第4話
頼子は晴くんの視線に気付きながらも、敢えて過敏に反応するのは止めておいた。
――ここで胸元を隠したら、なんか私が過剰に意識してるみたいな感じになっちゃうわよね……。
幸いな事に晴くんの方もずっと彼女の胸を見ていた訳では無かった。
飽きたのか、それとも食欲の方が勝ったのか。ゆっくりと箸を動かしたかと思うと再びうどんを啜り、丼を両手で持ってお汁をごくっと飲んだのだ。
「あー、
「……もう、ホント美味しそうな顔して食べるわね晴くんは」
頼子も思わず微笑む。ただ――晴くんも男の子なんだなぁ――と、なんだかしっとりした気持ちになっていたのだが。
対する晴くんはこう思っていた。
――うーん。最近また見慣れちゃってたけど、頼子ちゃんってやっぱり美人なんだよなぁ。こんなに美人なんだからまた新しい恋人とか作ったら良いのに。
幼い頃からずぅっと彼女の事を見ていた晴くんは、まさしく『見ていられる』事が自分にとっての宝であった。
優しくて安心出来て、そして過去にも何度か自分の心を痺れさせた頼子お姉ちゃん。
初めて衝撃を受けたのは、六歳の頃つまづき足を怪我して
その髪の甘い香りに、何故か心がドキドキした。
そういう衝撃の度に、晴くんは頼子の魅力を一つまた一つと知っていった。しかしその知る事自体が、彼にとっては当たり前のようにもなっていた。
「なんかさ、頼子ちゃんと一緒なだけでご飯も美味しくなるんだよね」
そんな彼の何気ない、強さを持った一言が……頼子の心を、響かせる。
「そうなの? ――可愛いこと言うわね」
頼子の笑みは優しかったが、その眼の奥から別の何かが晴くんをぷすりと射すのであった。
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