第29話 HAPPY EASTER!②
「……は?」
「ですから、イースターということでフランチェスカさんに
「冗談じゃないわよ。なんであたしがそんなめんどくさいことしなきゃいけないわけ?」
幼稚園でイースターを終えた明後日の土曜日、聖ミカエル教会の礼拝堂にて安藤の提案にフランチェスカはそっぽを向く。
「だいいち、そんなので遊ぶほど子どもじゃないわよ」
「まあまあ。もちろん普通に探したらつまらないので、それなりに趣向はこらしてあるんですよ」
だが、目の前の見習いシスターはふーんと興味なさそうだ。
しかたない。奥の手だ。
「実は景品用意してありまして……新作のRPGなんですよ。しかも名作のリメイクなんです」
「へ、へぇ」
もうひと押し。
「でもフランチェスカさん乗り気じゃないみたいですから」
「ちょ、ちょっと待って! やらないとは言ってないでしょ!? やるわよ! やればいいんでしょ!」
かかった!
「じゃあルール説明しますね」と取り出したのは卵の形をしたカプセルだ。ガチャガチャでよくあるカプセルトイの一種である。
「開けてみてください」と言われ、回して開けると小さく畳まれた紙が入っていた。
取り出して広げる。
『親の隣は人。では中と小の間は?』
「なによこれ?」
「なぞなぞですよ。こういう風に次の行き先を示した紙が入ってるんです。見つけたらメモの指示に従ってくださいね」
「めんどくさいことするわね……」
「あれ? フランチェスカさん解けないんですか?」
ぴくりと頬が引きつる。
「言ったわね! やってやろうじゃないの! というかアンジローのくせに生意気よ!」
意気込んだはいいものの、答えがわからない。むむむとうなりながら紙を睨む――と、頭の中で閃いた。
「
「正解! 薬屋といったら?」
「ドラッグストア! そこに卵があるのね!」
颯爽と礼拝堂を出ようとする彼女の背中に「スマホで調べるのはダメですからね!」と釘を刺すと、ビクッと立ち止まる。
図星だったようだ。
「あんたのような勘の良い
「俺、フランチェスカさんとそんな年違わないと思いますけど!?」
「ま、いいわ。絶対に手に入れてやるわよ!」
そう意気込んで礼拝堂を出、ぱたんと扉が閉まると安藤ははじめてほっと息をついた。
作戦の第一段階は成功と。スマホを取り出してラインを開く。
二度目の呼び出し音で相手が出た。
「はい」
「神代さん、いまフランチェスカさんが出ました。準備お願いします」
「OK」
通話を終了してスマホをポケットにしまう。長椅子の裏に隠しておいた袋を持って、くるりと踵を返す。
向かう先は教会の隣の居住スペースへと通じるドアだ。
ドアを開けてキッチン兼ダイニングに入る。キッチンのシンクの空きスペースに袋の中身を出して確認を。
「……よし!」
ここから作戦は第二フェーズへと移行だ。
③に続く。
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