決着

石の箱の数十メートル上に、巨大な岩が進の能力によって出現した


岩が箱に落ちると岩の砕ける轟音が平原に響き渡る


進の奴、女転生者殺したらどうするつもりなんだ?

後先考えない奴じゃあ無いと思うが……


どう考えても死んだだろ。

箱は壊れ、岩も砕け、中に入ってた奴は一溜まりも無いだろうし

さらばだ雅……


「ふぅ……」


運が良ければ死んでは無いと思うが、最低でも戦闘不能だろう

空腹で倒れそう。勝利のサンドウィッチは格別!


「勝負ありでいいだろ」


「もう少し待って見ましょう」


もう、数十分経ったが雅は出てこない


「決着で良いのか? 」


「そうですね……」


「ちょっと待って! 」


「雅ちゃん! ふふっ、わかっていましたよ、

雅ちゃんはこの程度で終わらないって事は!! 」


「当たり前でしょ! 寒いから中で暖まってただけよ」


寒い? 今日はけっこう暑いと思うんだが?


あいつ寒がりだったか? いや、そもそもおかしい

なんであいつはずっと厚着なんだ? なぜ手袋を着けている?


「進の奴、考え込んでるな」


「では、再開致しましょう」


「くそっ! 考えをまとめる時間が無い」


おそらく進は勘づき始めている。

私の弱点もとい代償を……

考えをまとめられる前に倒さなきゃ!


「全てを焼き尽くす業火よ……、全てを切り裂く烈風よ……」


「〈創造クリエイティブ〉石の板! 」


「ちっ! 」


まともに詠唱はできないか……なら


「ウォーターボム! 」


「うわ、濡れた。えっ? 終わり? ショボくね? 」


水が弾けて終わり? まじでショボい……


「ウォーターウィンド! 」


「水しぶき! 」


考えをまとめられないように間髪入れずに!


丁度いい~、涼し~、暑い日には水遊びだよな~


多分、雅の能力の代償は体温の低下だ

なら、長期戦になれば、雅は今より弱体化する。


じっくり……じっくり……やってやる。


のも、良いんだが、それじゃあ勝った気がしない。

真正面から堂々と! 男なら真正面から勝利したい!


てか、なんで俺は距離を取ってるんだ?

あいつの攻撃方法は遠距離からの魔法ってわかったのに、

遠距離戦じゃ分が悪いのは歴然。


バカだったな……もっと早く気づかないなんて……


「〈創造クリエイティブ〉石の剣、石の盾」


武器を変えた? 槍を捨てて剣と盾? 接近してくるつもりね。

なら、こっちも


「全てを飲み込む大地よ……」


詠唱が終わる前に切り込む!!


「危な! 」


「逃がすか! 」


「フラッシュ! 」


「まぶしっ! 目が! 目が!! 」


「ストーンウィンド! 」


ただの小石投げられてるだけ!


「ウィンド! 」


こいつ自分に向かって風魔法を使って

足を速くしてやる!


「全てを切り裂く烈風よ……」


「盾も剣も投げれば遠距離攻撃ができんだよ! 」


「危ないっ! 」


「〈創造クリエイティブ〉石の槍! 足りない! 1本じゃ足りない! 」


「ウィンドウォール! 」


「〈創造クリエイティブ〉石の箱! 」


「またこの箱! 」


今度のはやけに狭いし、身動きが取れない……

しかも謎の穴が1つ空いてるわ。

何をしようと言うの?


「やぁぁぁぁ!!! 」


「ウィンドウォール!! 」


1つ穴を空けたのはこれをやるためだ!

お前の喉に!! 槍を突き刺すためだ!!


