第32話 サヤ、ポメルから状況を聞く

「どこいってたんですか! 全然戻ってこないし、領主様のあいさつは終わってしまいましたよ」

 ようやく戻ってきたサヤを見つけると、ポメルは飛びかかるようにして駆け寄った。

 

 サヤの傍までくるとすんすんと鼻を鳴らす。

「酒臭いですよ」

「だから、酒が切れたって言ったろ」

 物言いたげなポメルの視線をものともせず、しれっと言ってのける。


「で、そっちの様子は?」

「明日、王国からの援軍と合流でき次第、南へと進軍するようです。そちらにオニの巣があるということらしくて。それまでは各自で準備をしておくように、とのことでした。支度金としてこんなにいただけましたよ」

 ポメルが領内の通貨の入った布袋を広げて見せる。


 サヤがそれをかすめ取るより先に、ポメルはふところへとそれを仕舞い込んだ。

「ダ・メ・で・す! それにーー」


まわりをはばかるように声を潜めた。


「オニ討伐よりも先に私たちにはやるべきことがあるんですから」

 


「ああ、そうだな」

 サヤがくいと目配せをした。

 言っている傍から、蓮司が歩いてきていた。

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