灰の旅人

棘 慧

独白

独白

 俺はいま、考え続けている。


 腕を振り、息を切らしながら、お前のことを。


 この世には骨を噛むような、どうしようもないうつろさがあって、俺たちはいつも選択を迫られる。


 お前もその虚ろさを見てきたはずだ。俺と共に。

 お前はもう、何も知らない子供ではない。


 それでもお前は、俺をまっすぐに見つめた。あの透き通ったまなこで。


 どうすればお前のようになれる?

 お前はいま、何を考えている?


 いま、俺がこうやって息を切らしていることは、お前が血を吐くような思いで選択したものを、踏みにじるようなものなのかもしれない。


 だが、あの日、俺は聞いてしまった。

 あの日のお前の顔が目に浮かぶ。


 あれは、心から滲み出た、まことの言葉だったのだろう?




 だから俺はいま、駆けている。

 だから俺はいま、静かに涙を流している……。


 

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