頼子と晴くん
神代零児
第1話
今日もそうだ。彼女はその支度の為にパジャマの上を脱ぎ、
頼子は二十二歳で美人だが、大学生時代から付き合っていた男を知ってる女に
「そんなヒドい過去説明描写あるかしら? まったく、主人公の私に対する当たりがキツいわ」
落ち着いた口調で話の構成に文句を付ける頼子。眉根を寄せた表情だが、声を荒げたりしないところから、とても優しくお淑やかな性格なのだと分かる。
「はいはい、埋め合わせにはなってませんからね。それと晴くんが家に来たらもう、地の文さんの相手もしてあげられないわよ」
今は朝九時十分。今日は『十時から遊ぶ』という約束で、頼子はあと三十五分後には彼が来ると想定し動いている。
最新のTVゲームを有する現在一人暮らしの頼子宅は、そこまで知る中学二年男子の彼からすれば相当に魅力的。
『楽しいことの為なら時間なんて気にしないよ!』と、そう元気一杯に言ってきた晴くん自身の明るさが、そんな朝からコースを可能にしたのであった。
強引に、でも無い。頼子は彼のその言葉に『悪くない』という印象を抱いたのだから。
化粧へと取りかかる。十五分もあれば済む。
鏡に映る、ブラの肩紐が食い込む肌のその綺麗さは、彼女にとっては当然のもの。
「……私だって、まだまだ元気は有り余ってるんだからね」
頼子はふと物憂げに呟いた。
それは自分の心にこびり付く
既に甘い
仕方の無い事、であった。
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