第四話 お城の図書室と食堂1
「……ほ……わぁ」
っと、まぬけな声が出た。
やってきた図書室のその仰々しさに驚いた。
格式ある扉や、本棚、インテリアが見られる。ガラスからちょうどいい日差しが舞い込んで、読書にはもってこいだ。それに魔道具による間接照明があるので、読書するには十分な明るさがある。
ただその様式美に反して蔵所数は多くない。歴史・法律・科学・魔術・教義・伝説に分類されている。いわゆる最古の時代の分類法のようだ。
そして何を隠そう!お金のない私は立ち読みスキルを身に着けていたので速読は得意なのだ。お城に居られるのは2日しかないのだから、出来るだけ多くの知識を得ておかないとね。
でもみんな日本語を普通に使っているようだったけど、書かれている文字は日本語じゃなかった。すこし簡単な薄い本で練習すれば理解できる程度に日本語の表記システムに似ていた。建国が日本人だったからというのもあるかもね。
とりあえず私はこの国の生い立ち歴史関連から見ていくことにした。
この国は出来てから、もう3000年以上経っている。かなり古い歴史があり、法体系もかなり充実しているようだ。軍事から経済、宗教から奴隷の扱いまで法律で決まってるのだ。日本と同じかそれ以上の長い歴史があるってことだよね。なのに物や食事は発展していないのが気になる。
気になって調べてみると、道具、文化、科学、つまり調合や薬学などについては本当に発展していないようだ。
ファンタジー小説に出てくるようなポーションですら種類が少ない。
今のところポーション(弱)(中)(強) 、SPポーション、毒消しポーションしかない。エクストラポーションというのもあるけど、聖水の別名でポーションじゃないらしい。それと人によっては副作用が強く出ることもあることから戦闘中などには使えないそうだ。魔術が使えない生活はかなり困窮すると思う。
ちなみのこの世界の魔法のような不思議な力は、魔法ではなく理論体系に基づいた技術ということで魔術という扱いだ。
学術的な理論を学び体内にある魔力(スキルポイント)の消費と地脈エネルギーを併用して使えるんだって。だからほかの土地だと威力や利便性が違うらしい。
生活においても魔術は必須で、生活魔術なるものがあるらしい。平民でも誰でも生活に関する魔術は13歳以下なら覚えることができる。SPを消費して使用することが出来る。例えば火をつけたり、土を掘り返したり、水をだしたり。
攻撃したり、回復したりと専門的な魔術は専門家として勉強した人、適性があった人だけが使用できる。
魔術陣や技術、魔力、魔素、魔石、魔力水などの扱い、生成は魔術学なる専門の学問があるくらいものすごく発展しているようだ。
私のステータスや適性を考えれば、私は使えなそうだけれど、学問として学ぶなら学んでみたいね。でも専門的な内容らしく、ここには関連書物がなかった。
たぶん王立エルグランド貴族学院のほうへ行かないとダメかも。
つぎに食料、料理、文化に関してだ。
木の実やハーブ、果物、薬草など素材そのものを食べる風習がない。
何かしら調理、加熱することが基本らしい。
ただ調理法が魔術の火で炙るだけなので、べちゃべちゃになるか焦げるしかなくとにかく不味い。なので基本的に加熱して、くったくたになったりぱっさぱさになった食材をそのままぶち込んで煮込むだけなのだ。
長い文化がある国なのに調理法が全く研究・進化してないのはおかしいでしょ!
でもみんなそのほとんど味のしないべちょっとした料理を食べてるし宮廷料理も味がほとんどしなかった。元の世界の料理を作ったら味が濃くてたべれないかな?
あとで料理人がいたら聞いてみよう。
つぎは地理かな。
ここは世界のほぼ中央、とみなされている。
建国の話にもあったけど、龍脈がありエネルギーが集中しているため、他国からも羨まれる裕福な中心的な国という位置づけ。
北は山脈があり、常に雪が降っているぐらいで人が立ち入ることが出来ない。そのもっと先には大陸があって国もあるらしい。西と東は海だ。島々があってその先は未開拓らしい。そして南には大森林と山脈があり、そのさらに南にサウスザッハブルグ帝国がある。間に緩衝地帯があるから、建国以来大きい衝突はないんだって。
そんなに仲も良いわけではなくて、陸路は塀で閉ざされており、海路経由での交易はわりと盛んらしい。おさかな食べたい。
教義、宗教関連はラティーナ教という女神ラティーナを絶対神とする宗教が栄えてるみたい。教団は王国内でもかなりの権力と勢力を持っている。
この国だけではなくて、この世界の全土をみてもラティーナ教しかないらしい。
女神の名前を使われていることからも一神教であることは明らかで、絶対神に祈りを捧げ、敬い、崇め奉る。相当な勢力を持っていて強権主義かといえばそうでもなく、広く慈悲を与えるという教義の元、教会には必ず孤児院が設置されており、孤児を養っているそうだ。私はこれにかなり好感をもてた。
元の世界でもお手伝いという名のおこぼれをもらってた身としては、機会があれば手伝いたい。
それから伝説に関する書物は勇者にまつわる伝承ばかりが目立つ。初代王もそうであったように召喚者は自動的に勇者という職業を得るから、必然的にそればかりになるけど結局は初代王がすごいってことを強調されているばかりで重要な書物は一冊に集約された。
召喚の儀式は、使用される地脈のエネルギー量の関係で|30年(・・)に一度しか使用できないみたい。しかもそれだけでは足りないので人身御供が必要だ。
人身御供となるべく資格者は|王家の血(ロイヤルブラッド)が必須だ。今回の召喚にも誰かしら犠牲になったと思う。その犠牲をはらって私みたいな村人より弱い役立たずがくれば、それは怒るよね。
それから魔王復活どころか魔王について記述された書物がない。
うーん?どういうことかな?
