第八話 大きなミス
自室のベッドで目を覚ました。
メイファさんが運んでくれたようだ。
まだ少し頭が重い……。
少しの間、意識を失っていたけど、ただ酔っぱらっている状態だったみたいで大事にはならなかったみたい。昼食の時間はもう過ぎてる。
メイファさんは昼食をすでに摂ったようだ。
私はまだ少し気持ち悪いので、食べたら吐きそうだから昼食は諦めた。
「【ステ……タス】」
===========
名前 : 花咲 藻子
レベル : 1
クラス : 人間
年齢 : 13
性別 : 女
状態 : 【呪い】【発育障害】【隻眼】【酩酊】【打撲】
職業 : 無し
称号:無し
HP : 8 / 10
SP : 3 / 3
力 : 1
体力 : 1
器用 : 1
速さ : 1
知性 : 1
運 : -65535
スキル : 【鑑定】(【呪】【禁忌】【アカシャ禁書3】 )hidden
【調合】<new!【調理】<new!
===========
あっ毒はちゃんと取れてるね。
あと酩酊が追加されてた。酔っ払いってことか。
そして調合と調理スキルがふえてるっ!
これは後で楽になる予感……。
リコに聞いた話だと、生産系のスキルは良品が自動的にできるのではなくて、手際や慣れ具合が良くなって、結果的に良いものが作れるようになるっていう事みたい。
だから作り方を間違えればやっぱりゴミしかできない。
さて……。
「……午後……なにしよ?」
「そういえば、モコ様はまだ13歳でしたね?」
「……は……い」
こくりと頷く。私は早生まれなのでまだ14歳になってない。
「でしたらまだ生活魔術を覚える余地がありますよ?すぐできますので午後はそれをやってみますか?」
「……お……ね……がい……します」
「じゃあ、簡単なので私がお教えしますね」
軽く頷く。
生活魔術とは、洗浄、灯、冷、土掘り、風で切るという5種類がありまとめて生活魔術というそうだ。
この世界では13歳までなら誰でも覚えることが出来る。
SPもあまり使わずにできるそうなので、私でも大丈夫だって。
にぎにぎ……
「まずは魔力を感じて動かす練習をしましょう。頭の中で体の中に流れている暖かさを感じてください」
メイファさんは私の手をつかんで正面に座ってる。
うわっこれ恋人つなぎってやつだ。それに顔が近い近い……。
手を握ってじっと見つめあっている。彼女の瞳は少し潤んでいるように感じるし、頬も少し上気しているようにほんのり赤い。
初めてしたけど恥ずかしい……。なにこれ。
……す……はぁ
……す……はぁ
……す……はぁ
しん、とした部屋に、かすかな吐息が聞こえる。
普段は聞こえない程度の吐息だけれど、二人とも見つめあって集中しているから聞き取れる。感じ取れる。
……じわじわ何か感じる。
私はすぐに魔力の動きを理解した。
そして……
ものの2時間程度で5種類の生活魔術を使うことが出来るようになった。
「すごいですねっ!モコ様は魔力操作、変換がお得意のようですよっ!」
「……あり……がと……でも……魔力……ない」
「いつかレベルが上がって覚えたら、きっと使えます。諦めないでくださいね」
「……はい」
「【ステ……タス】」
===========
名前 : 花咲 藻子
レベル : 1
クラス : 人間
年齢 : 13
性別 : 女
状態 : 【呪い】【発育障害】【隻眼】【打撲】
職業 : 無し
称号:無し
HP : 10 / 10
SP : 2 / 3
力 : 1
体力 : 1
器用 : 1
速さ : 1
知性 : 1
運 : -65535
スキル : 【鑑定】(【呪】【禁忌】【アカシャ禁書3】 )hidden
【調合】【調理】【生活魔術】<new!
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やったね生活魔術ゲット!酩酊も治ったみたいだ。
メイファさんには本当にお世話になりっぱなしだね。
お礼に何かできることがあればいいんだけど……。
そうだ。
昨日の夕飯は喜んでたので、別の料理でお礼をしようかな?
よっし、午後はまだ時間あるし、早めに食堂にいって何か作れる献立を考えようっと。
私はのっそのっそと食堂を目指して歩いていた。
食堂に行く途中の中庭でクラスメイト達が談笑しているのが見えた。
私が歩いている位置から距離があったので、何を話しているかは聞こえない。
けれど私のほうを指さして、笑って何か言ってる。
男子も混ざっていて、何か言い争いをしている。
嫌な予感はするけど、無視するしか選択肢がない。
のっそのっそ……
のっそのっそ……
そのままのっそのっそと歩いてると、何か威圧感?ピリッとした感覚がした。
「……?」
と顔を上げると――――
ゴオオオオオオオオーーーーーーーーー!
「っ!!!!」
ファイアボールがこちらに向かって来てた。
咄嗟に避けようとしたけど、トロい私じゃ間に合いそうもない。
ドーーーーーン!
