ロシエント アンヘル

卯月目

プロローグ





 高校卒業後、魔力を体内に宿さずして産まれ育った俺は、地方の障がい者雇用先の事務職に就いた。しかし、魔術を何一つ扱えない俺は、同僚よりもこなせる仕事の数が限られていた。社内では孤立していき、果てしない劣等感に駆られて毎日泣きじゃくり、気がつけばとっくに精神は病んでいて、いつの日か会社を自己退職した。


 この世界は実は別世界から侵略を受けていて、上層部がそれを隠蔽しながら戦闘兵が闘っている。俺は、この途方もなく非現実的な陰謀論に期待し、その侵略が終わる日を待ち望んでいた。この世界が壊れてしまえば、誰もが同じ絶望に突き落とされる。果てしない人生の落第生に選ばれた俺の劣等感は、そのレベルにまで達しなければ払拭されないと、半ば本気で考えていた。


 二十五歳の夏の始まり、俺は数年ぶりに手に職をつけた。怪物と闘い続ける魔術戦闘兵の少女たちと、魔力なしの人生落ちこぼれ無職。その出会いはなかなかに摩訶不思議で、その日常はなかなかに残酷で、その終幕はなかなかに悲惨なものだった。

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