第51話 ちょっと一休み
家に帰っても昼食まで結構時間がある。
翻訳の仕事も前に頑張っておいたので余裕状態。
そこで以前やろうとして忘れていた事を実行に移すことにした。
まずはある調味料系のレシピの本、召喚。
更に足りない部分を補うべく別のレシピの本、召喚。
この2冊の必要部分を読んでダダ―ッと必要部分を訳す。
出来たのは簡単だが時間のかかるレシピだ。
だがある事を試すためにはどうしても必要。
なのでレシピを持ってサラに頼み込む。
「サラ、悪いけれどこれを作ってくれないか。勿論砂糖は高価だし、水飴はカラメルにならないからその辺の工夫は必要だ。でも出来るだけこれに沿った感じで、近い味のものを」
サラはレシピを一読する。
「わかりました。基本的には煮込んで漉して煮込んで保管する感じですね」
「そうだ。出来ればちょっと濃いめに、どろっとした感じで」
「わかりました。昼食や夕食のついでにやっておきます」
「頼む」
サラに任せれば大丈夫だろう。
これで……いや、あとはアレが足りないな。
再びレシピ本を見て翻訳。
「ごめん、これも頼む」
「わかりました。でもこれとさっきのは関係あるんですか?」
「ああ。両方が無いとうまくないんだ」
これで魔法武闘会が終わった頃には楽しめるだろう。
楽しみだ。
武闘会後に備え、その『あるもの』に必要な他の具材をメモしておく。
小麦粉。キャベツ。イカ……は無いから豚の背脂から油カスを作るか。
モヤシは無いけれど俺は好きじゃないからキャベツがあればいいとしよう。
あとは豚肉薄切り、卵、ネギ。
カツオ節は無いから魚粉を使うか。
チーズは本来は邪道だけれどあると美味しいよな。
マヨネーズも欲しい。
青のりはこの世界に無いので悲しいけれど省略。
あとは俺用に生カキを大量に欲しいけれど、市場にあるかな?
よく食べる皆様にあわせて材料の量を書いていく。
場所は食堂のテーブルの上にレンガでも置いて、鉄板を乗っければいいだろう。
鉄板とレンガは何処かで購入して来よう。
でも食堂のスペースが大分余っているから専用のテーブルを作ってもいいな。
その方が作業もしやすいだろうし。
そう、俺がやりたいのはお好み焼きだ。
以前に商店街の店で食べたような偽物ではない。
元日本人である俺が監修した正しいお好み焼き。
魔法武闘会出場なんていう俺らしくないお仕事の後なのだ。
これくらいの事はやってもいいだろう。
なお大阪風か広島風かとか俺に聞かないでくれ。
俺自身として正しいのは岡山県の赤穂線沿線地方のお好み焼き。
モダン焼きOK。広島風もOK。
大阪風は許可。
もんじゃ焼なんて邪道は許さない。
まあ異世界転生しているから今はそんな血は流れていないけれどさ。
ちなみにソースはオタフク風なんてベタ甘いのじゃ駄目だ。
香辛料たっぷりでちょっとだけ辛めのタイメイソース風を目指したい。
この世界では胡椒等がやたら高価なので難しいけれど。
「アシュ、何ですの、先ほどサラに渡したレシピや今書いている食料は?」
「いや、バカンスの前に『
「それはなかなか面白そうですわ」
「いいね。是非やろうよ」
行ったことがあるテディとフィオナは真っ先に賛成。
「
「私も知りません」
ナディアとサラは知らない模様だ。
「熱した鉄板の上で自分たちで具と水溶きの小麦粉を焼いて固めた料理だよ。面白いし美味しいんだ」
「でもそれなら鉄板を用意しなければなりませんね」
テディ、気付いたか。
「どうせ食堂、テーブルも椅子も場所も余っているだろ。だから鉄板と耐熱レンガを買ってきて、余ったテーブルと組み合わせて専用の場所を作ろうかと思って」
