線と少年

なるこ葉

第1話

線と少年


ここからここはぼくのエリア。

だから誰も入っちゃだめなの。

いつからだろう、この線がないとぼくはそわそわするんだ。

だれかが入ってくることが怖くて、エリアをどこでも決めちゃう。

おそとでも、おともだちにも、パパにも、ママにも。

だって、おともだちはとつぜん叩いてくるかもしれないし、パパやママはおこるとこわい。

ぼくはずっと線をひいたままだった。

少し大きくなって学校へ行っても線をひいた。

しばらくすると、みんな線よりももっと遠くにいるようになった。

一安心のはずだったのに、なんでこんなにからっぽなの?

心かな?なんだかすーすーして、無性に抱きしめられたくなった。

でも、ぼくがひいた線は消えなくて誰も近づいてこなくなった。

声を出しても誰も聞こえなくて、手を伸ばしても届かなくて。

下を向いて泣いてしまった。

すると、線が消えていくのが見えた。

どうしたの?

笑顔の女の子が目の前にいた。

君、線を消したの?

線なんて、ないよ?

線はぼくにしか見えてなかったらしい。

その日以降、ぼくは線が見えなくなった。

でも、心と心に線が引かれた気がした。

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線と少年 なるこ葉 @mandr

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