「モコ様!!!!!」
少し離れたところでメイファが叫んでいたが遅かったようだ。
「っ……あづ……い」
私は避けきれずに左足に大やけどを負って、吹き飛ばされてしまったようだ。
左足からはものすごい激痛がした。それから肉が焼ける臭いにおいがした。
ぶすぶすっとまだ火種が残ってるように、焦げたところから煙が上がっている。
「ちょっ!?あんた何してるし!!!!」
「あたし、わるくない!あいつが生意気にも訓練に参加しないのが悪い!」
「そうそう彼女は悪くない。あの最弱のやつが避けないのが悪いのさ!」
「お、おい!いくら何でもそれは……っ!」
彼女たちは自分の魔術がここまで人体にダメージを与える力を持ってることを認識してなかったようだ。
悪ふざけの延長程度の軽い気持ちだった。罪悪感を拭うように言い訳を重ねていた。
自分たちの中に答えがないので、最終的に全て私へ押し付ける。
それでも肯定派と否定派に分かれ、言い争いをしているようだった。
「モコ様ぁ!!!!」
メイファさんが近寄ってきて、抱きかかえてくれる。
「……だい……じょぶ」
私はあまり心配させないように、笑って見せた。本当はめっちゃくちゃ痛いし熱い。
メイファさんは私をお姫様抱っこしてくれた。
「すぐに治療室へ行きましょう!!」
メイファはすごい勢いで私を抱えて走った。
少し乱暴に抱えられた私はその振動で酔ってきた……。
おっおっおっ……吐く吐く……
医療室に着いた頃には完全に目が回っていた。
「グラン先生!治療をお願いしますっ!」
「急患か!?そこに寝かせろ!」
グラン先生は強面のおじいちゃん先生。身体が大きいマッスルおじいちゃんだった。
おじいちゃんでも男は男。やっぱり恐怖がたった。
そして揺さぶられてきたのでもう限界だった。
「オボロロロローロロロロッロロ……」
初対面の人の前で思いっきり吐いてしまった。
「気にしなさんな、みんな出してしまいなさい!とにかく、足のやけどが酷いからすぐ治療するぞい!」
『精霊が宿した大地よ。風よ。英霊と共に清らかな祝福を分け与え給え。【ヒール3!!!】』
「よっしエクストラポーションをかけろっ!!」
「おらぁ!!!!」
え!?
ブウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!
「……ぁぁぁぁぁあづ……!!あっ」
しょしょわわわわわぁぁ……。
め、めちゃくちゃだ。
グレート〇太みたいな助手がポーションを口に含んで私の足に吹きかけた。
「……よし。そのまま包帯を巻いておけば大丈夫だ」
「……はぁ……はぁ……はぁ……」
私は肩を上下させるほど深く息を切らせていた。
あー死ぬかと思ったよ。
って!私はこの二人の凶悪な顔のおじさん達に恐怖して、さっき漏らしてしまったようだ。
あああああぁぁ……また失敗。
……
「まぁ、俺たちぁ医者だ。そういうのは気にするな」
「キニスルナァ」
グレート〇太はなぜか片言だ。
でもあんな魔術を前にして、生き残れてよかったぁ……。
イジメの一撃も異世界だとシャレにならないね。
「メイファ、後はよろしく」
「はっ!グラン先生ありがとうございました」
「……あり……がとう……ございます」
メイファさんが漏らした後始末をしてくれる。
とりあえず着替えたい。吐きかけられた聖水と、私の胃液とおしっこでびちょびちょどろどろだ。
ドドドドドーーーーバタン!
そんな中、見たこともない兵士が医療室に入ってきた。
「モコ=ハナサキ!査問委員会から緊急の出頭命令が来ている。直ちに同行せよ」
「っな!彼女は治療中です。後日にしなさい!」
「命令は絶対です。出頭しない場合はその場で処刑される!」
「横暴なっ!いくら何でもこれは……まさかっ!?勅命ですか?」
「そうだ!さぁ立て!モコ=ハナサキ!」
「……わか……りまし……た……ぃっ!」
足の痛みはまだあるので、のっそのっそとゆっくりにしか歩けない。
「ええい早くしないかっ!」
ドカッ!!!ゴッ!
イラついた兵士は私を蹴り飛ばした。
「……っっ!!!!」
蹴りの勢いで突き飛ばされた私は、そのまま頭を床に打ち付けて倒れた。
そしてビクビクと勝手に身体が跳ね、私はそのまま動かなくなった。
「きっさまぁああああ!!!!!!!!!!!よくもモコ様を!!!!!!」
ザシュ!!キンッ!ズバッ!!!!
その場ですごい剣幕のメイファと兵士の戦闘が始まったようだ。
視界がぼやけて見えないけど、音で分かった。
その音を聴きながら、私はブラックアウトした。
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