「なら鉄板とレンガ買ってきて僕が作るよ。テーブル2つ分あればいいよね」
本来ならそんな鉄板、とてもフィオナが持てるような重さでは無いけれど、自在袋に入れれば問題ない。
ただ口の広い大きな自在袋が必要だな。
「何なら大きい自在袋もついでに買ってきてもらおうか。他にも使えて便利だし」
何せ今、俺達は割と金がある。
無論生活費と税金分は残しておかないとならないけれど。
「それじゃ昼食を食べたら買ってくるよ。ついでにテーブルを改造するのに必要そうなものもひととおり」
「お願いします」
「任せて」
ミランダの次にこの街に詳しいのはフィオナだ。
俺やテディは仕事が多くてあまり出歩かないからな。
だからここはフィオナに任せる事にしよう。
◇◇◇
フィオナが食堂でテーブルの改造を終え、サラがソースの材料を煮込んだ後寝かせて事務所に戻って来た頃。
ミランダが帰ってきた。
「ただいまー。今日の魔法武闘会、全試合結果の号外が出ていたから買ってきたぞ」
どれどれ。
全員バラバラにして見てみる。
俺がまず見てみたのは第2試合の結果だ。
この勝者が明日の俺の相手だからな。
勝者を見るとオッタ―ビオ選手となっている。
ナディアの予想通りだ。
試合状況は……ゴーレムを多数召喚して相手を取り囲み、中から逃がさないようにして押し出したのか。
ゴーレムは堅いから攻撃魔法が効きにくい。
未来視を使って逃げつつ高速で囲まれないように動いて、隙を狙ってオッタービオさん本人を狙うのが一番かな。
今日の試合と同様10倍速で動けばなんとかなるだろう。
もっとも俺は試合中、空間操作魔法で位相の違う場所にいる。
だからゴーレム本体をすり抜ける事も可能だ。
ただすり抜けはあくまで最後の手段にしよう。
出来れば俺のその辺の能力は最後まで見せずにすませたいからな。
一方で皆さんは俺の試合の記事を読んでいる模様。
「このチャールズ選手というのがアシュだよね」
「だよ」
「凄いね、A級冒険者に圧勝だって」
いや違う。
「俺が凄いんじゃない、魔法がチートなんだ」
「同じですわ」
その辺は意見の相違があるな。
そんな事を思った時ふと気づいた。
ナディアの動きが止まっている。
「どうしましたか、ナディアさん」
「負けています。ソニアさんが」
えっ、確か国王陛下も強さには太鼓判を押していた筈なのに。
でもそう言えば、今日会った時に何か言っていたな。
「陛下が言っていた要注意の選手って、今日の相手だったのか」
「でもソニアさんが負けるなんて私では想像がつきません」
どれどれ、試合概況を読んでみる。
『ソニア選手は開始と同時に攻撃魔法を連射しつつ一気に接近。しかしレジーナ選手は全ての攻撃魔法を
試合は膠着するかに見えたが突如試合場が闇に包まれる。数十秒後金属音の後に闇が晴れ、剣を飛ばされた状態のソニア選手が手をあげて敗北を申告。レジーナ選手の勝利が決定した』
うーむ、嫌な感じだ。
試合場が闇に包まれる魔法というのがまず不明。
まあ俺は元々現状を感覚で把握しているから、何も見えなくても問題無いけれど。
ただこのレジーナ選手のすり抜けたとか避けたとかいう動き。
これはひょっとして俺と同じ魔法なのではないだろうか。
ならば俺も戦い方を考えなければならない。
俺と同じ魔法かどうか確認する必要もある。
「明日は第二試合も観戦した方がいいだろうな。どんな魔法を使っているか確認する必要がある」
「その方がいいでしょう。このレジーナ選手については何もわかっていないようですから」
ナディアさんもそう言ってくれた。
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