「勝負ありだな。」


「雅、俺の勝ちだ」


「そうとも限らないでしょ」


「はぁ? 何言ってんだ? 」


「ふふっ……」


「だけど進忘れてない……? 」


「なにをだ? 」


「この勝負の勝利条件は【相手に参った】って、言わせた方の勝ち」


「だからなんだ? 参ったって言ってないからまだ負けてないって事か? 」


「そうよ、しかもまだ私は本気を出してない」


「何言ってんだ? 寝言は寝て言ってろ」


「なら良いわよ見せてあげる私の本気! 〈魔法領域マジックフィールド〉」


なんかデジャブを感じる……


なんだ? 周りが一気にカラフルになったぞ?


どっかで見た気がするんだけど、どこだっけ?


「ハッ! 」


石の箱が一気に砕けた!? てか、雅の髪逆立ってね?


「言ったでしょ? まだ本気出して無いって」


「ハッタリじゃ無かったっぽいな」


「いま参ったって言えば怪我はしなくて済むわよ」


「何言ってんだ? 俺だってまだ本気を出してねぇぞ」


まぁハッタリだけどな


「へぇ~じゃあ残念ね、本気を出す前に倒されちゃうんだから!

ライトニングエクスプロージョン! 」


「うわぁぁぁぁ!!! 」


直撃ね! だけど念には念を込めて!


「フレアタイフーン! グラウンドファイヤー!

サンダーエクスプロージョン! アイスメテオ! デモンズスピアー!!

これだけやればさすがにやったでしょ……。」


あっ! 忘れてた! お爺さんに転生者は殺しちゃダメって

言われてたんだった! つい進が相手だからやり過ぎちゃった


「勝負ありですね回復して差し上げましょう。

まぁ生きていればですけどね」


「おい、まだ勝負はついてないぞ」


「なにを言ってるんですか? 嵐牙くんは? 」


「進がまだ【参った】って言ってないだろ」


「う~んでも多分ですけど倉本さん運が良くて

重傷、悪くて死ですよ? 」


「お前はわかってない……、倉本進って男をまるで理解してない。」


「この状況を見てまだそんなことが言えるんですか? 」


「倉本進って男はな、お前らが思ってるほどやわじゃない。」


そうだろ進! お前がこんな事で負けるはずがねぇ! どうせまだ

なんか策があるんだろ? 今に地面の中から出てくるんだろ!?


「男の子同士の友情ですね。素敵ですね。ですが、決着です。

そもそも、雅ちゃんの魔法をあれだけ受けて生きていたら奇跡です」


「まだ進が【参った】って言ってないだろ、決着には早いんじゃないか」


「嵐牙くん……【参った】と言っていなくとも戦闘不能なら、それで決着です。」


「まだ進が戦闘不能かどうかなんて分からないだろ」


「確認せずともわかります、あの威力の魔法ですよ? それを何発も

撃ち込まれているんです。そのうち1発は直撃。閉じ込められた中で撃って、

進くんの石の箱にヒビが入ったんですよ? その魔法を直撃です。

恐らく見るに堪えない姿になっているはずです。」


「だが、戦闘不能かどうかは確認が取れないだろ。

待っていれば進が何かするはずだ」


「わかりました。もう少し待ちましょう。」


「楓~もう決着で良いんじゃない? 」


「雅ちゃ~ん、もう少し待っててくださ~い」


「わかったわ~」


まぁどうせ死んじゃってるだろうけどね


あぁ……俺は死ぬんだろうな……息もろくに出来ない。

雅の魔法を直撃して生きてる方が奇跡だ。

残る気力を振り絞って分厚い石の箱で自分を囲んでなんとか防いだが、

さすがに直撃が致命傷だったな……

とうとう目が霞んで来た……。死が近いのかな……死ぬってこんな感じなのか……


ん!? あれ!? 元気だ! なんともない!

てか、なんか煙? が充満してるぞ、なんだこれ?

なんか傷も治ってるし! 力が漲る! 腹が減った!

ひとまず飯を食べよう。腹が減っては戦はできぬ!!


