Drug

ぐでっくま

第1話 50歳の誕生日

今日は2052年3月15日、私は50歳になった。

人生の半分が終わったのかと思っていた。あっという間だった。カモメのなく声とともに潮の音とにおいが風に乗ってきた。


子供のころある大人が言っていた。子供のころの夢なんて99%叶わない。本当にその通りだ。私の子供の時の夢は宇宙飛行士だった。いまや、そんなものは叶うはずもなく、というかそんなものに向かって努力すらしなかった。この通り、夢に向かって努力する人が1%なのだろう。


この50年何をしていたのだろう。

高校まではただただ大人になってから楽をするために勉強していた。なんとか一流の大学に入学し、二年間落単することなく過ごしていた。大学三年生のある日、趣味がてらにと適当に小説を書き某情報サイトにあげると、わたしは文才に恵まれていたのだろうか、世界中に反響を及ぼし、大学三年生 20歳にして50億円稼いでしまった。いままでの日々は何だったのだろう。そうして今や働くこともせず、静かな海沿いに屋敷を立てて暮らしている。


そうして人生の単調さとともに生涯の短さに悲観しているとき、滅多に手紙など来ることがないこの屋敷にある真っ赤な封筒が届いた。今時このようなものは珍しい、物珍しさから期待を膨らませ中の手紙を取り出し、読んでみた。そこにはこう書かれていた。


この薬を飲めばやり直せます。一粒1000万 一粒では周りがすこし生き生きします

二粒で周りは大人になります 三粒で周りは大人の苦を忘れます 十粒で振り出しに戻れます なお、記憶は消えません 

購入される場合は買う数を裏面に記入後、返送してください

一週間後に薬をお届けします


振り込み用の口座の書かれた紙も入っていた。どうやら人生をやりなおせるらしい。考えるに、一粒では生き生きする時まあ三十代くらいだろう。二粒で二十歳。三粒で小学生くらいだろうか、どうせなら最初からがいい。ちょうどこの屋敷には1億とちょっとを持ち合わせている。ただこの薬が本当にあるのか、ただの詐欺ではないかと思ったが何もしないままではこのただ楽しくもない生活がまた始まるだけだ。そんなことを考えながら、とりあえず手紙を机の上に置いたまま、お風呂に入り夕食を食べた。もちろんケーキも食べた。しかし、祝ってくれるのはお手伝いさんだけだ。夕食を終え、忘れかけていた手紙をもう一度見た。すると手紙の中に文字が増えていた。


この薬は本当です また、もし貴方が一粒でも飲み、やり直した場合、再び50歳になった日にこのお手紙を送らせていただきます


文字が勝手に増えていることよりも、再びこの手紙が送られてくるということに興味が向いていた。一粒だけ飲んで、本当かどうか確かめるのもありだ。だが、一粒飲んだところでやりなおせるのはきっと20年、それでは楽しくない生活が20年増えるだけ、それだけは御免だ。

私は人生をこう考えている。人間というのはあくまでも三種類の生き方がある。


一つ目は、ただひたすら子供のころに持った夢に向かって勉学に励み、精神的にはきついが一生を後半のために頑張る生き方


二つ目は、子供のころに夢見たスポーツを子供時代ずっとし、体力的にはきついが一生を前半のために頑張る生き方


三つめは、容姿端麗でうまれてきて、子供時代苦労することなく過ごし、持ち合わせたコミュニケーション能力で大人時代にも出世しまくる いわゆる勝ち組だ


私はこの人生、一つ目の道を歩みながらも脱線してしまったのだ。どうせ生まれ変わるなら三つ目の生き方をしたい。しかし、この手紙、“やり直せる”という文面から察するに生まれた瞬間に戻るようなものなのだろう。とても容姿端麗とは言えない私にとって三つ目の生き方とは縁がないのだろう。

どういう生き方をするのが正解なのだろう。

50年たてばやり直せるのなら、とにかく飲めばいいのだろうか。

かといって最初からやりなおすのも面倒くさそうだ。


そうこう考えているうちに眠っていた


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