第14話 新居へお引っ越し

 妻たちと相談した結果、新居の場所は村から少し離れた場所にある小高い丘の上に決まった。俺もその案に賛成し、只今絶賛新居を建築中なのである。


「どうせならバカデカい屋敷にすっかな~。現世みたいな土地購入とか必要ないし。異世界さまさまだな。さて……はじめるか」


 俺は小高い丘に土魔法でまず屋敷の基礎を作る。魔法はイメージ力次第で使い勝手がまるで別物になる。俺が今使っているのは最早魔法ではない。錬金術といった方が近いだろう。

 俺は近くの火山から火山灰を大量に確保し、それに魔物の骨を砕いた物、細かくした砂利、そしてそれに水を混ぜ簡易なコンクリートを産み出した。


「近くに火山があるって事はもしかして……あるのか?」


 その考えに至った俺は土魔法で丘を深く掘り進めてみた。


「……くるっ!」


 地盤に穴が開き、そこから大量の温泉が湧き出した。


「ここは丘じゃなかったんだな。あの山と繋がってたのか。もうけもうけ」


 俺はすぐ様鉄の剣を火魔法で溶かし、時空魔法で空中に浮かべた。そしてそのまま熱しつつ形を風魔法で整え、パイプとバルブを精製した。作ったバルブ付きパイプを穴に挿し込み、タンクにつなぐ。タンクも同時に作り裏庭となる部分に設置、そこから浴室にパイプを繋げるようにし、今は放置しておく。


「ふふふふっ……まさか温泉が出るとはなぁ……。あ、妊婦に温泉は不味いな。普通の風呂も作っておこう」


 それから基礎を固め鉄筋を組む。溶接も魔法があれば楽なものだ。大量に鉄が必要になったので先日行ったダンジョンに向かい、鉄製品を大量に確保してきた。型枠に使う木材は森にたんまりある。ありがたくいただくとしよう。


 これらを繰り返す事数ヶ月、ようやく丘の上に俺達家族の新居が完成した。新居は鉄筋コンクリート製の大豪邸、さらに外壁を建て、入り口には鉄製の門をこしらえた。中庭は中規模な家庭菜園ができるくらい広くし、最初からあった芝生を生かした自然たっぷりな庭に。

 小高い丘は王都の城もかすむような立派な建物が出来上がるのだった。ちなみに城は見た事はないから想像に過ぎないが。

 俺は内装にもこだわりを持った。隣町の闇商人から貴族や王族が使うような装飾品や家具を買い漁り、それぞれ配置した。

 屋敷は五階建て、入り口から入ると大きな階段があり、それが左右に伸びる用なイメージだ。

 一階にはキッチン、食堂、大浴場に応接間、二階から上には俺達の執務室や妻たちの部屋を用意した。それでも部屋数はまだまだある。そこはいずれ増えるかもしれない家族の為に残しておくとしよう。


「……やっぱりクリエイト系スキル欲しいな。あればこんな苦労しなくて済むのにな。だが……それ以上に面倒事に巻き込まれるのも嫌だしなぁ……。ま、とりあえずこれで完成でいいだろう。これ以上増やすとしたら後は丘を下った場所に……だな。さて、可愛い妻たちを迎えに行くとしますか」


 俺は村に戻り家に帰った。


「ただいま、出来たぞみんな」

「お帰り、リクト」


 俺をかなりお腹が大きくなった母が迎えてくれた。あれから結構な月日が経った。母の出産が近いと思われる。


「できたの? 新居。楽しみね~」


 同じくらいの時期に孕んだ他人妻のお腹も膨らんでいた。


「期待以上の出来栄えかな」


 騎士団長や冒険者達はまだそれほどでもないが、お腹は重そうにしていた。加えてあの騎士にも最近アレがきたので滅茶苦茶ヤりまくって孕ませてやった。


「新居での結婚生活に子育てか……。私は今女に産まれて初めて良かったと思っているよ、リクト……」

「私達こんなに幸せで良いのかなぁ~」

「ふふっ、リクトがいなかったら私達は死んでたかもしれないし……。ありがとう、リクト」

「まさかこんなに妻がいるなんてね。ちゃんとみんな幸せに出来るの? リクト?」


 俺はみんなにこう言った。


「勿論、さあ……ここの荷物を片付けたら新居に引っ越しだ。新しい場所でさらなる幸せな生活に浸ろうじゃないか!」

「「「「はいっ!」」」」


 俺は大事な荷物を片っ端から【無限収納】に放り込み、最近運動不足的な妻たちと並んで新居までゆっくりと歩いた。

 母が驚いた顔で俺に問い掛けてきた。


「リクト、あれ……なに?」

「え? やだな母さん。俺達の家だよ」


 騎士団長と騎士も驚きを隠せなかった。


「な、なんだ……あれは!?」

「お、王城より……立派な建物ですぅっ!?」

「そうなの? 俺城見たことなくてさ」


 冒険者達はあまりの豪華さに萎縮していた。これで内装を見たら失神するんじゃないかな。


「何もなかった丘に数ヶ月で城が!? リクト……これ全部一人で?」

「まぁね。あ、でも家具や装飾品は買ったかな? 知り合いに商人がいてさ。そこから仕入れたんだ」

「お、お金足りてます?」

「まだまだあるよ。この前のダンジョンあったでしょ? あそこの最下層でたっぷり稼いできたんだよ」

「最下層って……下層すらS級の冒険者が数人で向かう場所ですよ!? リクトってそんなに強かったのですか?」

「へぇ~。楽勝過ぎてわからなかったよ。確かに……最下層には俺以外誰もいなかったらなぁ~。敵も竜種とか悪魔みたいな奴らばっかりでさぁ~」

「は……ははは……凄すぎてわかんない……」


 丘を上がり門を開く。


「さあ、新しい生活の幕開けだ。目一杯人生を楽しもう!」


 こうして、俺達家族は新しい場所でさらなる幸せと怠惰な生活を求めての一歩を踏み出したのであった。

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