第22話

会場に入る前に待機して並んでいる列の横に、お孫さんらしき女の子とおじいちゃんがいた。


二人の話し声が聞こえてくるので、悪いとは思いつつ耳をダンボにして聞いてしまった。


「じーじ、ごめんね。私のせいで長いこと爪伸ばさせて、真っ赤なマニキュアまでさせて。普段すごく爪短いのに、いろいろ不便だよね?それよりも何よりも恥ずかしいよね?シルバー人材のお友達とかに、何か言われたりしてない?」


お孫さんは涙目だ。


「心配すんな。じーじはな、こんな風で、エミリに何もしてあげられなかったのに、今回こうやって手伝ってあげることができて、ほんとに嬉しいんだよ。こんな歳になって孫の役に立てるなんて、素晴らしい事じゃないか。じーじがエミリに感謝したいくらいだよ。ありがとう、エミリ。」


じーじは、赤い爪を自慢げに見ながら孫娘に語りかけた。


「じーじ。」


孫のエミリ、目がウルウル。


じーじ、もらい無き。


僕、内田、号泣。


エマ、眉間に手をあて男泣き。



…真実の愛を見た。



唯一の心配の種だった花のアート…本番では、僕の中指はマンドラゴラでは無く、きれいなハイビスカスだった。




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