一応気に留めておいた方がよさそうだね。大体大まかな王国についてが分かった。
他にも伝聞や物語、吟遊詩人の本など、とにかく私は夢中になって様々な分野の書物を読み続けた。
は~っ。新しい世界の新しい知識はとても興味深く、面白かったぁ。
私はもともと読書や勉強、知識欲が強い。
別にビブリオマニアというわけではなく、金銭的に余裕のない私の唯一といっていい楽しみが、無料で利用できる学校の図書室での読書と勉強だった。
ふひひ、すごく満足できた。
興が乗った私は午前中だけで、13冊ほど読みふけった。なんだか一気に知識が入ってきた所為か、ちょっとポーっとしてる。
「……様っ!…………っコ様!……モコ様!!!!」
え……なになに?ちかい!ちかい!
すぐ近くに迫られ、肩を揺すられてる。それだめぇ!
「……ひぅううううううう!……でちゃうっ」
しょしょわあああああああああああ……
あぁああああ……
また漏らしてしまった。気を失ってはいないから、私頑張った。うん。
メイファさんは昼食のため呼びに来たのだけれど、図書館の床が大惨事になってしまった。この敷物高そう……。
メイファさんは他のメイドを参戦させて手際よく片付けていった。
敷物も交換するらしい……。ですよね。
「さぁ昼食ですよ。着替えてから参りましょう」
「……ごめん……なさい」
私は別のメイド服に着替えて食堂に向かった。他の服がほしい……。
食堂に行く途中の廊下で、他のクラスメイトがちらほら見えた。
今、私はメイド服なのでバカにされるかな?それともメガネがないから、私だと気が付かないでくれるかな?メガネが無いと落ち着かないんです……。主にシモのほうが。
あ、異世界に来てよくおもらしするのはメガネがないから?
……んむぅ。重大な事実に今気が付いた。
ドキドキしながら、トテトテのそのそとメイファさんと二人で歩いていると……。
「あー、え?あれ陰キャの花咲じゃな~い?」
ギクゥッ!なぜか秒殺バレした。
「生きてたんだ~?それよりメイド?メイドで媚び売っちゃう?きんも~!」
「最弱さんはかわいそうね~?そうやっていつもみたいに男の気をひくのかなぁ?あのブサイクビッチは!」
「いやいや、あの子はあーしの奴隷になるのがオチよ!あいつはあーしがもらう!」
「それなーっ!」
私がバカにされるのに慣れたけれど、全国のメイドさんに謝ってほしい。
媚びるのがメイドの仕事じゃないよ。
あと私の中のメイドさんは市原〇子的な何かだ。食堂のテレビで見たし。
それとビッチという罵りは、一時期私に対して言われてた噂だ。
でも私はボッチでありビッチにはほど遠い……。私はブサイクな容姿をしているのでメイド服を着たからってごまかせないと思う。
……じーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……?どうしたの?」
「…………」
一緒にそのグループにいた数名の男子に目を丸くしてガン見された。
すごい顔して睨まれてる。それを周囲の女子が複雑な顔をして、殺気をこちらへ向けた。
うーん。忙しいそうね。
その視線が痛いので、私は顔を伏せてそそくさと先を急いだ。
やっぱり眼鏡がないとダメかも。眼鏡があればなんでもできる。眼鏡があれば世界を蹂躙できる。眼鏡万能説は真理だね。
「……モコ様」
「……ふひひ……いつもの……こと」
何か言いたそうなメイファさん。わかってる。
でも反応するほどひどくなるからね。
とことこ……
のっそのっそ……
とことこ……
のっそのっそ……ぜひ……ぜひ……
私は足が遅いから、メイファさんについていくのが結構きつい。息が切れてきた。言われるがままについていくと、メイファさんはクラスメイトと同様に、バンケットルームに案内するつもりでいたらしい。私は慌ててそれ止めた。
メイド服で来賓待遇じゃあ側仕え達に睨まれそうだ。それにクラスメイト達にも極力会いたくないし。
ということで、広い食堂のほうに案内してもらった。
ここは騎士や側仕えなど、お城の従事者が食事をする場所だ。お城の従事者は基本的に貴族。その他一部の庭師、料理人、清掃は平民で、貴族とは時間をずらしてここで食べるんだって。
今のこの時間は閑散としている。
騎士や側仕えなど貴族の従事者はもう昼食を終えているからね。
いまは平民の昼食の時間。私もそれに混ざって食べようという寸法。ふひひ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます