第115話 写真機の発明?
陛下が消えておよそ
今度はフィオナがグルーチョ君と一緒に出現した。
「どうしたの、何か妙な雰囲気だけれども」
2人の雰囲気から察するに俺が説明するしかないようだ。
「今しがた陛下が来てさ。だからゴーレムに移動魔法を持たせた事を話しておいた」
「ふーん。それで陛下は何だって?」
フィオナは特に関心がなさそうな感じで尋ねてくる。
「ここのメンバー以外には秘密にしてくれだってさ。ロッサーナ殿下にもだ」
「使用禁止とかはなかったのかな?」
「ここのメンバーが使う分にはいいってさ」
「なら良かったじゃない」
その通り、これで問題は解決なのだ。
うんうんと俺は頷く。
だからテディもナディアさんもそんな目で見ないでくれ。
俺は嘘は言っていないぞ。
「それでオッタ―ビオさんの方はどうだって?」
「魔法水晶を6つ売ってくれたよ。ミニゴーレムの方も作っておいてくれるって。ただ出来ればサンプルで魔法水晶の内容のコピーが欲しいってさ。複写用の魔法水晶も借りて来た」
6つも入手したなら俺以外の全員、ジュリアまで魔法水晶を持たせる事が出来る。
しかし魔法水晶のコピーか。
「移動魔法を複写したらまずいよな」
「その辺は編集するよ」
「そんな事が出来るのか」
「勿論。ただアシュの力を借りる必要はあるけれどね」
うーむ。
「どうすればいいんだ、俺は」
「その辺は後だよ。まずは魔法水晶に今までのゴーレムの内容を複写するところからだね。ちょっと作業するよ。
パフィーちゃんの見た目はグルーチョ君とほぼ同じだ。
元々同型のゴーレムだから仕方ない。
見分けるために肩パーツだけ色を塗ってある。
グルーチョ君はクリーム色、パフィーちゃんはピンク、もう1体のジュディーちゃんはオレンジ色だ。
「パフィー、機能停止。グルーチョ、メンテナンスモード」
フィオナの前にいる2体のゴーレムが静止する。
フィオナはゴーレム2体の後頭部カバーを外し、中から出て来た線を繋げる。
更にパフィーちゃんの後頭部から何やら取り出した。
銀色の金属製で赤い宝石がはめ込まれた六角形で大きめのコインくらいのものだ。
「それが魔法水晶でしょうか」
「そうだよ。メダル部分に複層化した制御用の魔法陣が組み込んであるんだ。このパフィー用の魔法水晶はとりあえず間違えないように自在袋へしまって、かわりに複写用の魔法水晶を出してと」
フィオナは見かけは全く同じ六角形のメダルを自在袋から取りだし、パフィーちゃんの後頭部にセットする。
「グルーチョ、パフィーの魔法水晶にグルーチョの魔法水晶に入力された知識全てを複写せよ」
グルーチョの右腕が軽く上がり、そして下がった。
「これでグルーチョ君の学習内容の全てがこの魔法水晶に複写されるんだ。その後で移動魔法の削除をすればいいよ。
削除方法は簡単。名前を呼んだ後、●●に関する知識を消去せよと命令するだけだよ。この場合はパフィーちゃんに命令する形になるね。指定は魔法の内容を知っているアシュに任せるよ。同じ意味なら多少言葉を換えても通用するからね」
なるほど。
そう思って気付く。
空間操作魔法そのものを消去したらまずいよな。
水魔法と取寄魔法が使えなくなる。
「知識の消去ではなく使用魔法の禁止も大丈夫だよな」
「勿論だよ」
なら問題ない。
生物以外の物を取り寄せる魔法以外禁止にすればいいだろう。
「わかった。今やればいいのか?」
「午後になるかな。複写にはそれなりの時間がかかるからね。いつもは差分だけの作業だから
なるほど。
「ところでミニゴーレムが出来て全員が移動魔法を使えるようになるのはいつ頃でしょうか」
テディはそういった新しいものを欲しがる癖がある。
今回も同じようだ。
「今日の夕方くらいかな。ミニゴーレム自体はすぐ作れるようだしね。複写作業をしてからまた会う約束をしているんだ」
「おいおい早いな」
「普通の人はゼノアとラツィオを気軽に行ったり来たり出来ないからね。行った時にできる限りの事をしようと思うのは当然だよ」
そう言われればその通りだ。
「そう言えば描画魔法もおぼえたのかな」
そう言えば俺が使える魔法では無いから忘れていたな。
「ちょっと待ってくれ。今おぼえさせる」
「あれは特殊な魔法ではなかったでしょうか」
「それにアシュは描画魔法を使えないよね」
勿論使えない。
だが原理はわかっている。
「大丈夫だ。ちょっと待ってくれ。あ、でもグルーチョ君とパフィーちゃんは別の作業中だな」
「ジュディに教えればいいよ。
フィオナがジュディちゃんを取り寄せた。
「ならやるとするか。ジュディ、これから描画魔法について教える。描画魔法とは絵を描く魔法だ。具体的にはジュディから……」
教育を開始する。
◇◇◇
俺は描画魔法の方法論を何とかジュディに教え終わった。
「これで大丈夫な筈だ」
「なら早速試してみようよ。それじゃジュディ、ミランダの席に座って、そこから見たテディの姿を描いて。上半身だけでいい。紙は机の中に入っている。インクは机上のものを使っていいよ」
ジュディちゃんは俺の前から歩いて移動し、ミランダの席へ着座する。
机の中から紙を取り出し、机上のインク壺の栓を抜く。
机に向かっているテディの姿が紙の上に現れた。
インク壺の栓を抜いてから閉じるまで10数える間も無かっただろう。
予想以上の早さだ。
「早さはジュリア以上だね」
「でも見た通りにしか描けないけれどな。そう教えたから。漫画とかは無理だ」
「でもこの魔法だけでも実用になりますわ」
えっ。何故だ。
俺はテディの方を見る。
「肖像画を描かせる専用ゴーレムとしても、肖像画だけじゃなくて記念の画でもいいよね。何処かへ行った記念とか」
テディじゃなくてフィオナが説明してくれた。
気付かなかったな。
でも言われてみれば確かにそうだ。
写真屋というか写真機みたいなものだと思えばいいのか。
考えれば考える程使い道が多そうだ。
「次にオッタービオさんのところへ行くときはミランダさんと一緒に行った方がいいかもしれないですね。お金に関わる事になりそうです」
確かにそうだ。
写真機を発明したと思えばとんでもなくいい儲けになるだろう。
オッタービオさんも商売っ気はなさそうだからな。
ミランダをかませておいた方がいいだろう。
「ところで今の教え方ならカラーでも絵を描ける筈だよね」
「出来る筈だ。でも最低黄色、シアン、マゼンタ、黒と4色のインクが無いと色が完全にならないと思う」
本来は3色でいいのだけれどインクの色は理想的な3原色にはならない。
だから混色用に黒インクもあった方が絶対いい。
この辺は日本のインクジェットプリンタと同じ発想だ。
一応どんなインクでも出来る限り近似させるようには教えているけれどな。
「それも試してみようよ」
仕方ない。
俺も一緒に棚をあさってそれっぽい色のインクを探す作業を開始する。
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