線と少年
なるこ葉
第1話
線と少年
ここからここはぼくのエリア。
だから誰も入っちゃだめなの。
いつからだろう、この線がないとぼくはそわそわするんだ。
だれかが入ってくることが怖くて、エリアをどこでも決めちゃう。
おそとでも、おともだちにも、パパにも、ママにも。
だって、おともだちはとつぜん叩いてくるかもしれないし、パパやママはおこるとこわい。
ぼくはずっと線をひいたままだった。
少し大きくなって学校へ行っても線をひいた。
しばらくすると、みんな線よりももっと遠くにいるようになった。
一安心のはずだったのに、なんでこんなにからっぽなの?
心かな?なんだかすーすーして、無性に抱きしめられたくなった。
でも、ぼくがひいた線は消えなくて誰も近づいてこなくなった。
声を出しても誰も聞こえなくて、手を伸ばしても届かなくて。
下を向いて泣いてしまった。
すると、線が消えていくのが見えた。
どうしたの?
笑顔の女の子が目の前にいた。
君、線を消したの?
線なんて、ないよ?
線はぼくにしか見えてなかったらしい。
その日以降、ぼくは線が見えなくなった。
でも、心と心に線が引かれた気がした。
線と少年 なるこ葉 @mandr
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます