第16話 三人目
まさか魔王にまでなってこんな恐ろしい事に出会おうとは。
目の前で破片がささった男性を見る。
死んでしまったのか先程からピクリとも動かない。
「こ、これはどういう事だ?」
緊急事態に俺はアルに尋ねるがアルに代わって答える者がいた。
「あぁ、魔王様?これはどうも大変失礼」
その声の主と目が合う。
「実験してたらぶっ飛んでしまいましてぇ」
その声の主。それは倒れる男性。
俺は二度目の発狂を押し殺した。
「どうもどうも 初めまして魔王様」
ペコリと頭を垂れる高身長の男性。
魔王が目の前だというのにだるそうな瞳、白衣を着ている事からおそらく科学者か何かなのかと推測できる。
「魔王様、こちらは六人の悪魔〈六人の魔神〉の一人、ルギス=カーナルドです」
―え、ああこいつが?何か緊張して損した
めちゃくちゃ失礼な事だが本当にそう思ってしまったので仕方ない。
「私の色をこうした張本人です」
―え、………色って?
ピンときていない顔をしているとルギスの方から説明し始めた。
「いや~こいつがですねぇザリガニみたいな見た目してるからつい気になっちゃって遊んでたらこうなりました」
―動機がかなりサイコパスだな てか、なぜ最終的にそうなったのか結局わからねーじゃん
俺は更に何も言えない表情になった。
―ミラン以外六人の悪魔〈六人の魔神〉はロクなヤツがいないのか?
これでようやく半分会ったがミランは兎も角やれザリガニだの、やれサイコパスな科学者だの。
しかし俺はここでふと、思う事がある。
―いやまてよ ザリガニは兎も角サイコパスな科学者はアリだよな?
何せこちらは魔王だ。勇者を迎え撃つという意味ではそれくらいヤバいヤツの方が白熱するだろう。
むしろアルよりマシな一人ではないのだろうか。そう思えば何てことはなかった。
「よろしく頼む ルギス……でいいか?」
「あー………何でもいいですよ?」
適当なのはさておき、俺はもう一つ気になる事があった。
それは部屋に入ってから気が付いたのだが触れずにおいたもの。
「ではルギス これは何だ?」
俺が目を向けた先にあるのはその場で立ち尽くす者。
「ああ、それですか」
刺さっていた破片を引っこ抜きながら答えるルギス。
見た目はあれだ。ゾンビだ。
緑のゴツい体躯に継ぎ接ぎの体。目は死んだ魚のような目で焦点が合っていない。
臭いはしないが目に入るとかなり気になる。
「サジローとサザブローです」
丁寧に答えるルギス。
―名前あるんだ………じゃなくて
「いや、名前ではなくてだな コイツらは何なのだ?」
「まあ、見ての通りアンデッドです」
目の前のゾンビのサジローとサザブローは二人で何故か殴り合いを始めた。
「お前生意気なんだよ」
「何だと?お前こそ、汚い顔してる」
―ちゃんとしゃべる事は出来るのか!?
通常ゾンビを想像すると「あー」とかしゃべっても一単語程度しか話さないイメージがあるのは俺だけだろうか?
イメージとはかけ離れた滑らかな話をするゾンビに何となく夢を壊されたような気もするがコミュニケーション不可よりはマシだと自己完結する。
「ちゃんとした意志はあるのか?」
「いや、魔王様?さっさと離れないと巻き添え喰らいますよ?」
「へ?」
遠く離れたところからルギスが忠告したがもう遅い。
ボガーンッ
ここら一体が爆炎に包まれた。
その爆発原は喧嘩していたゾンビ二人から起こったもの。近くにいた俺は部屋の端まで吹き飛ばされた。
「な、何が起きた?」
ボロボロになる俺を覗き込むルギス。
「あーまた失敗ですね」
―し、失敗?何が?
魔王を吹き飛ばす威力が有るにも関わらず失敗とは納得いかない。
「いや敵に倒されたら爆発するゾンビを作ろうとしてたんですけどね 諦めますか」
―そんなもん城の中で作るな!
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