EXTRA チャットメール
ミュンヘン国際空港――ドイツ
「あー疲れた!」
そう言うなり見習いシスター、フランチェスカは搭乗ゲート前のベンチにどっかと腰かける。
ポケットから航空券を取り出す。搭乗時刻までまだ少し時間はある。が、アナウンスによれば多少の遅れがあるそうだ。
あまりにも暇なのでしばらく両足をぱたぱたさせると「そうだ!」とスマホを取り出す。
ラインから電話をかけようとして、通話ボタンを押す指を止める。
「いま日本って何時頃なんだろ? ドイツとは時差が7時間だから……あ、でもサマータイムがあるから、えーと……もういいや! メールにしよ」
計算するのが面倒になった見習いシスターはぽちぽちとタッチする。
『オラ! あたしいま、ドイツのミュンヘンにいるの。もう少ししたら他の国に行くつもり』
送信をタッチ。
次のメッセージを考えていると、すぐに既読がついた。アンジローとまいまいとのグループチャットなので既読2と表示されている。
『いまドイツにいるんですね! こっちは夜の9時半です』
『今度はドイツかぁ。お城に興味あるから行ってみたいな』
ふたりからのメッセージを読むと、画像アイコンをタッチしてそこからスクロールしていき、目当ての画像を送信。
『わ、ファンタジーものに出てきそう!』
『これって、たしかシンデレラ城のモデルになってるのよね? 長い名前だったはず……』
『ノイシュヴァンシュタイン城! ルートヴィヒ二世って王様が建てたお城よ。城内は撮影NGだったけど。あ、でもお城の中に洞窟があるのよ! もちろん人工的につくられたものだけどね』
ふたりから驚きを表すスタンプ。その反応に見習いシスターがくすっと笑う。
『あと、ヴィースの巡礼教会も行ったわよ。ここ内装がスゴいから行ってみて!』
『写真はないんですか?』
『残念ながら撮影NGなの』
『でもググれば画像出てくるわよ。前にフランチェスカと京都行ったとき教えてもらったから』
それからベルリンであった出来事を聞かせて、しばしその話で盛りあがった。
その時、搭乗ゲートにキャビンアテンダントがマイクを手に英語でアナウンスを。
「お待たせ致しました。ザグレブ行きLHX64便の出発の準備が整いました。今からゲートを開放しますので、航空券とパスポートの用意をお願いします」
続々と乗客が列をなしたので、チャットでの会話を打ち切ることにした。
『ごめん! 搭乗ゲートが開いたから、もう行かないと!』
『いってらっしゃい』
『今度はどこに行くの?』
舞の質問にすばやくぽちぽちとレス。
『クロアチアよ!』
次話に続く。
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