第89話 サヤの毛づくろい
「あとは、こっちも綺麗にしてやらねえとな」
「っ!! い、いきなりそこを触らないでください」
サヤは今度はポメルの長くふさふさの毛を手に取っていた。
「ほう、ここはそんなに敏感なのか」
意地悪く笑うサヤは、そのしなやかな指先で尻尾の表面をなぞるように滑らせた。
「あ、やだ、ちょっとサヤさん」
ポメルはぞくぞくと体を震わせると、その感覚が尻尾の先まで抜けるようにして硬直すると、すぐに脱力してしまった。
「ん――、も、もうちょっと優しく触ってください」
ポメルの顔が少し紅潮している。
「優しくならいいのか?」
サヤがまたしてもにやりと笑う。
「そ、そういう意味じゃないです。それよりも、毛並を整えてくれるんじゃなかったんですか?」
そうだった、そうだった、とサヤのわざとらしい返事に、ポメルは物言いたげな視線を向けた。
「しかし、これだけ毛量が多いとあたしの持ってる櫛じゃだめだな。ちょっと待ってな」
部屋の中をごそごそと何やらを探しているサヤを待ちながら考えていた。
自分に姉がいたならこんな感じだったのだろうか。
さきほど髪を梳かしてもらっているときのことを思い出してポメルは胸の奥がぽうっと温かくなるのを感じた。
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