふと思い出した。アルバイトを首にさせられた理由も、高校でうまくいかなかったこと。もしかして自分は何かの障害を持っているのではないか。


 ポケットから携帯を取り出し早速調べてみるが、何をどう検索すればいいのかわからず意味不明な専門用語が連なっていて余計わからなくなった。


 ——————————————————


 認めたくはない。だけどこの先の俺の人生に関わることだろうと思い俺は病院の待合室に座っていた。


 もし障害や病気だったらどうしよう。俺もとうとう終わったのか。


 「次の方、カグヤさん先生がお待ちですよ」


 「はい。。。」


 予約をしていなかったせいで待ち時間は30分程だっただろうか、自分がこれからどうなるのか不安な気持ちで余計に長く感じた。


 医者からの言葉ではやはり想像通りのものだった。


 「君はADHDを知っているかい?」


 俺は長い拷問からとき離れたの如くやっぱりかと何故か内心安堵してしまった。それからというのも医者はADHDの説明を淡々として最後にこんなことを言った。


 「君の様子じゃ一般就労、つまり普通のところじゃ無理だね。就労支援という障害者施設で働いてみようか」


 「嘘だ!俺はADHDなんかじゃない。俺は高校まで行ってるんだぞ、障害者と一緒にすんな」


 前者の言葉は理解できた。しかし、後者の障害者施設で働くのには無理だ。俺はそんなところでは働きたくない。いやだ。


 話し合いは数分で終わった。


「高校中退者、おまけに障害者かよ。神様、こんな俺に何ができるんや」


 自転車置き場でひとり呟きながら、今まで積もっていた感情が涙として表れる。


 「君、男の子が泣いたりしちゃダメだよ。ほら周りの人も見てるし、私が泣かしたみたいになってるじゃん」


 唐突にかけられた言葉に俺は顔を上げた。そこには真夏の最終日だというのに肌は白く黒髪のショートヘアに白いワンピースがとても似合う女が立っていた。


 「だぇだよ、お前。お前にはかんけーねだろ」


 「関係ないかもしれないけどさ、病院で泣いてるってことは病気や障害のせいでしょ?ここの先生結構ズバッと言うからさ」


 「うるせえお前みたいな健常者にはわかんねえんだよ、おりゃどうせ社会的弱者だ」


 「私も障害もってるよ。君もなの?一緒じゃん!ほらもう泣かないで」


 何故名も知らないこの女は初対面の俺にこうもまとわりつくのだろうか、そして慰めの言葉をかけるのか。ただもしこの感情すらも障害のせいなのであればこれは病みつきになる。病気だけに。


 


 



 


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

しゃーねえだろ! @pompompanda

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る