「美味い!!! 」


「今の声は!? まさか! 」


「進……!! 」


「そんな! ありえない!! 私の魔法は確実に進のお腹に直撃したはず! 」


「本当に生きてる! それもあんなに大声を上げられる程に! イキイキと! 」


「しかも美味いって、進何か食べてる? 人との戦闘中にのんきにお食事ですか!

良い度胸じゃない! 」


あいつサンドイッチ食べてるな


いくら食べても食べても、足りない! もっと! もっと!


「進が生きてるなら、追撃あるのみ! ライトニングランス!

ホーリーフレア! フリーズソード! 」


「外が騒がしいな……、砂埃が舞って飯にかかる! 邪魔……すんな……! 」


「何か下から音がする。何かを叩いてる? いや、砕いてる! 」


「食事の邪魔すんじゃねぇー!! 」


「進! 」


あんなに魔法を撃ち込んだのに傷一つ付いてないなんて!


「やっぱり何か策があったんだな!! 」


「嘘でしょ? 雅ちゃんの魔法は直撃したはずです。なのに傷が一つも付いてない」


「俺の食事の邪魔しやがって! 殺してやる! 〈創造クリエイティブ〉石の槍! 」


早い! さっきとは比べものにならない程に!


「ウィンド! 」


だけど、空に逃げればこっちに分がある!


「〈創造クリエイティブ〉石の箱! 」


「そんなのもう見切って……! 」


大きいっ! さっきの二倍はある!


「〈創造クリエイティブ〉石の槍! 」


「サンダーランス! 」


「ふんっ! 」


槍が飛んでくる! 防がなきゃ!


「ウィンドウォール! 」


「そこだーー!! 」


「【参ったわ】」


ウィンドウォールを貫通し雅の腹に突き刺さる一歩手前で手を止めた


「勝負ありです……。」


「やったな! 進!! 」


「飯!! 」


「進~? お~い? 」


「少し待ってろ飯を食べさせてくれ」


「あぁ、わかった。能力を使って腹が相当減ってるだろうからな」


「雅ちゃん! 大丈夫? 怪我は無い!? 」


「大丈夫よ……。楓……」


「雅ちゃん……」


負けた……私が……


「雅ちゃん……雅ちゃんは頑張りました。

力いっぱい戦って、良く頑張りました。」


「うぅ……楓~~……!! 私! 私! 悔しいよ! 」


「よしよし。お疲れ様です」


「進? 進? 進さ~ん?? 」


「どうされたんですか? 」


「進が飯食べたら直ぐに寝た」


「お疲れだったのでしょう」


「そうだな。〈分身創造アバタークリエイト〉木羽嵐牙」


「すごい! 嵐牙くんが二人に! 」


「これが俺の能力だ。隠す必要もないしな。これからの仲間だろ? 」


「そうですね、私の能力もお見せします。汝に我が能力の加護を……〈付与エンチャント〉 」


なんか体が緑色に光ってるな


「自分に跳躍の付与エンチャントをしました。ほら! 凄いでしょ? 」


「おぉ! めっちゃ飛ぶ! 」


落ち着け嵐牙! ダメだ! 相手がスカートだからって! だけど……

本能だから! そう本能! イエス本能!


「嵐牙くん? スカートの中を覗こうとしてましたね? 」


「いや~あの~その~、そう! 空を見上げていた。美しい白色! 」


「ふふっ、嵐牙くんダメですよ。」


「はい」


「私は気にしないですけど、そういうのを嫌がる女の子もいるんです。

人を選んでくださいね。」


「つまり、お前のは良いと? 」


「ダメですよ。そういうのは恋人になってからするんです」


「良いよなお前は、容姿端麗で」


「女の子を褒める時は、可愛いって言うんですよ」


「すぅ……すぅ……」


「雅ちゃんも疲れて寝ちゃってますし。宿まで案内お願いできますか? 」


「あぁ、わかった。てか、もう片方も俺が運ぶぞ? 」


「ダメです。雅ちゃんは私がおんぶします」


「そうか」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺にこの能力はきついって! 桜巻かし @0803ky

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