2015年10月

(10月2日)

仕事に勉強 ウィークデイは忙殺

せっかくの真っ青な大空も 宝の持ち腐れ

何度繰り返しても 目の前の空 わたしのものにならない

高すぎる窓ガラス一枚へだてて ぜんぶ遮断

高層ビルの窓から見上げて

わたしと一緒に泣いてくれない

教室 ミーティングスペース コピー機とプリント

単調な毎日に汚い駅のホーム

この広い大空の青に

七色の宝石を浮かべてちりばめて

つばさを広げた小鳥でもいい

富士山だって 綿あめみたいな雲だって

ウィークエンドの二日前だっていうのに

こころときめいて もうビルディングの林にはいない

自動ドア 360度永遠に回り続ける魔法

一瞬の出来事 するりすり抜けて 一歩前に出れば

新しい素晴らしい世界 お隣だって

あたりの視線を颯爽とかわして

自由なフロンティアに繰り出して


(10月9日)

ある秋のこと ある日のこと 鎌倉のこと

若宮の石畳 八幡様の玉砂利 三方の紅葉 目にも綾

相模灘にそって都にのぼる こゆるぎの弱文士

いつかの太郎冠者よろしく 大寺の鉦の音たずねて回る

たどりついたお宮 そぞろ夕方に少し風が吹き始めて

境内の梢 西に東にお辞儀する

ようやく西の空が朱に染まりかけてきた頃合

どこか気の早い秋の虫が歌い始めた

鎌倉の山の端 とんび見下ろす森のなか

いにしえの武者はもう夢のあと

金具の音 陣の鼓 馬のいななき 勝鬨の声

土に埋もれて聞こゆ

今の御代 ふいに足元を見下ろせば

盤石だと思っていた山 土 海

容易によろめくものと悟る

泰平 安穏 みな目を閉じて祈る

幻のような今の寂々 沈みゆく相模の夕日

とんびヒョロロ 鴉カァ 野良犬の遠吠え

梢の風 秋の虫 行人さげる鈴の玉響 わらべの歌

一陣の風のあと いつまでも残るよう

よみがえった僧兵の槍 お宮を封じて法螺三景

火入れからたちまちに上るほむら

翁 鉦の音 綾鼓


(10月26日)

セントラルの音楽学校を右に曲がって

都会のオアシスの真ん中 噴水見えてきたら

今日の日曜日もいつもと同じ場所 同じ時間で

晴れた朝から心止まらない

手を当てれば聞こえるくらい

同じステップで私の足も止まらない

はやる気持ち あなたからも感じる

ふたつの点と点から直線がのびて

あるところでぴたと重なる

音楽学校の教室から少し聞こえるハーモニー

そのあとですぐ ハーモニーはユニゾンに変わる

コントラバスもジャズドラムも

それぞれのプレイヤーの帰りを待ってる

きっと一日待ちぼうけ

明日の気持ち奏でる音色に期待して

待ち合わせの五分前 メール次第に速くなる

楽譜のなかのキーワード浮かんで消える

楽譜のうえ色鉛筆で丸で囲って さあいよいよ二小節前

ゆうべ約束した通り 噴水の前にいて

東のほう 海に向かって マリンビルの方角

この青い港町に 小さく光る恋 また始まる

いつもの日曜日 いつもの噴水が上がって

水しぶきと七色の虹のなか 新しい音楽が聞こえる

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