第79話 もうじゃ

「ねえねえ、わんわんのお姉ちゃんは私と一緒にお祈りするんだよね」

「ちがうよ、僕と手を繋いでお祈りするんだよ」

 ポメルはすっかりと子供たちに気に入られて引っ張りだこになっていた。

「みんな、仲良く、ね、ね。ほら、泣かないで」

 あくせくと子供たちを宥める様子をサヤは面白い見せ物でも見るように眺めていた。

「ちょっと、サヤさんも笑ってないで手伝ってくださいよ」

 サヤは聞こえないフリで腕を組んで入口傍の壁にもたれかかった。

 先ほどの聖堂のように豪奢な建物ではない、孤児院の中にある小さなお祈りのための部屋である。

 子供たちばかりとはいえ部屋は随分とにぎわっていた。

「申し訳ありません、『ハーフ』の方は子供たちには珍しいようでして」

一瞬、何を言っているかと考えて、ああ、と察したようにうなずいた。

「昔は森を越えた向こうに住んでいるということでこのあたりの村々と交流があったんですが、最近は――」

「あまり歓迎されていない様子だな」

「ええ、かつて恐ろしい事件があり、そのせいで――」

「『もうじゃ』だよ!」

 二人の会話に割って入るように男の子の声がした。

 両手を大きく上に上げて、襲いかかるような格好をしている。

 何かしらの怪物を表現しているようだ。

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