異世界ミステリは貴族令嬢の助手と共に

草詩

第00話「プロローグ」

 始まりの十人。偉大なる魔導師。灯し火の守り手。救世の英雄。魔線の開拓者。鉄戦の将。海流の申し子。要塞の主。大地の母。大空の眼。遠見の遊撃手。

 文明神エリク。天竜神レンド。影の王。記憶の祠。


 この地には数々の伝説がある。そんな伝説のうち、三つもの逸話が集えば、それだけ事態が大きくなるのは必然だったのかもしれない。


 さて、収穫祭に起きたあの大事件を語ろうとするならば。夏の終わりから始まった一連の事件について話さなければならないだろう。

 もちろん、君に時間がないというのなら。当事者として深く関わった僕から、その全貌を説明するというのは簡単な事ではある。


 しかし物事をどう感じ、そこから何かを繋げていく追体験について考えれば。僕の方から理路整然と資料の如く情報を渡されるよりは、各事件についてフラットな状態で見ていく方が良い。


――そう。彼女が助手として僕の元に来てから、居なくなるまでの事件についてだ。

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